旭日旗の元に コラム
葉山 宗次郎
三式艦上輸送機<海空>
後のアメリカ海軍艦上輸送機C-2の遠い先祖だ。
昭和一八年に行われた制度改正により空母一隻ずつに設置された飛行隊を廃し空母航空戦隊に一つの航空隊を設け、各空母へ飛行隊を送り込む空地分離が日本海軍で実施された。
これにより母艦間でも飛行機を迅速に移せるようにしたが、当初問題を抱えていた。
その一つが人員の輸送だった。
搭載機の乗員は機体に乗って行けば良いが、飛行隊の他の人員を他の艦へ移すにはどうすれば良いかという問題だった。
優秀な兵器は無駄がなく特に艦載機は船に乗せるための制限、特に重量が厳しく制限されており正規乗員以外を乗せる余裕は殆ど無い。
近距離なら二座の艦爆に一人か、三座の艦攻が二人を乗せられる程度でしかない。
単座の艦上戦闘機など保有機材を使って移送など不可能だ。
だが飛行隊は予備の搭乗員――事故や故障で乗機の無い者、特に空母では緊急時は後続機の着艦スペース確保の為に正常な機体でも海に捨てることがある。
後続機の乗員を安全に母艦に回収するための処置であるが、他にも事故などで機体が使用不能になるため搭乗員は余りやすい。
更に機付整備士、通信員、航空隊本部要員など含めると保有機材を何度往復させても無理だ。
港の中なら内火艇を使って移動出来るが作戦行動中にそんな事は出来ない。何海里も離れた艦と合流するだけでも一苦労だ。
そこで開発したのがこの<海空>だ。
一〇〇〇馬力のエンジンに折りたたみ式の高翼、四角い胴体に乗員二名と乗客最大一〇名を乗せられる。最高時速が二〇〇キロ程度と飛行機としては低速だが船より速く失速速度が遅いため小型の空母でも運用出来る。
これで空母若しくは陸上を結ぶことで人員輸送がやりやすくなった。この機体は各航空戦隊および機動艦隊に配備され必要に応じて各空母へ送られる。
この機体のお陰で人員の以上や連絡が取りやすくなり、大戦中に計画完成した機体の中で最も活躍したと一部から評価されるほどだ。
確かに出撃途上の空母から陸上で乗り継ぎをしつつ赤煉瓦――軍令部へ往復出来るのは打ち合わせに便利だ。
だが短期間で開発するために最低限の要求――小型空母への発着艦、格納庫への収納、現役艦載機との部品共用のため火星エンジンの使用、乗員二名と乗客一〇名およびその荷物の搭載を求めたため、他の性能――特に居住性は最低限だ。
窮屈な折りたたみ椅子に何時間も後ろ向き――着艦時の衝撃による身体へのダメージを少なくするために後ろ向きに座る必要があるのだが座り続けるのは辛い。
全長10m
全幅14m 折りたたみ時3m
速力300km
巡航速力150km
航続距離2000km
乗員2名 乗客10名もしくは貨物1t
https://kakuyomu.jp/works/16816927862106283813/episodes/16816927862107193818
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