『入社式』

見覚えのある顔に驚愕する。


「…ま、魔王?」


俺の言葉に反応したのか男は大きい舌打ちをすると腕を組んだ。


「お前までこちらに来ていたとはな。勇者よ」


その言葉全てを察する。

コイツも覚えていやがる!


「ッハ。にしても勇者が首を垂れる姿はいい。ここに酒がないのが惜しいな」

「そのまま酒を飲みすぎて死んだほうがこの世界の為になるんじゃねーのか」

「よく回る口だな」

「つか、お前も謝れよ!」

「貴様が前を見ず走っていたのが原因だ。我が謝る必要がどこにある?」

「あるだろ!?お前も前を見ていなかったら俺とぶつかったんだろ!?」

「はぁ…。キーキー喚くな。五月蠅い」


相変わらずこのくそったれ魔王ムカツクな!!!

前世の力さえあれば…!


って今はそんなことしている場合じゃなかった!


「入社式!」


「勇者と同じ理由というのはいけ好かないが、我も入社式に行かねばならん」

「お前なんかを雇ってくれる会社があるのかよ?」

「同じ言葉を貴様に贈ろう」

「るっせ。こっちとら大手だよ」

「ほぉ。我も大手だが?」


そう言い合いしながらなんとか会社に到着する。


「…なんで会社までついてくるんだよ?さてはお前暇人か?」

「それはこちらの台詞だ。前世は我が城に不法侵入し我の財宝などを懐に入れた盗人が今回はストーカーか」

「人を犯罪者呼ばわりするな!」

「こちらからすればお前は大罪人よ」

「へぇ。奇遇なだなこちらではお前が大罪人だ。…ところで俺は嫌な予感がするんだけど?」

「奇遇だな。我もだ」


俺と魔王は大手芸能プロダクションeternityの建物へ入っていく。

入ってすぐに人の良さそうな男性がこちらに手を振りながら向かってくる。


「あ!新入社員さんですね!お待ちしておりました!」


「「やっぱりか!/やはりか!」」

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