【ラブコメ(ライトノベル)部門大賞・ComicWalker漫画賞】『迷子の女の子を家まで届けたら、玄関から出て来たのは学年一の美少女でした』の感想
迷子の女の子を家まで届けたら、玄関から出て来たのは学年一の美少女でした
作者 楠木のある
https://kakuyomu.jp/works/16816700427909435194
黒田雄星が迷子の子を助けると、姉が学年一美少女である白河綾乃であり、かつて同じ小学校で初恋だった多田綾乃だった物語。
三点リーダなど文章の書き方は目をつむる。
二十話まで読んで、感想を書いている。
主人公は高校二年生、黒田雄星の一人称俺で書かれた文体。自分語りの実況中継で、行動に対してどう思ったか感想をそえている。地の文と会話文で思っていることが綴られているので、主人公の考えがよくわかる。一人称で書かれながら、心情を( )内で綴っている。状況や人物の描写にあまり多くないが、白河綾乃の描写には比喩や喩えが使われ、ありふれた表現だけれども可愛くて面白い印象を受ける。
女性神話の中心軌道に沿って書かれている。
学年一美少女と言われている白河綾乃は自分と同じ小学校の多田綾乃であることに気づかず、主人公の黒田雄星は彼女と同じ高校に通っている。
高校二年の夏休み前、コンビニで一人の迷子の小さな女の子と出会い、彼女の家まで送り届けると、迷子の姉が白河綾乃だった。
お礼に彼女の手料理をごちそうになり、翌日にはクッキーも貰う。が、彼女に思いを馳せる男子たちに食べられてしまう。そのことをどこから知った彼女は、下校する彼に食べさせるのだった。その後、一緒に図書館に行ったり海で出会ったり過ごし、夏祭りの花火を見にいく。夏祭りの穴場に訪れたとき、小学校以来だと思いながらなぜ彼女が知っているのか不思議がる。帰宅後アルバムを探すも白河の名前はなく、かわりに多田綾乃の名前を見つける。
二学期開始早々、風邪で休んだ彼女を見舞い、お粥を作って看病しながら、同じ小学校の多田綾乃なのかと尋ね、正解と返事。
小学校の時は背が低くくせ毛の彼女は、チビマリモと男子から呼ばれてからかわれていた。主人公はそんな彼女を助けたことがあった。以来話すようになって仲良くなるも、違う中学に行ってしまった。主人公にとって彼女は初恋だったのだ。
思い出したことを機に、互いに名前で呼び合っていたかつての仲になる主人公は、体育祭の種目でバスケに参加することになるのだった。
ラノベなので、くどい描写はない。
主人公が見たいものや体験していることを素直に表現されている。
展開が丁寧でありながら軽く書かれ、非常に読みやすく、淡々と物事が進む。
それでいてダルくならない。
まさにラノベである。
タイトルにあるとおり、迷子の子を助けたら、その子の姉が学年一美少女の白河綾乃だった。おまけに彼女と仲良くなっていき、小学校時代の初恋相手、多田綾乃だったと運命的な巡り合わせを描いており、作者が書きたいものを書いた感じが作品から伝わってくる。
本作は恋愛ものなので、出会い→深め合い→不安→トラブル→ライバル→別れ→結末の流れで進んでいくと思われる。多田綾乃だったとわかるまでが深め合い、体育祭は不安に該当すると推察する。
あるいは、二十話までが出会いで、ここから二人の仲が深まる展開があるかもしれない。
白河綾乃が登場するシーンでは、「長い黒髪をサラッと靡かせる美少女が出てきた。ちょっと待て、、、俺はこの子を知ってる。我が校で学年一美少女と言われてる白河綾乃だ」(原文ママ)
シンプルすぎて、どんな美少女なのかわからない。
黒髪がさらっと靡く以外の描写しかない。
唯一の「サラッとした黒髪が重要」と読者に伝えているのだ。
ほかは削っても、これだけはどうしても伝えなくてはならない作者の意思を感じる。
彼女が「黒田雄星くん?」主人公の名前を呼び、驚いて同じクラスではない彼女がどうして知っているのかと問いかけると、
「選択授業の家庭科で料理の班で一度だけ一緒になったでしょ?」
「一度だけで普通覚えるか?」
「記憶力はいい方なので」
さらっと説明している。
主人公のツッコミのとおり、一度で覚えるものだろうかと読者も疑問を抱く。が、そのあとに「ドヤりながら、胸を前に出しているので、少し胸が強調されている。ラフな格好だったが、噂によればDからFのどれからしい」と彼女の態度や容姿に視線を向けて、些細な疑問が流されてしまう。
こういった謎の隠し方はうまい。
さり気なく重要な重要な情報を小出しにして、他に興味があることに目を向けさせている。
また彼女の容姿の一部は「くしゃりと、笑った白河姉はとても綺麗だった。吸い込まれそうな大きな瞳に、艶のある肌、ほんのり赤い頬に、唇」など、見惚れたときに表現されている。
「まさか、迷子を家まで届けたら、お姉ちゃんが俺の学校の学年一の美少女だったなんて、それにそのお姉ちゃんにご飯まで作ってもらっている。こんな、ラノベのような展開、誰もが羨ましがるだろうな」
いや、本作はラノベだよ。と、読者にツッコミをさせることで、ライトノベルなので、難しくとらえず楽しんで読んでくださいと読者に合図を送っているかもしれない。
そもそもツッコミを入れさせるようなことを思う主人公は、読んでいて面白い。
