第13話 発動!マグニウェーブ作戦 チャプター10 未来、悲しみが終わる場所
しばらく、シーンとした時間が過ぎた。
本当は全然時間経ってないのかもしれない。でも私には、数分、いや数十分、それよりももっと時間が流れたと感じた。気がした。
「……やった」
誰かがそう呟いた。
それを皮切りにあっちこっちで声が上がって来る。
「エルマグニを倒したぞー!!」
「勝ったんだ! 本当に勝ったんだぁ!」
「生きてる~!」
みんな武器とか色々放り投げて騒ぎ出した。霧がすっかりなくなったこの場所で、みんなの声が響いている。通信機からも、頼子さんとミーコのはしゃぐ声が漏れてる。あっちも大騒ぎだ。
「勝賀瀬さーん!」
「莉央さん!」
「莉央姉!」
憐人に愛美、ハヤミの三人がこっちに駆け寄ってくる。疲れてるはずなのにそんなの感じさせない満面の笑みだ。後ろには奏もいて、ホッとした表情をしてる。
「へへ、おーい! みん……っ!?!?」
手を振ろうとした瞬間、全身に電気が走った。
暴れたといった方がいいかもしれない。身体中から金属がこすれ合うような音やぶつかり合う音が鳴っている感覚。それが物凄くクリアに耳に届く。
視界はバグったようにぶれたかと思うと、移る景色が気味の悪いくらい、目に悪いくらいに彩度が高くなって見える。
そして私の身体は動かなくなった。手も足も、口も、目も動かせないから瞬きもできない。
前かがみになって倒れていくのだけが、妙にはっきり理解できていた。
でも――
「まったく、世話が焼ける」
私は地面に倒れこむことはなかった。
寸前でアヤが支えてくれた。
「バックファイアが来たな。かなり重い奴だ。あれだけ無茶をすれば当然だが」
「へへっ……久しぶりだぁ……こんなになったの……」
口が動いた。腕も、力は入んないけど楽な体制にはできる。アヤが私の代わりにアルカナ粒子をコントロールしてくれてるおかげだ。バックファイアの痛みとかそんなのが、軽減されてる。
「莉央姉! 無事なの!?」
「莉央さん!」
「勝賀瀬さん!」
「心配なら早く帰投準備に取り掛かれ。ここではこれ以上どうすることもできん。
指令室、救護班に集中治療の準備に取り掛かるよう要請してもらいたいのだが」
『えぇ、すぐに連絡するわ』
「全隊に通達。任務完了! 直ちに帰投する。準備に取り掛かれ。おう、莉央。終わったな」
「……うん」
「とりあえず休め。話はそれからだな」
「うん」
「本当よ莉央姉。早く元気に戻ってよね」
「莉央さん、後の処理は私たちに任せてゆっくりしてください」
「もうこれ以上無理しちゃだめだよ莉央ちゃん」
「勝賀瀬さん、無事でよかったです」
色々とみんなに話したいことはあった。
心配かけてごめん。とか、やったね! って喜んだりとか。
でも、今はみんなの言う通り、ゆっくり休ませてもらおう。さすがに色々無理しすぎた……
ブチッ!
右足に違和感があった。アヤに肩を預けながらなんとか振り向く。
「あっ……アヤごめん、落とし物。拾って」
「……仕方ないな」
嫌そうだったけど戻ってそれを拾ってもらう。
この前買ったミサンガが切れてしまっていた。
「……なんか願っておくんだったな」
私は今生きている。
過去を乗り越え、今を歩いて、未来へ進んでいく。
地球に帰って、いつか心の底からみんなと笑い合える、明日へ……
アルカナガールエスケーパーズ 第一章 THE ARCANA CONTACT ‐完‐
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