『なまくら冷衛の剣難録』終章までの感想

なまくら冷衛の剣難録

作者 小語 

https://kakuyomu.jp/works/16816927863238741872 

 

 あれから十日後。入院中の士郎次を見舞う冷衛と由比太。事件後、内務大臣は春日卿の部下・十貨に春日卿の罪を押しつけて処刑、一切の幕引きとなった。そんな内務大臣の屋敷に忍び込んだ由比太と冷衛は内務大臣の髪を切る嫌がらせをしていた。クロガネ寺院に無縁仏として埋葬された美夜の墓に手を合わせて冷衛は後にする。

 長屋の人たちに救われた雨天と再会した冷衛は、大人しくしていれば手を出さないと約束させる。腕を怪我した小竜が、治療代に報酬が消えて払えないから待ってもらえないかと頼みに来る。美夜の愛刀に目を向けながら承諾しつつ、「利息はとる」と答えるのだった。


 非常に長くなっております。

 お時間許すときにでも、ごゆるりとお読みいただけたら幸いです。


 よく士郎次は生きていたものである。

 冷衛は小竜を医者に送り届けたが、士郎次はそのまま屋敷においてかれたのだ。彼を救ったのは「主を失った爾庵の家臣たち」であり、「士郎次を捨て置くわけにもいかず、城へ報告をしている」つまり、彼らが医者を手配したのだろう。

 どうして士郎次は助かったのかしらん。

 そもそもシンベヱに腹部を斬られたときの傷がよくわからない。

 傷を受けた後、城に行って報告してから冷衛と木刀で戦い、由比太と小竜たちとお茶をしている。それから屋敷に乗り込んで、黒衣に斬られたのだ。

 シンベヱの傷は大したことなかった?

 大げさに書いてあっただけで、シンベヱは大して強くなかったのかしらん。

 士郎次の回復力が早いのかもしれない。

 毎朝コンフレークの山盛り二杯食べているからとか(ネタが古いい)小豆丼とかマヨネーズ丼とか、千豆的ななにかを食べているおかげで治りが早いのかもしれない。

 それとも、お茶を服用しているせいなのかも。

 黒衣に斬られたのでしょ。

 真人は弱かったのかしらん?

 準主役補正なのはわかるとしても、説得力がほしい。

 可能性としては、黒衣と斬りあったのが屋敷内だったからかもしれない。室内では刀は大きく触れない。

 士郎次は「胸部から鮮血を噴出させている」ので胸を斬られている。怪我をしていた腹部を再度切ったら致命傷だったかもしれない。士郎次は怪我をしている部分を咄嗟に庇ったため、斬れる場所が胸部だったのだろう。結果、一命をとりとめた。

 黒衣が手を抜いた、と考えるのが簡単かもしれない。


 冷衛の傷の様子も書かれている。

「あとは傷を縫った糸を抜くだけだ。ま、しばらくは安静にしていなければならないんで、仕事は休業中だ。いい骨休めだな」

 あれから十日。浅い傷なら、そのくらいで抜糸できる。シンベヱとやりあった後で黒衣とも戦い、深手もあった。なので、完治はもう少しかかるはず。

 この三日前、由比太と内務大臣の屋敷を襲撃している。怪我をして七日。多少は動けるようになるまで休んでいたと思われる。

 由比太の出番があってなにより。


 士郎次が城に仕えるよう冷衛に話している。「二年前の事件は春日卿の策略だったのだろう。貴様に非が無いとすれば、再び仕官するのに問題があるはずがない。俺の代わりに御馬前衆隊長を務められるように手配しよう。俺などよりも貴様の方がその役職には相応しい」

 これは彼に言うのではなく、上に報告して便宜を計ってもらう案件だと思われる。

 実際、御馬前衆より無職の冷衛と由比太が強いのでは、公国の防備が心配である。


 十貨は暗殺に加わっていなかったので、どうしてだろうと気になっていた。かわいそうに、詰め腹を切らされたのだ。


 美夜の墓参りに来て、序が終わる。

 終わりはくどくど書かず、さっと終わるといい。なのでここで終わっていいのだけれど、小竜がどうなったのかを書いていないので、次にその辺りを描くと思われる。


 雨天が生きてました。

 長屋に住んでいるのは雨天かな、と思ったこともあったけれども、やはりそうでしたか。

 斬られて助かる線引きがよくわからない。

 が、少なくとも真人を斬って以降、黒衣(美夜)は人を殺していない。(士郎次たちとは別に駆けつけて来る予定だった御馬前衆を斬ったのは雨天と他の暗殺者で、黒衣は加わっていたか不明)

 つまり美夜は、春日爾庵誠之助の命令があった相手だけを殺していたことになる。命令がなければ殺したくない、というのが美夜の本音であり、良心は残っていた現れだろう。

 だから士郎次は生きているし、雨天も助かるのだ。

 

 冷衛が「世間は狭いな。人の親切に触れて泣くくらいだから、性根は腐っていないだろう。おとなしく暮らせば、俺は手出しをしない。もう人殺しの仕事は止めることだな」と雨天に言っているのだけれども、美夜にも言って生かす努力をすべきではなかったのかしらん。