「ちょっと自分の身の安全について考えてた……」
と、白河と一緒にいるところを他の男子に知られでもしたら嫉妬にかられた連中にひどい目に合わされるのではないかと考えての発言に対して白河は、「黒田くんって暗殺者とか黒の組織とかに狙われてるの?」と、名探偵コナンネタを口にしている。
子供っぽくあるものの、名探偵コナンの主人公、工藤新一は高校生探偵であり、黒田と白河も高校生なので、このボケツッコミは非常に適した表現である。
主人公には姉が一人いる。でも白河は自分の妹に懐かれてているところから、下に弟や妹がいると思ったらしい。
でも主人公は「確かに歳下には懐かれる方だと自分でも思う。しかし、懐かれてるじゃなくて舐められてるだけじゃないかと最近になって気づいてきた」と思っている。年下に舐められていると思える体験があったのかもしれない。あるいは、作者の体験からくる考えかしらん。
自分より下にいなくても、好かれることはある。実際、私はそうなので、主人公が白河妹に懐かれても不思議には思わない。
おそらく主人公が懐かれたのは、姉がいるからだ。
姉は弟に対して、姉を敬うように躾るもの。そんな弟は、男兄弟に比べて女性に対する扱い方が乱暴ではなく優しく、気遣いができる所作を身に着けていることがある。
なので、主人公は女性に対しての接し方を姉から学び、白河妹にも自然と応対できたから懐かれたものと推察する。
あと、白河について「ふわりっと笑って黒髪を揺らしている」など、彼女の登場には必ず黒髪が強調されている。彼女の髪には何か秘密がありますよ、と読者に伝えている。
比喩を用いて状況を説明や描写するのも、特徴に上げられる。
「今日作っていたのは、オムライスだ。まるで、黄色いドレスのようだった」
「恥じらいながらも、俺の方を見つめながらお願いしてくる様は、とても可愛らしく小動物のような感じだった」
「その悪戯っ子のような笑顔をしといて俺に反応して欲しかったのだろうか、白河は恥ずかしくなったのか顔を赤く染めていた」
「白河と一緒に買い物をしていると、白河が新妻のような感覚だった」
「俺が荷物を置いた瞬間、スライムのようにひんやりした、テーブルに頭を乗せる」
「そう言われれば、こういうのはワクワクするかもしれない。自分達だけで、秘密の会話をしているかのような……」
「俺は手を顎につけ、一体どうしたものか……と考える人のように考えていた」
「共感されたのが嬉しかったのか、ウサギのようにぴょんぴょんと跳ねている。ウサギというか、どちらかというと羽をパタパタさせたヒヨコの方が近いか」
比喩が可愛らしい。
こういう表現をしているときは、白河と一緒にいるときであり、彼女に関係する場合がほとんど。
つまり、いかに彼女が可愛らしく見えいるのかを表現しているのだ。
小学校の時の彼女と気づく前から、本音では彼女に夢中だったのだろう。
五年ぶりの再会としても、(入学時から話題になっていると思われるので、実質三年ぶりの再会)名前はともかく、髪がサラサラになっただけで、気づかないものかしらん。
小学生の時は背が低くて、すごい髪型だった。が、成長期は急激に変化することもある。
数年会わなかっただけで、見上げるほど背が伸びた子を知っているので、背が伸びて女性らしい体つきになり、髪もサラサラとなってきれい変身するのは、ちっとも不思議ではない。十分ありえる。
主人公のように、記憶の中にある小学生時代のイメージのままで相手を見ようとすれば合致しないのは当たり前。
気づかないのも無理からぬ事だったのだろう。
身長が伸びるには食事や運動はもちろん、睡眠が大事となる。
おそらく小学校卒業前には再婚が決まっており、中学に進学したときには白河になっていたと思われる。
親の再婚と進学、同じ小学校だった子がいない中学に行ったのかもしれない。身体の成長に加え環境の変化は多大なストレスとなる。そのため睡眠不足となり身長も伸びにくいと思われる。
だけども、再婚相手はよほどいい人で、白河綾乃のことも大事にして売れたのだろう。その御蔭で彼女に掛かる負担も少なかったと考える。
妹が生まれたのは、中一の終わりか中二のはじめごろと推測する。
高校受験時に生まれるのは、家族として負担となる。再婚したら親としての絆を深めるためにも子供を設けるはず。
生まれてきた白河妹は、夜泣きなどは少なかったと想像する。ひょっとすると、妹と一緒に早く寝ていたのかもしれない。おかげで、十分睡眠が取れて身長も伸びたのではないかしらん。
なので、主人公がコンビニで迷子になっていた妹を助けたとき、妹は四歳くらいと推定される。三歳から自我を持つとはいえ、自分から家の外には出にくい。幼稚園や保育園に通い出していれば、自分から公園に遊びに行くことも十分ありえる。
とすると、姉との年の差は十三歳といったところかしらん。
二十話まではストレスもさほどなく、基本的にまっすぐサクサクと読み進めたので、楽しめた。
この先は色々なことが起きるに違いない。
どんな展開になるかは続きを読まなければわからない。
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