第11話 星冥獣覚醒 チャプター3 ポイント0

 指令室 


 結局アナウンスは最後までされずに指令室へ辿り着いた。


 ドアが開くと開口一番、勝賀瀬さんが詰め寄るように代神子原さんに訊ねる。人命が掛かってるんだ、勝賀瀬さんの迫力は鬼気迫るものがあった。


「ミーコ何? どうしたの場所は!?」


 兵頭さん、頼子さん、それに所長まで代神子原さんへ訊ねているみたいだった。どうやら通信機器の故障というわけではなかったようだ。


 いったいどうしたというんだろう? 代神子原さんは絶句してデバイスを覗いていたが、勝賀瀬さんの声を聞きぎこちない様子で視線を僕たちの方へと移す。


 そして震えながら答えた。


「……エリアSポイント0です」


 エリアSってことは西の方か。でもポイント0? 何にしても今回は転送反応。ミストピアにまた神隠しにあった人たちが来たってことだ。早く迎えにいかないと。


「よし、行きましょう」


「今日こそは犠牲者を出さずに……皆さん?」


 僕と我妻さんは勢いよく指令室を出ようとしたが、他の皆はその場を動かず固まっていた。


「エリアSポイント0……」


「ポイント0……しかもよりによってエリアSだなんて……」


「まさかまた……」


「……」


 先輩も、頼子さんも、兵頭さんも目を見開いて固まり、しきりに転送反応のあった地点を呟いている。


 勝賀瀬さんと所長は声も出ない様子だ。


「皆さん何しているんですか!」


 我妻さんが一喝。そのおかげか皆我に返ったかのように動きだした。


「……そうね。代神子原君、改めてAGE‐ASISST隊に通達。それと医療班に掛け合ってみて。今日非番の人たちにも無理言って待機してもらえるように」


「了解しました……」


「私は鵜飼うがい君(非常勤オペレーター)と田中ちゃん(非常勤アナライザー)に声をかけてみるわ。

 兵頭さん、AGE‐ASISST隊のオペレーターは鵜飼君に任せてよろしいでしょうか?」


「ああ、頼む。俺たちも支度するぞ、莉央、早瀬」


「……うん」


「そうね。ここでウジウジしていても仕方ないし」


 ぎこちなかったり、いつもより鬼気迫っていたりと、みんななんかいつもの雰囲気と違う。が、ようやく動き始めた。それにいつもより念入りに態勢を整えている。非常勤オペレーターやアナライザーも呼び出すなんて滅多なことではない。


 なんだかよく分からないけど今は神隠しに遭った人たちの救出と保護が優先だ。一刻も早く向かわないと。


 だけどそこで思わぬ妨害を受けた。


「ダメだ!」


 大きな声で皆を制止したのは所長だった。えっ、所長?


「今回ばかりは君たちを出動させるわけにはいかない!」


 いつも落ち着いている所長が信じられない程声を荒げて僕たちを呼び止める。いや、立ちふさがるといった方が合うかもしれない。それだけ鬼気迫るものがあった。


「どいてくれ所長。行かないわけにはいかねぇ」


「ダメだ! 許可できん! またあの悲劇を繰り返すわけには……」


「……はぁ」


 兵頭さんがため息をつくと同時に、指令室の扉が開いた。門藤さんと富加宮さんだ。さっきのアナウンス結局途切れたままだったから様子を見に来たようだった。


「何お騒ぎですかこれは? 皆さん、出撃は? 場所は何処なんです?」


「エリアSポイント0だ」


「え……」


「美咲様!」


 兵頭さんが若干苛立った声で答えると、門藤さんは信じられないとでも言いたげな表情で膝から崩れ落ちた。富加宮さんが急いで駆け寄る。


「ちょうどいい、富加宮、このおっさんを押さえておけ」


「……わかった」


 わけがわからなかった。さっきから僕の知らない事情が裏にあるまま勝手に話が進んでいるようだった。


 なんとか僕たちを出撃させまいと暴れる所長。それを押さえる富加宮さん。口に手を当て、過呼吸気味の門藤さんとそれを宥める頼子さん。必死にメジャーベース内へ通達する代神子原さん。


 彼らをおいて、僕たちは指令室を後にした。

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