『クルシェは殺すことにした』七話までの感想
クルシェは殺すことにした
作者 小語
https://kakuyomu.jp/works/16816927861985775367
ソウイチの説明から、月猟会の若頭クオンには、剣士ハチロウと機関銃使いのエンパという二人がいるという。養父フリードの遺体には腹から胸にかけて銃創があったことをクルシェは思い出す。
返事を明日にし、帰宅したクルシェ。フリードと住んでいた部屋で一人、昔を思い出す。
幼少のころ、血塗れで倒れ伏す大人達のなかで彼と出会った。初対面で怒りを顕にしたスカイエがフリードに「どうして、このようなことを?」と問われた彼がなんと答えたのかは覚えていない。本来なら殺されるはずだったが、彼に助けられたのだ。月猟会に殺された彼とおなじ殺し屋となった今、仇を討てる依頼が舞い込んできた。
クルシェは、引き受けることを決意する。
基本、楽しんで読んでいます。
こんなふうに読んでいる、という感想です。
ソナマナンには依頼の選択権がなく、クルシェと行動を共にすることになっていることが、ソウイチとのやり取りからわかります。
ということは、スカイエはソウイチだけでなく、ソナマナンにもクルシェのお目付け役として常に行動させているのでしょう。
その理由が、およそ十数年前に依頼した殺害で、フリードがクルシェを助けている経緯にあるのかもしれません。フリードが受けた依頼はおそらく、一家全員皆殺しだった。にもかかわらず、妹か娘に似ていたか何かの理由から殺せず、クルシェを連れ帰ってきてしまった。
この一件と、ハチロウにかけられた少女連続殺人事件が関係している可能性があるのでは、と推測します。この連続殺人の犯人はフリードだった、というのがあとで明らかになるのでは、と勝手な妄想をしています。
カクヨムをはじめ、作品を書かれている人なら御存知の通り、作品に関係ないことを入れたりしないはず。いわゆる伏線回収がされる展開が起きるのではないのか。そして、物語がぐわーんと盛り上がっていくのだと思います。
ミステリ要素も含んでいるところが、本作の良いところです。
「……フリードさんが亡くなった後、スカイエさんは〈月猟会〉の件を諦めたんだけど、さっきも言ったようにブレナンスやらサイモンまで返り討ちにされて、またウチに話が回ってきたんすよ」
と、ソウイチは語っています。
彼はいろいろと知っているようです。スカイエに聞かされたか、彼が雇われている間に起きた出来事かもしれません。そもそも彼はどのくらいの期間、雑用係をしているのだろう。
釣りをしてるとき落ち込んでいるようなクルシェの姿があったので、フリードが殺されて半年とか、一年くらいなのかしらん。そんな雰囲気が漂ってきます。
フリードが殺された後、あるいは存命中にスカイエは、ジアという最高峰の殺し屋を雇い入れた、あるいは育てたのかもしれません。だったら彼女にクオン殺害をさせればいいのに、スカイエはそうせず、わざわざ不在中に殺害依頼の話をクルシェに持ってきています。
勝手な妄想で邪推ですが、スカイエにとってクルシェは、敵対勢力の生き残りなのでしょう。
フリードに殺害依頼したのに子供を連れ帰ってきてしまった。スカイエとしては、クルシェがいつ自分の寝首を掻きに襲ってくるかもしれない、と危ぶんでいたのではないでしょうか。
もしそうなら、クルシェを目の届くところに置きつつ殺し屋として使い、表向きは職を与えて経験を積ませて鍛え上げているといい、本音では依頼中に死んでくれたらいいのにと思っているかもしれません。クオン殺害依頼も、うまくいけば敵対勢力の拡大を阻止できるし、失敗しても後顧の憂いを断てるわけで、どちらに転んでもスカイエに益がある結果でしょう。
経営者としては、依頼遂行できる有能な人間を失うのは、自身の勢力低下を招き、売上等を下げる結果を招きます。優秀であればあるほど、失うのは痛手です。
とはいえ、優秀になりすぎて自分に逆らってきては困ります。なので、そろそろ手放す頃合いだと判断し、従順な今のうちに手を打とうとしたのかもしれません。
実際のところは、違うかもしれません。
読んでのお楽しみ、なので、どうなるのでしょう。
ジアをバカンスへいかせたのも、スカイエの思惑が働いている可能性があります。ふらりとバカンスへといってしまうような性格をジアがしていて、たまたま不在中に殺害依頼が入ってきただけなのかもしれません。
どちらにしても、彼女不在中の殺害依頼が舞い込み、クオン配下の二人はフリードを殺害した人物と疑える情報を耳にし、ソウイチとソナマナンが行動をともにする。
クルシェは依頼を受けることを決意します。
タイトル回収です。
自分で決断をしたように思いつつ、スカイエの思惑通りに進んでいるのか。それともスカイエは純粋にいい人で、クルシェに仇を討たせたいのか。果たして……。
人殺しを生業としている人たちなので、私たちとは違う価値観を、彼女たちはもっている気がします。
クルシェにとって、フリードはどういう男だったのかで、この先の展開が大きく変わっていくのでしょう。
いささか深く読みすぎています。
ここまで四百字詰め原稿用紙換算でおよそ四十枚。全体でおよそ三百五十枚と過程すると、いいペースで物語が進んでいます。
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