第11話 星冥獣覚醒 チャプター5 大乱戦の渦中へ
エリアSポイント0
荒野に切り取られたその場所は今まで以上に異様な光景だった。
まるで廃れ果て、ゴーストタウンと化した空虚な町の上から更に町が降ってきたような。無理やり押し込めたような。そんな町の奥で濃い霧が蔓延している。実に奇妙な光景だ。
おそらく神隠しによって元々ミストピアに来ていた町に、更に新しい町がやってきてしまったのだろう。さっき兵頭さんの話でも三年前ここに転送された人々を救出しに来たと言っていたし。
高層ビルが住宅(だったであろう残骸)に破壊されている。何かの工場に自転車や機材が刺さっている。町の中だというのに様々な魚、イルカやサメなどの死骸が転がっていた。水族館でも転送されたのだろうか?
現着した面々は皆息を呑んで周囲の警戒を強める。緊迫した空気で押しつぶされ、吐き気を催す。それくらい重圧を感じる空間が出来上がっていた。
「急いで救助に向かうよ」
「まぁ待て莉央。場所が場所だ、迂闊な行動は……」
止めようとする兵頭さんだが、こちらの都合などお構いなしに霧は迫ってきた。
あの異様な町の光景がすっかり霧によって見えなくなり、そびえ立つ真っ白な壁を見ているようだった。その霧からコブリンとマグニが大勢姿を表し始める。
兵頭さんの話の通りだ。タートル、コブラ、ウーパールーパー、今まで戦ってきたマグニが何体もそこにはいた。それだけではなく、蛇、トカゲ、ワニ、カメレオン、イグアナなどの特徴を持ったマグニもいる。それも複数体づつ。
そしてその全てのマグニの胸部に赤い発光体が有り、これまで出会ったマグニ以上に強く発光していた。
気味の悪い声にもならない音を発しながらこちらを睨んでいる。いったい全部で何体いるんだ……?
「AGEと第一~第七分隊はマグニ共を引きつけろ。第八、第九分隊は様子を見て救助対象を探して保護」
「「「了解!」」」
隊員たちの声を皮切りにマグニたちが襲い掛かる。こちらの陣営も負けじと果敢に迫っていった。いよいよ開戦だ!
各所で戦いが始まり、乱戦状態となる。
一番激しい戦いを繰り広げているのは先輩の所だった。
「でやぁっ! はっ!」
くるり、ひらりと身体を回し、敵の胸部へ、頬へ、頭部へ蹴りを入れていく。足をはらう。肘を鳩尾に叩き込む。アクロバティックな動きでコブリンやマグニに次々ダメージを蓄積していく。
「《マジカ・ファイアボール》」
右手の先に赤い魔法陣を出現させ、周囲に弧を描くように右腕を振るう。魔法陣から放出された火球が先輩を取り囲んでいたマグニやコブリンを焼き払った。
「次行くわよ次!」
剣を取り出し、コブリンを次々と斬り裂いていく。その先でウーパールーパーマグニと戦うAGE‐ASISST隊員の二人を見つけ、そちらへ駆けていく。
『マキシマムチャージ』
「《マジカ・フリーザー》」
指先の青い魔法陣から冷凍光線が発射され、マグニの頭上で炸裂。冷気が降り注ぎ、マグニの身体へと付着。氷漬けとなって動かなくなった。
「《マジカ・ロックキューション》」
黄色い魔法陣から出現した岩石の牙が氷漬けのマグニを粉砕! 粉々になったマグニの氷塊は緑の魔法陣から発生した旋風で一か所に集められ、赤い魔法陣から放射された火炎で完全に消滅した。
前回戦った時よりもスムーズに対処できていた。しかも違う戦法、あれからより良い対策を考案していたのか。
「
「「了解」」
先程まで相手をしていた二人は敬礼し、次の標的へと向かった。先輩も大きく息を吐くと、奥で暴れているウーパールーパーマグニの元へ向かっていった。
「やっ! はぁ!」
「だぁっ!」
僕たちも次々と襲い来るマグニやコブリンを返り討ちにし続け、既にマグニ三体。コブリンはもう五十体は倒したんじゃないかな? 我妻さんの分も合わせれば百体は倒してるはず。
疲れはあるけど、マグニも一度戦った相手が多いし僕たちも強くなっている。苦戦は思っていたよりしていなかった。
「相沢君! そっちにマグニが集中してる!」
後方で七人のAGE‐ASISST隊員が二体のコブラマグニと交戦しているのが確認できた。AGE‐ASISST隊員じゃマグニを倒すのは困難を極める。コブラマグニなら戦ったことがある。嫌な思い出もあるが、僕が受け持った方がいいだろう。
「わかった! 僕が向かうよ。ここは任せる」
意を決してマグニの元へ向かおうとしたが……
「ぎゃっ!?」
突如顔面に強烈な痛みが走る。あまりの衝撃に足のバランスを崩してしりもちをついてしまった。
顔を押さえながら見上げると、目の前の空間が少し歪んでいる。そしてその歪みはサイケデリックな目と長い舌を持つマグニとなって出現した。
その長い舌と姿を消す能力、カメレオンマグニか! この乱戦の中透明化を使って暗躍されたら厄介なんてもんじゃないぞ!?
体勢を整えて斬りかかるが、バックステップで避けられてしまいマグニの身体が歪み始める。また姿を消すつもりか。
しかし――
ダンッ! と銃声と共にマグニが撃ち抜かれ、消えかかっていた姿が露わになる。今だ!
『マキシマ・オーバーブレイク』
よろめくマグニに向かって斬りかかる。左肩から右の腰まで長いストロークの斬撃が入り、マグニは悲鳴にも似た声を挙げた。その開いた大きな口へ突きを繰り出し、長い長い舌を切断しつつ口内へ剣をねじ込んだ。
口内を貫かれいっそう大きな悲鳴を上げるが、しばらくすると力と共に声も枯れ、爆散した。
銃声のした方向を見ると、やはりというか撃ったのは勝賀瀬さんだった。襲い来るマグニやコブリンを捌きながら各所で姿を消しているカメレオンマグニを銃で撃ち抜いている。オーバードライブで感覚を強化して居場所を察知しているのか。
おっと、僕もあの二体のコブラマグニの元へ向かわないと!
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