スプールアンスの迎撃

「ピケット艦の大半が、攻撃を受け損傷。レーダー使用不能により、離脱しています。防空警戒網が破られました」

「日本軍は我々の目を潰す気だな」


 多数の日本機、ロケット弾搭載の戦闘機が艦隊の前衛に出した駆逐艦ピケット艦を潰していた。

 対空レーダーを使い接近する敵機を発見し迎撃機を誘導し、艦隊に警報を発する重要な艦だ。

 だが、単艦あるいは少数で遠くに配備するため、敵の攻撃を受けやすい。

 日本機の攻撃を受けて、ピケット艦は次々と沈黙し、迎撃管制に支障を来し始めていた。


「防空戦闘機の数を増やすんだ。艦隊から新たなピケット艦を派遣して穴を埋めろ」


 すぐに攻撃されると分かっていても艦隊と船団と守る為、目を無くすわけにはいかなかった。


「攻撃隊の方はどうなっている?」

「間もなく敵艦隊と接触します!」


 日本艦隊の空母さえ撃沈すれば、攻撃は止む。

 そう考えていた。


「攻撃隊、制空隊、日本の護衛戦闘機と接触、空戦に入ります」

「護衛戦闘機隊、接近する敵戦闘機を発見、迎撃に入ります」

「攻撃機に接近する敵戦闘機あり、損害多数多数」

「爆撃隊に戦闘機接近。爆撃機に被害が出ています」

「馬鹿な戦闘機の数が多すぎる」


 三四三航空隊が引き続き空母に乗せられていたこともあり、日本側は優位な防空戦闘を繰り広げていた。


「戦闘機掃討戦か」


 日本艦隊の意図をすぐにスプールアンスは読み取った。


「戦闘機のみを積んで此方の艦載機を全滅させる気か」


 米軍も日本軍の攻撃機対策に、多数の戦闘機を搭載する方針にしており、戦闘機を増やしていた。

 エンジンの大馬力化により多数の爆弾を積み、戦闘爆撃機に出来る事もあり、攻撃力低下の恐れが無くなったため戦闘機を増やしていた。


「だが、此方の艦艇への攻撃は不可能だ」


 攻撃機が少なければ艦艇への攻撃力は小さく被害も大きくはならない。

 艦隊の損害が少ないことを喜んだ。

 だが、それは気休めだった。


「長官、第二波攻撃隊を出しますか?」

「いや、止しておこう。このまま攻撃に出しても敵の良い的だ。戦闘機を出して迎撃せよ」

「しかし、敵艦隊は急速に接近しております」

「そんなにか?」

「はい、およそ三〇ノット。明日の夜明け前に船団に突入できる状況です」

「それが狙いか」


 艦載戦闘機による援護の下で、艦隊を突入させ、船団を撃滅する。

 それが日本軍の狙いだとスプールアンスは考えた。


「厳しい手を打ってくるな」


 船団を守る為には迎撃しなければならないが、連日の艦砲射撃により、疲労が激しいし弾薬も損耗している。

 それに敗れたり大損害を受けた場合、中継地であるハワイが壊滅しているため修理のために後送する余裕がない。


「命令は取り消しだ。第二波攻撃隊を発進。日本艦隊を止めるんだ」

「了解」


 だが、第二波攻撃隊も厳しかった。

 日本軍が上げた無数の戦闘機により、攻撃隊は行く手を阻まれた。

 米側を真似た対空電探と艦艇による航空機誘導管制により、米軍機を効果的に迎撃出来たのも大きかった。

 接近した米攻撃機は次々と撃墜されていく。

 戦闘機の迎撃ライン突破に成功しても日本艦艇の防空射撃。

 三式弾によりる遠距離射撃と、秋月型駆逐艦、綾瀬型防空巡洋艦の防空弾幕によって阻止されてしまう。

 射点にたどり着いても、松田提督によって叩き込まれた回避術で日本艦隊は航空攻撃を回避し、米攻撃隊は命中弾を得られなかった。


「手強いな」


 攻撃隊の報告を受けたスプールアンスは渋い顔をした。

 防御側に優位なことは分かっているが、まさかこれまでとは思わなかった。


「いかがなされます」

「此方も同じ手を使う。敵のピケット艦を撃沈し、誘導を困難にするんだ。なんとしても日本艦隊の突入を防げ」


 レイテの悪夢の再現だけは絶対に回避したかった。

 本来ならもっと前に撤退するべきだったのだが、ワシントンのゴタゴタのお陰で手が撃てなくなった。

 それでもまだ余裕はあるとスプールアンスは考えていた。

 だが思いもよらない報告がもたらされた。


「偵察機が日本本土より接近する大型機を確認しました」

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