 なぜなら、美夜は真人は殺したけどそれ以降は殺していない。雨天の方がたくさん殺しているはず。そんな雨天に「性根は腐っていないだろう」といって捨て置くのだから。

 あるいは、美夜を殺してしまったからこそ、雨天に寛大になれるのかもしれない。


「左腕は包帯で覆われているのが痛々しいが」小竜は生きていた。

 お礼のお菓子はもってくるけれど、「家族に内緒で危険なことをしてしまったんで、さすがのお父様も怒ってしまい」「治療費は自分で捻出しなければならくなった」ため、「貯金は底をついちまいましたよ」と語って、報酬の先延ばしを願いに来ている。


 冷衛としては、お礼のお菓子を持ってくるならお金を、と思ったはず。彼も怪我しているし、その治療費はどこから出たのだろう。きっと冷衛の治療費はツケだと推測する。

 だから「依頼料を待つのはいいが、その代わり利息は頂こうかな」と、つながると思う。

 

 小竜が「私の貯金は底をついちまいましたよ。はっはっはっはっは!」と笑ってごまかすのが、おじさん臭い。おそらくここ数日、冷衛たち男といたせいだと思う。

 一応彼女は礼儀作法を習っているので、本来はこのような笑い方をする子ではないはず。 

 立ち上がり、神妙な面持ちで「たくさん傷ついて、辛い思いもしたはずなのに、最後まで私のために戦ってくださり、この紫光小竜、本当に感謝しています」と礼を述べていることからも明らかである。

 元々彼女は「はっはっはっはっは!」と笑うような、幼子のような性格なのだ。そこに礼儀作法を学び纏うことで、一応良家のお嬢様を装っている。

 両天秤にそれぞれを乗せつつ、時々で振れ幅が大きいから、性格がコロコロ変わって見える。

 本作の世界観で、小竜と同年代の女子がどういう性格基準にあるのかわからないので、美夜や雨天と比較してしまうのだけれども、この二人よりも小竜は年下と推測し、二人の間くらいの性格に思う。

 読み終えた時に、小竜の性格がようやくつかめた気がした。


 許嫁同然の幼馴染の真人が殺され、仇討ちをすると小竜は決めた。

 仇討ちとは、相手を殺すこと。

 決めたなら、人殺しを覚悟したのだ。

 なのに銃で撃ち殺したとき「冷衛さん、私、人を……」という台詞が腑に落ちなかった。はじめて人を殺した反応なのはわかるけれども、この場に来てそんな台詞が出るのは、どうしてかしらん。もやもやして、彼女は許嫁同然の幼馴染の真人のことを好きではなかったのかもしれない、と考えてみた。

 そもそも冷衛に真人を説明したとき「私の知人」といったのだ。

 幼馴染といえばいいし、許嫁の話をしてくれていたら、仇討ちの手伝いを頼むのもすんなりいくのに、なんだかちぐはぐな感じがして、登場したときから小竜はよくわからないキャラだった。

 小竜は真人と結婚するのが嫌だったのかもしれない。

 あるいは、喧嘩別れしていた可能性もある。

 真人は最近、調べ物をしていて仕事が忙しくてちっとも小竜をかまっていなかったと想像してみる。小竜は十代の女の子なので、幼馴染で昔から一緒だったから、かまってくれなくなったら寂しいし嫌だし。それでも仕事を優先したから、喧嘩してしまったに違いない。もうあんな奴知らない、という絶縁状態に近いところまでいっていたかもしれない。

 そんなときに彼が殺された。ショックだったけど、あまり悲しくなかったのかもしれない。とはいえ、彼女としては悲しんでいる姿を周りにみせなくてはいけない。その行動のために仇討ちをすることにし、(一度親に怒られる)演技ではなく本当に悲しんでいるのだと見せつけるためにも、口入れ屋に話を持っていった。

 安い金額だったので、だれも名乗り出ないだろうなと思っていたら、なんと飛びついた人がいた。

 冷衛である。

 冷衛に真人を「私の知人」といったのは、小竜の中では、もう好きでもない感じだった。あるいは、冷衛がいい男にみえたのかもしれない。許嫁同然の幼馴染と説明したら、冷衛に一人の女としてみてくれなくなるから、と咄嗟に思ったのだろう。だからあやふやにした。

 調べていくうちに真人の手紙を見つけ、彼女は真人の本音をここで知る。

 喧嘩別れをしていたならば、詫びが書かれていただろう。

 死に際に真人は「こ、た……」と、小竜の名前を呼んでいるので、彼は彼女のことを好きだったと思われる。

 仕事が忙しくてしていた理由とお詫び、小竜をどう思っていたのか。小竜の行く末を案じたことも綴られていたはず。彼の思いを知れたおかげで、小竜の中で整理がつき、満足したと思う。

