日韓紛争終結

「只今、ワシントンより連絡が入りました。日本政府と韓国政府は停戦に合意しました。日本海に平和が戻ります」


 総理官邸で中曽根総理が発表した。

 竹島奪回から六〇日経過していたが、ようやく停戦交渉が妥結した。

 ここまでこじれたのは、韓国が見苦しくごねたからだ。

 済州島及び鬱陵島からの即時撤退、竹島が韓国領であることを認めること、攻撃による損害の賠償。

 他にも条件を突き付けてきたが、どれも戦勝国の要求だった。

 日本に負けたことを認めたくない、現実を見たくないのだった。

 そうなっては、日本も手を緩めることはできず、軍事行動を続けた。

 流石に韓国本土上陸などしない。

 検討はされたし、佐久田が準備するように強硬に言った。

 実際、北海道の一部部隊を引き抜き、予備役動員を行って、上陸作戦の準備を行わさせもした。

 だが、それは不可能であることを確かめるためのものだ。

 陸上戦力は韓国が圧倒的だし、転用しようにも北日本に備えているため転用は無理。

 占領統治に予算が掛かりすぎるし、韓国を攻め滅ぼしても北朝鮮と対峙することとなり、余計な負担が加わることになる。

 以上の理由が列挙され、韓国を併合しろという声を抑えた。

 もちろん、佐久田は最終手段、最悪の場合を想定して立案させた。

 そして、上陸作戦手前の段階を実行させた。

 現実的で海洋国家らしい作戦、海上封鎖。

 韓国に向かう貨物船を日本周辺で拿捕するのだ。

 船が韓国へ入港するには必ず日本近海を通らなくてはならないため、簡単に捕まえられる。

 哨戒機部隊を展開させ、韓国へ向かう船を見つけるとヘリ部隊を発進。

 貨物船を発見するとラペリングで臨検要員を降ろし、商船を拿捕。

 日本に回航して抑留した。

 そして、韓国向けの物資を没収し、売り払った。

 占領したばかりの済州島も拠点にしたため効率が良かった。

 このために済州島占領を計画したのだ。

 敵国物資を搭載した貨物船の拿捕は国際法でも認められたことであり、国際的に合法。

 韓国は海賊行為だと非難したが、日本は無視。

 諸外国も国際法上問題ないため、認めていた。

 当初、韓国は一丸となって反発した。

 だが物資が足りなくなると、韓国民の間で不満が募るようになっていった。

 更に航空攻撃だけでなく、襲撃作戦――日本の特殊作戦群の特殊部隊や海兵師団、空中機動部隊による小規模な襲撃作戦、夜中に上陸し攻撃し破壊したあと、撤退する作戦が度々行われ、韓国民の士気が下がった。

 古典的だが、ビラまきも行われ、韓国政府が発表しない真実を知らせることで不信感を高めた。

 韓国民の間に反戦思考が高まり、全大統領への不満が高まった。

 もし北の勢力と結びついたらとんでもないことになる。

 とどめを刺したのは、米国の通告だった。

 もし戦争を継続するなら、米軍を撤収し、米韓同盟を破棄する、と言ってきた。

 自主防衛を目指しながらも、北に対抗するにはアメリカの力が必要なことは、全大統領も理解していた。

 全大統領は仕方なく、日本の要求、現状での停戦を認めざるを得なかった。


「ようやく終わったな」


 佐久田は安堵する。

 日本の最大の敵は北日本であり、韓国と何時までも戦っていることはできない。

 終わったことは良かった。

 しかし、新たに韓国という潜在敵を抱えることになったのは拙い。

 問題が起きたとき、北海道へ兵力を転用することが難しくなる。

 一応手出しできないように韓国の軍備制限や、済州島、鬱陵島の保障占領をしているが、韓国が何をするか分からない。

 しかも、下手に力を削ぐことはできない。

 韓国の弱体化は北朝鮮の侵攻を誘発する恐れがある。

 ただ、大きな収穫だったのは米国の本音が理解できたことだ。

 米韓同盟破棄という抑止手段がありながら、決着が付くまで出してこなかった。

 もし竹島占領の時点で出していたら、戦争にはならなかっただろう。

 日本がアメリカにとって危険な国とみられている証拠でもあった。

 今後は、アメリカ対策をより重視しなければならないと考える。


「全く、大変な事をしてくれた」


 佐久田は溜息を吐いた。

 単純に韓国へ警戒する戦力が必要になると、北海道の警備が薄くなる。

 北が何かしかねないと恐れた。


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