イギリス太平洋艦隊参戦
「何とか間に合いましたね」
「主役は遅れて登場するものだ」
ヴァンガード艦長にバーナード・ローリングス大将は、上機嫌で言った。
本来なら先島諸島沖で台湾からの日本軍の攻撃に対処するのが任務だ。
だが日本軍の特攻によりミッドウェー級をはじめとする空母部隊が壊滅し、戦艦をはじめとする日本艦隊が船団に突入しようとしている状況だ。
救援に駆けつけるべきだとローリングは判断していたがスプルーアンスが倒れ、指揮系統が混乱したため、命令が出てこなかった。
そのためローリングスは独断で、一応命令途絶及び状況切迫による緊急処置という名目で指揮下にある英国太平洋艦隊に日本艦隊迎撃を命じた。
空母四隻は、台風の進路の後ろに回り込み、暴風圏を回避。
艦載機を発艦させ可能な限り沖縄上空の援護を行うよう命じた。
特攻機の攻撃を受けていたが、幸いにも―――日本にとっても―――桜花は機数が少なく通常の特攻機のみで装甲は貫けず飛行甲板は数時間の封鎖で回復できており、夜が明け次第飛ばせる状況だ。
だが、日本艦隊は夜明け前に投入してくる。
なのでローリングスは乗艦のヴァンガードを率いてキング・ジョージ五世とハウを率いて嘉手納沖に急行。
嵐のため遅れ気味だったが、終盤で駆けつける事が出来た。
「もうすこし、早めに着くべきだったがな」
英国海軍史上最大の四万五千トンの排水量を誇るヴァンガードは優れた安定性を示し、色々と無理をしたアイオワ級より動揺が半分以下に収まっている。
シアの高いクリッパー型の艦首は波を切り裂き、嵐の中でも快速を見せる事が出来た。
しかし、キング・ジョージ五世型はそうも行かない。
北海での戦闘、濃霧による突発的な接近戦闘を考慮し、仰角ゼロで主砲射撃が可能なよう求められたキング・ジョージ五世は、垂直艦首のため凌波性が低い。
第二砲塔の基部まで海水が洗う状況では速力が出せず、置いていった。
条約の関係で―――ロンドン条約継続を望むイギリスは条約を遵守するため一四インチに抑えた結果、キング・ジョージ五世級は攻撃力も不足しておりヴァンガードの一五インチ砲よりも攻撃力が小さい。
せいぜい、巡洋艦以下の艦艇を撃破するのがやっとだ。
一八インチクラスの主砲を持つ日本艦隊相手には力不足という判断もあり、置いていくことにした。
だが、ヴァンガードでも戦えるか疑問だ。
速力こそ三〇ノットと速いが主砲は一五インチ、それも第一次大戦の代物だ。
待望の一六インチ砲搭載新戦艦であるライオン級が開戦により補助艦艇の大量建造のため中止となり、代わりに倉庫で埃を被っていた一五インチ砲を使って作り出されたのがヴァンガードだ。
開戦してすぐにロイヤル・オークがスカパフローでギュンター・プリーン率いるUボートに撃沈された上、ビスマルク追撃戦で巡洋戦艦フッド――ビスマルク完成まで世界最大にして最も美しいと言われ、英国海軍の象徴だった艦が沈み、その代艦が早急に必要だった。
こうした建造経緯もあり、ライオン級の船体を流用し、短期間で建造されたヴァンガードは速力こそ速いが、攻撃力には疑問が生じていた。
それでも、日米ともに壊滅した状況ではかなり有力な艦となるハズだ。
「接近する、敵艦を撃破するのだ」
接近してくる榛名をはじめとする日本艦に射撃を開始する。
建造されてから四半世紀以上経つ榛名だが、カタログスペック上はヴァンガードとほぼ互角だ。
だが、戦時急造のため、各所に不具合のあるヴァンガード。
日本海軍でも最も活躍―――古参の上、速力があり各方面へ走り回らされた榛名。
両艦共に、動きが鈍かった。
巡洋艦以下では日本海軍の方が上だった。
巡洋艦三隻、駆逐艦七隻という陣容で挑んできたが、日英の建艦思想の差が顕著に表れた。
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