 だから小竜としては、このタイミングで仇討ちを辞めることもできたのだけれども……雨天が現れてしまい、引き返せない状況になっていった。

 なので、小竜としては仇討ちは、もうやめたかったのかもしれない。

 真相を聞きけて、春日爾庵誠之助が捕まり、裁きが下ってめでたしめでたしでよかったはず。

 だけど相手が銃を撃とうとして、冷衛をかばって撃ち殺してしまう。

 かばったのは、冷衛が殺されたら次は自分も殺されるので、死にたくないから撃ったと思われる。

 冷衛が好きでかばうとかではない。好きになるには、なにか足らない。

 二人の関係は依頼人と代理人から、せいぜい甘やかしてくれる親戚のお兄さんくらいの関係になったと思われる。なので、二人に色恋はない。

 だからラスト、怪我をして親に怒られ、治療費を自分で払ったから報酬を待ってくださいと菓子折りをもって笑って伺うのだ。

 少女小説という、はじめから終わりまで主人公の女の子は変わらず自分の信念を貫き通すジャンルがある。だけれど、本作に登場する小竜はそうではなく、どちらかといえば女性神話の中心軌道で描かれている気がする。

 そんな感じなのかしらん。

 

 小竜が笑ってごまかそうとしたとき、高圧的になろうとする冷衛を諌めたのは「壁際に立てかけられた二本の刀を見やった。一本は愛刀の〈静隠士〉である。それに寄り添う刀は、〈憂いひとひら〉。かつて悲運の女性が愛用した刀だった」とある。

 きっと冷衛は形見を大事にしながら、独身のまま過ごすと思う。

 やはり彼には彼女が、彼女には彼が必要だったのだ。

 先のことは知らないけど。


 冷衛は美夜を斬るべきだったのか、を考える。

 彼は、彼女が以前「私が過ちを犯そうとしたときには、私を止めてほしいんです。それが、私のお願いです」と頼まれ、わかったとの答えながら約束を守れずに来た。

 だから、約束を守って斬ったのだろう。

 でも、彼女が求めたのは「私が過ちを犯そうとしたときには、私を止めてほしい」であって、殺すことではなかったはず。

 美夜と対峙し、刀を向け合った冷衛は、自分を支えてくれるもののおかげで救われたと口にした。

 目の前にいた美夜は、支えをなくした、かつての冷衛そのもの。

 美夜を斬ることは、かつての冷衛自身を斬ることと同じ。

 過去の清算のために斬ったようなものである。

 事実、斬ったあと寄り添いも抱きとめもせず、言葉すらかけていない。

 支えてくれるもののおかげで救われたのならば、美夜を斬るのではなく、彼女も救うべきだった。

 作者としては、ここで美夜を斃すのは当然だし、そのあと深手を負った士郎次たちと元気に再会する場面を描くのも当然そのとおりだし問題はない。間違っていない。

 冷衛は刀を握っている時は父性なので、斬るのは当前。(父性は切断、母性は包含の意味)

 そうなのだけれども、冷衛としてはこれでよかったのかと考えると、疑問が残る。

 現実ならば、士郎次はあそこで死んでいた。小竜も助からない。肺を患っている由比太も長くはないだろう。師匠だっていずれそうだ。

 友たちが支え助けてくれたおかげで救われた冷衛だが、気づけばその友たちを失っている状況に陥る。これでは冷衛も救われない。

 支えられて救われたことを知る彼は、彼自身のためにも、黒衣を殺して美夜を助ける道を模索すべきだった。

 ただ、模索するための熟慮する時間が彼には足らなかった。

 だから「小竜さんを見捨てるよりも、私を斬る方が簡単なのですね」と美夜はいわれてしまったのだ。

 冷衛は美夜の墓石の前で「両手を合わせて双眸を閉じた」とき、なにを思ったのだろう。 

 斬る容易さと人を生かす難しさに悩みながら、難問から逃げない強さを彼には身に着けていって欲しい。 








 小語様、お疲れさまでした。

 読み終えた感想は、自分が書かないジャンルなので楽しかったし面白かったです。

 時代劇が好きだった自分を、再発見できました。



 本作は女性神話の中心軌道で描かれながらも同時に、男子神話の中心軌道でも描かれている珍しい書き方がされた作品。

 実直な父に影響を受けていた冷衛は勉強は出来たが未熟。光椿を師匠に剣を習い、友たちと研鑽を積んでいく。跡目相続に巻きこまれて他界した父の後を継ぐも、役不足の職に不満をいだいていた。弟派であり、父を巻き込んだ春日爾庵誠之助に声をかかけられ、過去の謝罪を受けた後で依頼を頼まれるも失敗し、黒衣に刀を折られて自信と職を失う。

(ここまで男性神話。以後、女性神話)

 そんな過去を隠して市井に流れた冷衛は二年後、口入れ屋から仕事をもらっては食いつないでいた。そこに真人の仇討ちの手助けを依頼する小竜とめぐり逢い、事件の裏に黒衣が絡んでいることを知る。旧友との再会や暗殺者から威嚇に合うなか、小竜を救うために過去を認めた行動をとって師匠や旧友との協力を得ながら暗殺者と戦い、黒衣とも対面。全ての裏に春日爾庵誠之助が糸を引いていることをつきとめて屋敷に乗り込む覚悟を決める。が、今のままでは黒衣に勝てる見込みはなかった。

