第一機動艦隊 硫黄島近海へ出撃
「直ちに攻撃隊の発進準備を急がせろ。敵の攻撃隊が来るぞ。防空戦闘機も準備だ」
日本の機動部隊がやってくることを知らされたスプールアンスはすぐさま迎撃を指示し同時に攻撃隊を編成するよう命じた。
「なんとしても日本軍の空母を叩かねば。攻撃隊の発進急げ」
日本機動部隊が攻撃隊を発進し続ければ、船団に被害が出てしまう。
撤退のためにも船団は一隻でも多く確保しておきたかった。
被害が出る前に空母を叩こうと考えるのは当然だった。
「第一波攻撃隊発艦完了! 間もなく第二波攻撃隊も準備できます!」
「日本軍の攻撃隊とピケット艦が接触しました」
「防空戦闘機を回せ! 空母に近づけるな!」
CDCでは防空管制が行われ、戦闘機隊を誘導する。
「防空戦闘機隊、日本軍攻撃隊前衛と接触しました!」
「後続してくる攻撃機を潰せ! 空母と船団を攻撃させるな!」
攻撃隊の編成は機数以外日米共に構成は変わらない。
まず、攻撃隊に先立ち制空権を確保するための制空隊を飛ばす。
その後方に攻撃の主力である攻撃機を中心とした編隊。その上空に、攻撃機を護衛する護衛戦闘機隊が上空を飛び、攻撃機を守る。
艦艇を攻撃する攻撃機を潰さなければ艦隊と船団の安全は確保できない。
「日本の攻撃隊本隊らしい編隊を発見しました」
「直ちに攻撃を仕掛けろ!」
しかし、異常が徐々に判明した。
「攻撃隊を迎撃した防空戦闘機隊より報告! 敵機の大半が戦闘機です!」
「なに? どういうことだ」
「発っ艦っ始めっ! 発っ艦っ始めっ!」
旗艦信濃の甲板に独特の抑揚を付けたスピーカーの声が響く。
艦載機のエンジンが回り、轟音を上げる。
発艦士官の合図で一番機が飛び立ち、次々に飛び立っていく。
他の空母からも機体が続々と発艦していく。
上空で編隊を組んだ攻撃隊は、米軍機動部隊へ進撃を始めた。
「報告! 攻撃隊全機発進完了! 攻撃隊空中発進!」
「了解」
山口は、報告を聞いて頷くと、隣にいる佐久田に話しかけた。
「上手く行くか?」
「他に方法は無いでしょう」
「だな」
闘将山口らしくない気弱な言葉だが致し方のない事だった。
当初、機動艦隊が出撃する予定は無かった。
ハワイ攻撃で、艦載機の五割近くが損耗したのだ。
撃墜は防御性能向上のお陰で少なかったが、激烈な対空砲火のために被弾し、着艦後放棄、海上への不時着機が多数出てしまった。
三割以上の損失で全滅と判定されるだけに、この損害を許容できる訳がなかった。
作戦は成功したものの、再度の出撃には、艦載機と搭乗員の補充に半年はかかると予想された。
これが、出撃を見送ろうとした理由だ。
だが、硫黄島の奮戦と米軍の攻略続行が狂わせた。
保内なら補給線を断たれた時点で撤退するはずなのに、むしろ攻撃を続行していた。
これを見た日本軍上層部は硫黄島を救援するべきという声が上がった。
ハワイ攻撃のために硫黄島を見捨てたという罪悪感もあり、行動しようとしたが、機動艦隊の状況が、膨大な損失がそれを許さなかった。
最終的に出撃する事になったのは、東京大空襲だ。
硫黄島が早期警戒拠点として機能していれば防げたという意見が日本軍の中で出てきた。
本土防空のために硫黄島を絶対に確保するべきと言う意見が出てきたため、連合艦隊司令長官豊田大将は空襲を避けて大湊へ帰投した第一機動艦隊に出撃命令が出した。
「艦載機の手配はどうなっている」
「現有兵力で対処せよとの事です」
「無いと言うことだな」
艦載機が無ければ、出撃など攻撃など不可能だ。
それでも下された命令に従わなければ、ならない。
「佐久田、何か手はないか?」
「装甲空母と一部の空母のみで出撃しましょう」
佐久田はすぐに自分の提案を述べた。
「信濃型で編成された第一航空戦隊と大鳳型で編成された第二航空戦隊、これに加賀や翔鶴型を追加して、出撃します」
「艦載機はどうする。どの航空戦隊も航空機が足りないぞ」
「置いていく航空戦隊の航空隊から引き抜きます。積み込めるだけ積み込みましょう」
「攻撃機が足りないぞ」
艦載機の偏りも悩みだった。
制空権を確保するために戦闘機を集中的に生産していたこともあるが、攻撃で敵に肉薄する攻撃機に損害が続出している事も原因の一つだった。
「幸い、硫黄島は本土に近いです。攻撃機は陸上航空隊に出して貰いましょう。我々は戦闘機を以て、周辺海域の制空権を奪回します。米軍機動部隊攻撃はピケット艦への攻撃にとどめ陸上攻撃隊の攻撃路開啓を目指します」
「それで行くしかなさそうだな。最悪、戦艦部隊を援護し船団突入も行おう。これを基本に作戦案を立てろ」
山口は自分の意見を入れた上で、という条件をつけ佐久田の作戦案は直ちに採用され、東京と日吉に赴き承認を得ると、すぐさま機動艦隊は出撃した。
寄港してすぐに燃料弾薬食料の補給が行われたため、出撃準備は既に整っており、作戦参加艦艇は不参加の艦艇に見送られて大湊を出港。
陸上航空隊の支援を受けつつ太平洋岸を南下し硫黄島近海へ進出。
制空権を確保するため、戦闘機を中心とした攻撃隊を発進させた。
総数二〇〇機を超えるが、八割が戦闘機であり、残るに二割も周囲偵察と戦闘管制のための偵察機彩雲であり、僅かに含まれる流星攻撃機もピケット艦攻撃のために使われる。
「米軍の防空能力を今日中に奪う」
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