カフジ攻撃

 ドイツ第七装甲師団はライン川防衛のため編成、強化された部隊であり、西側でも最優秀戦車の一台であるレオパルトⅡを装備している。

 政治的理由、冷戦終結で敵であった東ドイツ、ソ連が崩壊したことにより軍縮が始まったドイツ連邦軍が生き残りのため、実力を示すために派遣されてきていた。

 以上がこれまでNATO領域内のみ活動すると言いながらドイツが派兵してきた理由だ。

 だがヨーロッパで共同演習を繰り返してきたホーナー准将は彼らの実力が本物である事を知っており、心強い。

 そして、常任理事国として責務を果たすため、日本が派遣してきた混声軍団も優秀だ。

 第七機甲師団、空中機動師団そして空挺師団から派遣された空挺旅団と、海兵師団から分遣された海兵旅団。

 米軍に次ぐ、戦闘能力を誇る。

 特に第七機甲師団は、攻撃力が高く、期待できる。

 部隊配備されたばかりの九〇式戦車二〇〇両を有する第七一戦車連隊と七四式戦車を有する第七二及び第七三戦車連隊は有力。

 追随する第七普通科連隊も八九式歩兵戦闘車を装備し他の部隊も装甲化され機動力攻撃力共に申し分ない。

 更にAH64Dアパッチ及びAH1コブラを有する対戦車飛行隊が援護する。

 そして、機動力のある空中機動師団と空挺部隊が配備されている。

 その俊足を見込み第一八空挺軍団の右翼に配備。

 彼らは地上戦開始後、レフトフック――クウェートを中心に、イラク国内を時計回りにバスラに向かい突進。

 クウェートのイラク軍の背後を寸断、包囲する主力として期待されている。

 国際議決ではクウェート防衛と謳っているが、イラク国内へ進軍して良いとは書かれていない。

 そのためイラクはクウェートに部隊配備を行い防衛する構えだ。

 その裏を突いて、多国籍軍地上部隊はイラク国内へ入り、彼らの退路を断つ。

 日韓紛争で日本が使った手、自国領に攻められた時、相手の国に入り込み侵攻部隊を包囲殲滅した戦術だ。

 あのとき日本を非難しなかった、おかげでアメリカも同じ手を使える。

 有力な日本の部隊、アメリカ軍以外では最有力の部隊が使えるのも大きい。

 非常に頼りになり使い甲斐がある部隊だ。

 もっとも、現状の絶対的航空優勢を確保し一方的にイラク軍地上軍を攻撃している状況では、彼らの標的はいなくなるかもしれない。

 しかし、それは杞憂だった。


「うん?」


 バスラの南方、ペルシャ湾岸にあるサウジアラビアの街、カフジ近くでイラク軍の部隊が攻撃に出ていた。


「消耗する前に勝負を挑んできたか」


 航空攻撃で打撃を与える作戦の為、国境沿いには警戒部隊として五個大隊しかいない。

 彼らは本格的攻撃を受ければ交代するように指示されており、カフジは簡単に奪われる。

 軍事的には、イラクが東部に部隊を進出しており、回転ドア効果により作戦はより効果的になる。

 しかし政治的、宣伝上はイラクが優位な印象を与えてしまう。

 それにサウジアラビアの国王、二聖地、メッカとジッダの守護者でありアラブの盟主が領土を奪われたことを恥じるだろう。

 ここは対応しなければならない。

 だが、地上作戦前であり対応できる部隊は少ない。

 航空部隊も予想より多い地上目標への攻撃で十分な攻撃機を割けない。

 ペルシャ湾に展開した一隻の空母が激しい航空攻撃で空になった爆弾事航空燃料の補給の為に離脱しているのも痛い。


「信濃とフランクリン・D・ルーズベルトの空母群にも攻撃隊を出すように伝えてくれ」


 フランクリン・D・ルーズベルトは就役したばかりのニミッツ級原子力空母だ。

 大戦時の大統領の名前を付けることに諸外国、特に第二次大戦敗戦国の反応を恐れて一度は外された。

 だが、結局、アメリカの偉大な大統領として名前が付けられた。

 百機以上の航空機を搭載し、小国の空軍力を一隻で凌駕する有力な航空母艦だ。

 日本が派遣してきた信濃も改装されて準ずる攻撃力を持っている。

 だが彼らも手持ちの航空隊を出していて、手が足りない。

 他に手近な部隊で攻撃できる部隊を探す必要があり、ホーナーはディスプレイを操作して見つけた。

 移動中で使っても問題ない部隊。

 遠距離攻撃可能で機動性もあり、時間的な余裕もある。

 早速行動するよう命令するが、まだ戦力として足りない。

 ホーナーは視線を海側に移し見つけた。


「彼女に頼むか」


 ペルシャ湾岸を航行する一隻の戦艦。

 神話的な色合いを帯び始めた艦に支援を依頼した。




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