(ここまで女性神話。以後男性神話のつづき)

 状況を打開するには冷衛独自の才能を発揮しなければならない。

 友と師匠の影響を活かし、シンベヱを倒し、屋敷に乗り込む。(この辺りから女性神話)真人の一件と二年前の真相を知る。春日爾庵誠之助が銃で冷衛を撃とうとするも小竜が割って入り引き金を引く。春日爾庵誠之助は息絶え、小竜は手傷を負った。

 執務室を後にする二人に黒衣が迫る。侍女である美夜が黒衣の正体だと見抜いた冷衛は彼女と剣を交え、斬る。

 冷衛は友たちと新たな明日を生きていく。

(男性神話で描かれているのなら、士郎次の城に仕えてほしいとの話を聞くはず)



 なので、冷衛は父性と母性を持ち合わせているキャラに感じる。とくに刀で戦う時は父性が強く現れており、容赦なく相手を斬っていく。それ以外は、どこか母性的におもえる。

 口入れ屋で仕事をもらうも、お金に困っているのだからもっと切羽詰まった物の言い方や態度をしてもいいのにその様子がない。

 士郎次に対して小竜が「バカなんですか」というのに対し、「教養があるのだ」と諭すような言い方をする。まるで母親のように。

 少なくとも、描き分けはできているのでは、と思われる、

 一九九〇年代以降、ファルスをもった戦う少女たちの作品が大量生産されている。母性と父性をもった男性キャラもまた然り。珍しくはないと思われる。 



 本作の良い点は幾つかあります。

 主人公が深堀りされている。

 キャラが立っている。

 相手を説得して話す手順がうまい。

 剣技、戦闘シーンは見どころ。

 独特な世界観にあった比喩表現や言葉遣い。

 魅力ある悪と、その企み。

 細部に至る状況描写などなど。

 読者を惹き付ける謎解き要素と戦闘シーンの見せ場、夜の戦闘描写など矛盾なく描けているところが、『クルシェは殺すことにした』よりも上達している。

 二次選考通過も頷けます。

 さらにこの上を目指すには、どうしたらいいだろう。

 読者が作品に深い感情移入ができ、主人公のカタルシスに誰もがテーマを味わえて、テーマが現実の世界と関係し、世の風潮に一石を投じるくらいの素晴らしいストーリーに仕上がっていけば文句ないに違いない。



 時代ものを借りた、現代的主題を描いてもいい。

 本作も見方によれば、親ガチャの失敗により似つかわしくない役職に配属されて腐っていたところを上級国民に利用された挙げ句、失職した主人公が、舞い込んだ依頼を果たそうと旧友と協力する中で、自省と自戒しつつ成長し、親子共々陥れた悪漢を退治する男の話。

 つまり見方によっては、現代的主題を扱っているともいえる。

 現状の結果を招いたのは自身に足らないものがあり、悪意につけこまれて言われるままに生きてしまった己の弱さが原因だった。

 そこから立ち上がって克服していく主人公の姿を描くことで、不遇を嘆いてSNSを使って弱い者いじめの足の引っ張り合いをしている現代の私達に、「そんな生き方では駄目だっ」と強いメッセージが伝わるような作品であったなら、もっと良かったかもしれない。


 

 幾つかもったいないと感じた点をあげてみる。



一、時代劇のような既視感。


 数多く時代劇を見てきたので、読みはじめてすぐ、どこかの時代劇作品でみたような既視感を覚えてしまった。

 ラノベに時代ものがあっていい。

 いいのだけれど、読み進めば進むほど、予想どおりに進んでいくので、時代劇を文書化したような感覚を覚えてしまう。

 ただ単に、たくさんの作品に触れてきた弊害かもしれない。

 もちろん世界設定が違う。

 でも置き換わってるだけでは、と勘ぐらても仕方ない。

 どんなに上手く面白く書けても、読者や選考する人に既視感を抱かせるのは損かもしれない。

 下読みの人や編集が時代劇を知らなければ通過できるかもしれない。万が一、書籍化して多くの読者に触れたとき、時代劇まねる作家さんと読者にレッテル貼られ、次作を出せなくなるのはよろしくない。


 ミステリーだと、謎解きが他作品と似たり同じだったりすると通過は難しいという。たとえ似ていても、あえてそれをすることで新規性のあるものが描けていれば大丈夫かもしれない。

 なるべくなら、避けたい。


 真似やテンプレが悪いのではない。

 過去から現在に至るまで、幾多の作品が世に出ているのだから、似かよった作品ができるのは仕方ない。いくら作者が、そんな作品みたこともありませんし知りませんでしたといっても、怪しまれてしまいかねない。

 仕方ないのだけれども、ではどうしたらいいのか。

 そういうことを考慮して、原型を読者に気取らせないよう本質は変えず、設定や見せ方を変えればいい。

 本作も変えてはいるけれども、もっと変えていいとおもう。

 たとえば主人公を別キャラにして、視点を変えるだけでも印象がずいぶん変わる。 

 あるいは設定を古くするとか、東洋ファンタジー色にもっとこだわりをみせるとか、いっそのこと西洋ファンタジーに置き換えてみるか。ネタに走るのもいいし、刀以外の戦闘シーンに変更するのも一つの手段。キャラクターを猫にしてファンシー系にしてしまうなどなど、もう一捻り欲しく感じる。

