カリフォルニア ペンシルベニア撃沈

 武蔵が統制指揮する大和、武蔵の第二斉射一八発の内、三発がカリフォルニアに命中した。

 第一斉射より少ないが、第一斉射の命中率が異常なのだ。

 だがトドメを刺したのはこの第二斉射だった。

 一発は第二砲塔弾薬庫に命中し炸裂したが、既に浸水していたため致命傷は与えられなかった。

 二発目は水中弾となり、機械室に命中し浸水を発生させ速力を更に低下させた。

 トドメとなったのは三発目、第三砲塔近辺へ命中した砲弾で、第一斉射で命中し暴れ回った砲弾が作り上げた破孔へ入り、弾薬庫を直撃。

 爆発を起こした。

 弾薬への誘爆により、カリフォルニアの船体は第三砲塔付近で切断され、前部と後部が分かれてしまった。

 そこへ更なる砲弾が降り注ぎ、至近弾の水圧が、ボロボロになったカリフォルニアの船体を衝撃波で揺さぶる。

 戦隊が軋みカリフォルニアの浸水が激しくなった。

 四六サンチ砲の痛打で船体がボロボロになったカリフォルニアは、浸水が止まらず傾斜し射撃不能となり、カリフォルニアの命運は尽きた。

 直後、第三斉射が飛来、カリフォルニアの損傷が更に加速する。

 既に射撃不能となったカリフォルニアは傾斜回復の見込み無しと判断した艦長によって弾薬庫注水、総員退艦が発令された。

 しかし、重防御を誇るカリフォルニアはまだ浮いており大和及び武蔵の射撃は続いた。

 それでも浮いていたのはアメリカの戦艦設計思想が確かだった証明であるが、カリフォルニアと乗員の苦しみを長引かせただけだった。

 第五斉射受け、甲板が海水に浸かり始めたカリフォルニアは傾斜を徐々に増し転覆。

 翌日沈没した。

 カリフォルニアの大傾斜を確認した猪口は、第六斉射を取りやめ、二番艦ペンシルベニアへ目標を切り替える。

 ペンシルベニアの不幸が始まった。

 直前、姉妹艦であるテネシーが第三戦隊の集中攻撃を受けて遂に撃沈されてしまい、第三戦隊の目標が切り替わった時だった。

 射撃不能なった榛名の第四砲塔を除く、第三戦隊の三〇門の三六サンチ砲の射撃を受けて被弾した。

 四発の命中弾があったが、防御に定評のあるアメリカ艦らしく耐えきり、金剛へ反撃の斉射を浴びせる。

 だが非装甲区画への損傷は激しくレーダー射撃装置が破壊され、射撃に困難を来す。

 金剛へ更なる反撃をしようとしたとき、大和、武蔵の射撃が襲い掛かる。

 試射を終え、夾叉を確認すると猪口は直ちに斉射へ切り替え砲撃を開始した。

 一八発の四六サンチ砲弾がペンシルベニアに襲い掛かり痛打を浴びせる。

 第一砲塔近辺に命中した砲弾が、ターレットを歪ませ射撃不能に、一発は水中弾となり、スクリューを破壊した。

 続いて第三戦隊の射撃がペンシルベニアを襲い、両用砲二基が破壊され、マストにも被弾、煙突も破壊され上部構造物は廃墟となる。

 火災も発生し、艦内が阿鼻叫喚の地獄となる中、大和武蔵の第二斉射が降り注ぐ。

 装甲板を貫いた四六サンチ砲弾二発が機関室で炸裂しスクリューを回すモーターとタービン発電機を一基ずつ破壊する。

 第四砲塔にも直撃し炸裂する。だが致命傷を負った砲塔長が最後の力を振り絞り注水バルブを解放し、注水成功。誘爆を防ぎ、ペンシルベニアは生きながらえたが、僅かな時間でしかなかった。

 左舷の喫水線近くに命中した砲弾は内部へ貫通し重油タンクを破壊して艦内へ入り込み爆発。

 重油が艦内へ流れ込むと共に、浸水を発生させる。

 南海の青い海面へ黒い重油が血を流すように流れ出す中、ペンシルベニアは航行を続け金剛へ射撃を行う。

 中央部に命中させ金剛の副砲二基を破壊した。

 それがペンシルベニア最後の戦果だった。

 直後、第三戦隊の反撃によりペンシルベニア各所に被弾が発生し大火災が発生。

 更に大和武蔵の斉射が降り注ぎ、二発がほぼ同じ箇所、中央部を貫通し機械室を破壊してキールで炸裂し切断。

 背骨を失ったペンシルベニアは船体が歪み、浸水の増大、重量増加もあって中央部から沈み始め、やがて船体切断。

 艦首と艦尾を共に天高く向け、徐々に沈んでいった。


「テネシー級一隻撃沈」

「長門が相手をしていたコロラド級も撃沈しました」


 長門と激しい砲撃戦を繰り広げていたコロラドも、接近してきた一水戦の駆逐艦の酸素魚雷によってトドメを刺され、沈没した。


「敵戦艦部隊殲滅しました」


 第一遊撃部隊の前に立ちはだかった、最後の壁、米戦艦部隊は水上から消えさった。

 随伴していた巡洋艦、駆逐艦部隊も第一水雷戦隊との戦闘で撃沈され既に水底だ。

 第一遊撃部隊を最早阻むモノは誰もいなかった。

 南雲は長官席から立ち上がり、沈み行く敵戦艦に敬礼を行った後、命じた。


「第一遊撃部隊全艦に命令! 全軍、レイテ湾へ突入せよ!」 

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