僕と私と俺と、それから君の短編集
遠藤世作
底なし沼
私は今、底なし沼にいます。というのも、この沼は自らの意志で作り、また飛び込んだものなのですが、しかしこれがなかなか苦しいのです。
周りを見渡すと、より大きな沼があります。私より幾分か小さな、出来立ての沼もあります。
臆病な私の心は、大きな沼を見ると、そこへ飛び込む人の多さに畏怖します。
「よくあんなに大きくしたな。どうやったらあんなに大きくなるのかな」
大きな沼の持ち主は、沼の中心で更に深く、深くと掘っています。私は負けてたまるかと、自分の沼を広げるのですが、どうもあのようには人が集まりません。
別の場所を見ると、私より小さな沼があります。愚かな私は「あぁ、大丈夫だ。私の沼は隣より大きい」と安心しますが、この小さな沼も、いつか私の沼を超えるかも知れないと思うと居ても立ってもいられなくなって、恐れから自分の沼を掘るのです。
私は今日も沼を広げています。けれど、それは「大きくしたいから」や「抜かされたくないから」というだけではありません。私はこの沼を作るのが好きだから、今日も沼を掘るのです。
おや、貴方は私の沼を見に来てくれたのですか。ありがとうございます。
さあさあ、遠慮せずに!私の"短編小説"という沼を見ていってください。そして、よければ沈んでください。貴方が沈んでくれると、さらにこの沼は広くなるのですから。
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