 そう感じるのは、おそらく本作の出来がいいから。

 良く描けているから、もうひと押しふた押し、なにか新規性のものを欲しく感じる。

 新規性とは、人を惹きつける新たなシチュエーション。

 

 

二、序章と一話以降、視点が違うこと。


 時代もの、漫画でも見られる書き方だし、異世界転生ものでもたまにみられる。

 主人公以外の視点は神視点と同じ。

 読者は序章を読みはじめ、真人に感情移入したところで死んでしまう。黒衣が主人公かと思えば、一話からは冷衛視点で描かれる。

 また一から新しく、彼に感情移入しなければならない。

 結果、読者が飽きて読むのを止めるかもしれない。

「神様視点でスタートする物語は、基本的に一次選考で落とす」傾向が、下読みする人の認識にあるらしい。

 とはいえ、本作は二次選考までいっているので、必ずそうだとは言い切れない。

 あるいは電撃大賞だけかもしれないし、下読みの人がたまたま気にしない人だったのかもしれない。

 ともかく、落とす認識を持っている人も存在することを、頭の隅っこに入れておくといい。

 できることなら主人公の登場は一行目、無理なら五行以内を心がけたい。もちろん「冒頭に強烈なインパクトある場面」があって、読者を惹き付けられるのであれば、もう少し主人公の登場が遅れても構わない。

 本作がまさにそうなのだけれども、序章の文量は一章の一話より長い。

 別に長くてもいいのだけれど、真人は主人公ではないので、もう少し序章を短くしてもいいかもしれない。

 ちなみに、刑事ドラマの冒頭のように、訪ねた先に死体が転がっているのは駄目。誰もが考えそうなことをしてはいけない。

 また、序章と本編の視点が違う作品を書く人は、出し惜しみする傾向があるという。どれほどの統計データーを取った結果なのかわからないが、読者に読み進めてもらうためにも、序章から主人公で描いた方がいいのではないかしらん。

 


三、三人称他視点の描き方。


 結論を先に書くと、本作は三人称他視点が合っている。それでも主人公の冷衛視点を中心として、小竜と美夜の視点、この三人で描くといいのでは、と考える。


 本作は三人称で書かれている。

 語り手は主人公と作中を俯瞰して説明する神視点があるのは、ストーリーをコントロールするために俯瞰する視点が大切だから。

 三人称は様々なキャラ視点で書ける利点がある。 

 効果的に使えばいいのだけれど、視点の移動が多いと、読者が感情移入しづらくなる欠点となる。

 電撃大賞に応募し最終までいかなくとも、二次や三次までいった作品の中で三人称作品はないかと探して読んでみましたが、これぞというものを見つけられなかった。(時間がなくて)仕方ないので、他で受賞した三人称作品を読んでみた。(時間のある限り)

 多くが一人称で書かれていた。が、三人称の場合は主人公の単独視点で書かれ、主人公の目に映らず、聞こえず、気づかず、忘れていたり認識できなかったりすることは書いてない。

 それでも他視点を入れるための工夫はされていた。ゲーム世界の転生ものなら、すでにゲームシナリオを熟知しているので、主人公が回想内でほかキャラ視点を描いたり、主人公以外が書いた本や日記、ブログなどを間に挟むことで、違和感なく読めるような工夫をされて他視点を入れていた。他にも方法は色々あるでしょう。

 主人公視点だけが正しいわけではないけれども、視点が変わると読者は感情移入しづらいと思われる。


 序章で真人の視点ではじまり、つぎは冷衛視点、そこに口入れ屋の沙岩の視点も混ざっていく。このあと小竜や士郎次といったキャラも登場。団子屋の視点を挟んで水鋼公国について、春日爾庵誠之助と美夜、そして小竜と父親、小竜視点で進んで士郎次と会い、師匠の道場で稽古する冷衛と師匠、そして回想。ここで、冷衛の過去が語られていく。

