西暦5000年
私は「いただきます」という言葉を知った時、とてつもない感動を覚えた。生きる為には必ず生物の命を奪って自分の糧にする必要がある。それに感謝する言葉が存在するとは、なんて美しい言語なんだろうか、と。
君達は見た事が無いだろうか。テレビをつけるとそれはサバンナの何処かで、獰猛な肉食獣が可愛らしくか弱い草食獣を捕まえ喉元へ噛みつき血に塗れながら、グロテスクに惨たらしく、皮の奥から肉を引きちぎって食べる姿を。目を背けたくなるその様を。しかし考えてみて欲しい、それこそが元々なのだ。人間だって太古の昔は彼らと同じく「目前の獲物」を狩ってその日その日を凌いでいた筈だ。そこに「可哀想」なんて思考など、入る余地もない。
もちろん、人間は他の動物と違って理性を持ち得たからこそここまで進化してきた。だからこそ言語が生まれ、そこに「いただきます」という言葉が産み落とされた。それ故に一度立ち返って欲しいのだ。ライオンがウサギを食べるのは悪か?力任せに肉を噛みちぎるのは悪か?私はこれを悪とは思わない。
私は貴方達に今更「原始人へ戻れ」と言っているわけではない。ただ、貴方達が理性ある人間であるからこそ少しでも理解をして欲しいのだ。それに勘違いをしないで欲しいが、私達は貴方達にとってはライオンであるかも知れないけれど、貴方達と同じかそれ以上に高度な理性を持った動物である。こうして貴方達と同じ言語を使い喋っている事からもそれは分かっていただけると思うが、私達は貴方達を生肉のまま食べるような野蛮な真似はしない。そこは貴方達に習い、然るべき施設で不自由なく大事に育て、屠殺場で安らかに殺すことを約束しよう。
分かっていると思うが、地球は既に私達異星人の手に落ちている。これは「交渉」ではなく「慈悲」であると、理性ある貴方達人間なら快く理解して頂けるだろう。
西暦5000年 人間家畜法宣言より
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