怒りの罰ゲーム

バブみ道日丿宮組

お題:真紅の怒りをまといし弁当

怒りの罰ゲーム

「これって……」

 お昼休みに手渡されたお弁当箱を開いてみれば、それは真っ赤だった。

 刺激臭はしないものに、どう考えても胃に悪そうだ。

「昨日嘘ついたから、罰だよ」

「あぁ……そう」

 彼女はご立腹だった。

 確かに僕は昨日彼女に嘘をついて、生徒会長と買い物をした。

 女性である生徒会長との買い物は、つまりデートだよねと、お叱りを受けた。

 目撃されないようにわざわざ隣街へ行ったものの、彼女の包囲網は大きかった。

 隣街にいた友だちから聞いた、とのことだ。

 さすがに僕もそれは予想外だった。

 彼女との付き合いは高校からで、中学や小学でどんな友だちと絡んでたなんてデータはない。

「はい、箸」

「あ、ありがとう?」

 真っ赤に染まってはいるものの、愛妻弁当に違いはないので箸を受け取る。

「お味噌汁いる?」

「……いる」

 水筒から流れてくるお味噌汁(?)も真っ赤だった。

「激辛オンリーなのか……」

 授業中にトイレへ駆け込む要因になるかもしれない。

 午後の授業は好きな技術であったのにと残念がってると、

「もっと辛いほうがよかった?」

 不満そうな表情を彼女が見せた。

 まだ口にしてないが、絶対に辛い。

「そっちは普通なんだね」

 彼女のお弁当箱に目を向ければ、普通の色だった。茶色、緑、赤、白。見慣れたお弁当。

「こっちは私の分だからね。罰ゲームは君だけだよ」

「そ、そっか……」

 一緒に食べるというわけにはいかないか。

 痛みを共有してくれる友だちを見渡してみても、屋上には僕たちしかいない。

「味噌汁は飲まないの?」

 素朴な疑問。

「これは全部、君のだから」

 げへへ。それは知りたくなかった情報だ。

「ほら、休み時間終わっちゃうから食べよう」

「う、うん」

 彼女と過ごせる貴重な時間だ。

 罰は罰として過ごすしかない。

 それが彼女のために起こしたことであっても、彼女にとってはデートということ。

 痛みをきちんと受け取ろう。


 結果ーートイレに駆け込むどころか、保健室から病院まで直行になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

怒りの罰ゲーム バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る