 かなり視点が変わっている。

 序章から冷衛視点ではじまった方が、読者は入り込みやすいと思う。

 でもやっぱり、印象的な場面からはじめたい。

 序章がそれだけ印象的な場面を描けており、キャラが立ち、選考で魅力あると評価されたから二次選考まできたのだと推測する。



四、落ちぶれ感や這い上がる必死さが足らない。


 基本、冷衛は性格がいいのかもしれない。

 御曹司的な真面目さを有している、と思えてならない。

 いわば、いい子なのだ。

 勉強ができ、剣も強く、有望視されたけど跡目相続に巻き込まれた父のせいで約ぶそうな職に就き、父を利用した男に自分も利用されて、食い詰め浪人となったのだ。

 ならば、やさぐれた描写があってもいい。

 誰かに八つ当たり、喧嘩をしたり、暴れたり。

 説明では書かれてるけれど、そんな描写が殆ど見られない。

 冷衛視点で描かれているため、彼にとって不都合な場面は割愛、もしくは記憶に残っていないのかもしれない。

 若い頃は腕前の自信から威張っていたこともあったらしいが、回想だったので、具体的にどんな態度や言葉を使っていたのかわからない。

 市井に流れて二年も経てば現状に慣れてしまい、やさぐれ感も失せるかもしれない。でも、心の中では絶えずくすぶり続けていると思う。

 自分は父と違うという過信が慢心を生み、慢心から失敗して落ちぶれたのだ。自分に腹が立たないのだろうか。

 中級武官なら権力者に利用されて落ちぶれるのは当たり前だから、現状を良しとしているのだろうか。

 のんびりライフを送る作品を好む読者もいるけれども、少なくとも彼は切磋琢磨し、由比太に次いで随一とまでいわれた腕前の人物であり自負もある。

 虐げられても落ちぶれた状態から這い上がる必死さを、その描写がもうちょっと欲しい気もする。

 普段の、口入れ屋ではお腹をすかせて小汚い格好をしてだらいない姿も、依頼主である小竜と初めて合う時は精一杯の身だしなみを整え、顔も凛々しく引き締めて、颯爽と歩いて入店するみたいなわかりやすい描写があったら、読み手も、彼は仕事を手に入れようと必死なんだとわかる気がする。



五、色々説明されている。


 説明は、悪くない。

 今の時代、作品が多いので全部見るのはまず無理。

 見たいものしか見る時間がない。

 SNSで友達から紹介された作品を見るにしても、標準ではなく倍速で見るのが当たり前になってきている。

 倍速で作品を視聴されることを知っているアニメ制作側も、台詞を言わずじっとしているシーンを描いて「落ち込んでいる」を視聴者にわかってもらおうとする描き方をやめて、落ち込んでるなら落ち込んでいるとわかりやすい演出に切り替えているという。

 また、読者にわかりやすくするために漫画『鬼滅の刃』でもみられた、主人公の自分語りで実況中継する説明書きが増えてきている。

 本作も同じような意味合いからか、読者にわかりやすくするため(と思われる)説明的な文章が多く感じられる。

 この書き方が、最終選考まで残れる手法なのかどうか、私にはわからない。

 わからないけれども、友達が『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を見ていてわからないからと言うのでどういうことが起きているのか説明してあげると、「そういうことは台詞で言ってくれないとわからないだろ」と文句言われたことを思い出す。

 描写からキャラの心情を想像するなど、読み手側の行間を読み取る力がどれほどなのかわからないので、書いてあると読み手にとって楽には違いない。

 各キャラがそれぞれの場面でどう思っているのか、が台詞で書かれてある本作はおかげでよく分かる。良い点だと思う。思うのだけれども、書きすぎな気もする。なので、主人公キャラとあと二人ぐらいの視点にとどめたらどうかしらん。



 読者が主人公に感情移入しやすくするにはどうしたらいいか、考えてみる。

 


 一、序章をなくす。


 なしでも大丈夫な気がする。が、書き出しにインパクトのある出来事が欲しいのは事実。だから、真人と黒衣との戦いからはじまっているのだ。

 よく書けているので、正直捨てがたい。

 序章は四百字詰め原稿用紙換算七枚。

 もう少し短くまとめても良い気もする。

 短くして、追加するのはどうかしらん。



 二、序章を活かし、その後に追加シーン。


 例:ぎゅっと少し短くした序章の後に追加してみる。

 真人が殺された報告を受ける第十三代当主、水鋼零士狂四郎。当主に就いてから三年余りの間に、家臣たちがつぎつぎ殺される事件が続いている事に触れ、関連性をさぐらせる。惨殺の手口と刀が折られていたことから過去に類似する事件はないか尋ねると、黒衣の人物と私闘に及んで刀を折られた人物が浮かび上がる。その者の名を問うと、水心子冷衛の名前が出てくる。

 その後、一話につなげる。

 序章で主人公を出すための一案。(名前しか出せなかった……)

 冒頭で当主を出すと、解決したラストに当主に呼ばれた冷衛に対して、公国に巣食う悪鬼を駆除できたと褒美として彼を復職させることができる。実質、彼ほどの剣士が公国にはいないのだから、喉から手が出るほど欲しいにちがいない。

 これは、男性神話の中心軌道で描く場合に使える。

 本作はこのラストを選んでいないので使えない。



 三、序章を冷衛の現在の日常を描く。


 例:迷子犬を捕まえるために特殊能力を使って必死に追い詰め捕獲。口入れ屋へもっていき、僅かなお金を手に入れる。「たったこれだけか」「もっと賃金を」と半ば脅すように文句を言うやり取りの後、お金も入ったし汗をかいたからと久しぶりに湯屋へ行く。出た所、御馬前衆と警察が走っていくのを目にする。一瞥だけして長屋へと帰路につく。途中、走り去る黒衣の人影を見るも、気のせいだと追わず見送る。

 出し惜しみなく、特殊能力や剣の腕前(あるいは体捌きでも可)を早くから出し、凄さの片鱗をみせておく。同時に、落ちぶれた感じも。

 この状態から、ラストで彼がどう変わったのか比較できるように描けたらいい。

 主人公から描くと、真人のシーンを割愛しなければならない。

 どうしても真人のシーンを活かすなら、二人が戦っている場面を目撃しなくてはならなくなる。アリバイに矛盾が出てしまう。それはできない。

 戦闘シーンを描きたいなら、冷衛と黒衣の戦いを冒頭もってくるしかない。

 かつて戦ったときのことを夢でみては目を覚まし、いまだに悪夢にうなされているシーンからはじめるのもいいかもしれない。

 冷衛の成長を描きたいならやはり、序章から登場させるべきかしらん。

 美夜は以前から彼を知っているから好きになれる。けれど小竜は、仇討ちの手伝いをして貰うために金を出して雇う相手であり、落ちぶれていて「如何にもうだつの上がらない剣士」「一通りの依頼には対応できる能力を有している」「ただ、剣士としての腕前は保証しかねる」と聞いている、安いお金で引き受けてくれたありがたい人からの出会いであり、親密度が上がりにくい。

 一緒にいる単純接触効果と危険を共にする吊り橋効果で親密度をあげることはできるけど、二人の関係が噛み合ってないような感じがあるので、親密度が上がっているように思えない。なので、依頼が終わってありがとうございました、さようなら、という流れになる。

 本作は、お金を払えないから、多少のつながりが残って終わっている。

 読者に感情移入させるためにも、冷衛は序章から登場したほうがいい気がする。


 

 四、小竜視点で書く。


 彼女が読者視点に近いキャラだと思われる。

 だからといって、彼女を主人公にしなくてもいい気がするけれども、彼女視点で本作を描くと、違った見え方になるので、時代劇ものっぽい既視感が薄らぐ気がする。それはそれで面白そう。

 例:真人から護身用だといわれて鉄砲を渡される小竜。調べ物があるからと出かける真人を送るといって、一緒について歩く。途中、迷子犬を探しまわる冷衛をみかけて声をかけようとする真人。そんな真人に小竜は団子をせびる。日頃から甘いものを食べる彼女を咎め、喧嘩して別れる。(これ以前から不協和音。真人が忙しくて最近かまってくれないことが原因で喧嘩している状態)

 その夜、殺害された知らせを受け放心状態の小竜。犯人はまだわからないと父親から聴くも、泣けなかった。

 自ら調べ仇討ちしようと決意。口入れ屋〈鯉貴屋〉を訪ねる。沙岩は二割の手数料をもらうと説明し、同業にも話をまわすからとそれぞれの手数料を差し引くと、依頼を受ける人の額が半分の五十万になってしまう。「この金額では受ける人はいないし、腕の立つ人ならばなおさら難しい」と、やんわり断られる。が、小竜の必死の頼みに根負けした沙岩は、「一人アテがあるけれどもいい噂を聞かない」と、冷衛の名を出す。頼み込む小竜に、「それとなく彼が引き受けるよう仕向けてみる」と約束する。

 小竜視点で話が進めば、士郎次や由比太など旧友たちから話を聞くなど、本人からではなく周囲から見た冷衛がどういう人間か、を少しずつ知ることで彼の人物像に迫っていける。

 ほとんどの戦闘場面に彼女はいるので、問題はない。

 彼女視点にすれば、小竜の家柄や彼女の本音などの深堀りが描ける利点がある。本作では、真人と幼馴染で許嫁とあるけれども、その辺りの関係に浅さを感じるから。

 春日爾庵誠之助側の情報が、彼女にはあまり入って来ないのが欠点かもしれない。

 美夜との関係を知るには、彼女と話すシーンが必要となるかもしれない。あるいは、全てが終わった後で冷衛が語るか、小竜の想像だけで幕引きとなるかのいずれか。

 そもそも彼女が依頼主であり、物語の方向性を彼女が決めれる立場にある。なので、彼女視点で進めるのも悪くない気がする。

 ホームズでいえばワトソン的立場なので、こういうキャラを書き慣れていないと難しいかもしれない。

 本作のようなラストなら、小竜視点で描けたかもしれないけど、どうだろう。



 五、美夜視点で書く。


 裏表を一番見ているのが彼女である。

 彼女視点ならば、序章の真人との死闘も使える。

 ただし、黒衣が彼女だと読者にすぐバレてしまう欠点がある。

 彼女が冷衛に恋心をいだいていたことを代わりの謎にし、美夜は二年余りの間、市井に流れた冷衛を密かに尾行しつづけていることにする。

 買い物で偶然見かけたときに住まいを調べ、以後定期的に彼の様子を見てきた。が、春日爾庵誠之助には報告しない。

 団子屋からの情報が入ったときも、美夜はすでに、冷衛が知らない若い女(小竜)と一緒にいるのを知っていたことにする。

 雨天に命令を伝えたとき、一緒にいる女を殺せと伝えた。だから雨天は小竜を狙ったが、冷衛に邪魔されてしまう。春日爾庵誠之助の命令を聞いて動きながら、これ以上関わらせないようにしなければと暗躍し、広場で小竜を殺そうとするも冷衛に邪魔されて出来ず、退散するという流れ。

 彼女の回想シーンで冷衛を回想する内容を描けるが、冷衛の幼少期や家のこと、友人のことなどが深く書けない。

 それでも、美夜視点なら多少は書くことは可能のはず。

 生かして終われば読後の余韻はいいし、本作のように殺されて終わるなら、冷衛がお墓参りして終わるシーンが望ましい。



 ……などなど、いろいろ考えてみました。が、本作は冷衛視点の三人称他視点が合っている気がする。

 視点を増やすと読者は感情移入しづらくなるので、三人にしぼるのが妥当と思う。

 口入れ屋や団子屋などの視点を割愛した分量を、それぞれのキャラの背景が深く描ける。

 基本は、主人公の冷衛視点。彼が見えない、知り得ない、わからないことは小竜と美夜の視点で描くのが良いのでないかしらん。



 別角度から考えてみる。

 古今東西、人の欲望は変わらない。

 人間関係、お金、健康、自己実現。

 この四つ。

 冷衛はどれだったかといえば自己実現、剣の腕で出世する。

 しかし実現していない。利用され、黒衣に負けてしまった。

 二年後、仇討ちの手伝いの依頼を引き受け、自己実現を叶えるチャンスが到来する。真相を探りながら色々なことが起きる。

 この過程で師匠や友の助けを借りることで、求めていたものが変わっていく。すべてが解決して彼が得たものは、人間関係だった。

 プロットから考えると、黒衣の象徴である刀を折って、美夜を救ったほうがよかったと思えてくる。覆面をしてたので、春日卿が死んだあと、黒衣の正体を知る者が冷衛しかいないので、生かす方法もあったと考える。

 方法は簡単で、小竜が黒衣の正体が美夜と知って「初恋の人を殺すのはやめて」と冷衛に叫べばいい。春日卿を撃ち殺した時点で仇討ちは終わったし、「冷衛さん、私、人を……」と口にしてることから小竜にこれ以上の人殺しは受け入れられない状況になっている。だから殺すのはやめてといえるはず。依頼主の小竜がやめてといえば、冷衛は止めざる得ない。それでも向かってくる美夜に対して、師匠から授かった一点を見抜いて斬る奥義で刀を折って黒衣を倒し、あとは美夜を抱きしめてあげればいい。

 冷衛から「先生、黒衣に勝つための手がかりが欲しいのです」と、お願いされた師匠は黒衣に勝つために奥義を授けたのであって、殺すためではない。

 刀を振るう理由を、殺すのでなく生かすため、と冷衛が気づいたなら、師匠も教えて良かったと思えるのではないかしらん

 刀が残ったけど、美夜の形見であり黒衣の象徴でもある。なので、美夜を斬って黒衣が残った感じが少しある。

 持ち主である美夜が亡くなったので、刀の特殊能力は、移り香から残り香になるのかしらん。

 残ったのは彼女の恨みか、それとも想いか。

 どちらなのかは読者に委ねられているかもしれない。

 



 作品評価には五つの要素がある。

 一、制限や枠内(対象年齢など)でどれだけ頑張っているか。

 二、十年二十年先も、テーマが古くなりにくいか。

 三、動きやセンス。

 四、社会性、時代に良い影響を与えるか。

 五、売れるかどうか。

 

 電撃の対象年齢は二十代三十代になっているし、四百字詰め原稿用紙換算三百五十枚ぐらいなので、しっかり書ける力がある。

 テーマはどうだろう。動きやセンスは充分あると思う。仇討ちで殺してるし、良い影響を与えるかどうかは難しい。

 コアな人には売れると思う。が、売る側としては、コアよりも人気のあるジャンル「ラブコメを書け」というだろう。

 恋愛を主軸にしなくても、恋愛要素をもう少し入れてみるのもいいかもしれない。


 一九八〇年の世帯は、親子二世帯と親子孫の三世帯は六割を占めていた。が、二〇二〇年は、親子二世帯と親子孫三世帯、ひとり親世帯あわせても四割。未婚や単身、子供のいない世帯が六割となっているのが現状。

「二十代独身男性の四割がデート経験なし」

「婚姻件数が戦後最小」

「生涯未婚率は男性25.7パーセント、女性16.4パーセント」

 恋愛を主体とする売り方が通用しなくなりつつある。

 十代の性教育が進んでいる反面、いやらしいものを嫌悪する流れになっているので、「ラノベはエロい」という考えから十代はラノベを読まなくなりつつある。キスだけでも駄目という風潮です。

 そんな十代(中学まで)は現在、児童書(角川つばさ文庫、青い鳥文庫みたいな書籍)を読むようになっている。小学生で読み始めてシリーズ化しているため、中学になっても読み続ける傾向がある。

 そういったもろもろの現状を踏まえつつ、作品を考えて作らなければならないので難しいですよね。

 

 剣技のバトルをたくさん読めてよかった。

 楽しかったです。

 ありがとうございました。

 長々とすみません。

 あれやこれや書きすぎました。


 


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