第11話 星冥獣覚醒 チャプター2 災厄、嵐の如く
翌日
指令室にて里中頼子、代神子原壮介の両名はデバイスに向かい第三支部から送られてきたデータに目を通していた。
本来は所長こと
かといって持ち場を離れるわけにもいかない。もし霧や転送反応があれば真っ先に対処に当たらなければならないのはオペレーターとアナライザーの二人なのだから。
その為、できることといえばデータのチェックくらいなのだ。文字は読めなくとも所々に確認できる絵や図なら何か一つ解釈を提示できるかもしれない。という建前の暇つぶしだった。
「よぉ、お疲れさん」
「二人とも悪いね。我々の仕事を手伝ってもらって」
そんな静謐な空間に入ってきたのはAGE‐ASISSTのリーダーであり本部の戦闘指揮も任されている兵頭悟と、本部長の江崎圭一だ。
「所長、兵頭さん、お疲れ様です」
「僕たちが好きでやっていることですから。それに手持無沙汰ですし」
「はっはっは、平和な証拠だよ。このまま地球に帰るその時まで、穏やかな日々が続けばいいのだがね」
「
のんきに談笑。大人の彼らでさえこの平穏な日々で緊張が解け、気が緩んでいた。
ずっとこのままの日々が続けばいい。皆で地球に帰るその日まで。誰もがそう思っていた。
しかし、そんな願いも平穏も打ち砕く事件が発生した。嵐の前の静けさとはよく言ったものだ。
ビー! ビー! ビー!
メジャーベース全域に警報が鳴り響く。指令室は先程のまったりした雰囲気から緊迫したものへと一瞬にして切り替わった。
アナライザーの代神子原が反応と発生ポイントを割り出し、マイク越しに告げる。
「転送反応確認! 場所は……っ!?」
「おい壮介、どうした?」
「代神子原君?」
いつもなら何の反応か、その場所、場合によってはその他の状況を二度繰り返し、メジャーベース、及びAGEのアルカナチェンジャーに情報を伝達する。
しかし、今回の彼は霧の発生場所を告げる前に固まってしまっていた。信じられないものを見るような目、吹き出す大粒の汗。ただごとではない様子だ。
「おい壮介!」
「代神子原君どうしたの!?」
「何があったのだね?」
三人もそれを察してかより緊迫した様子で代神子原を呼びかける。そのとき、丁度指令室のドアが開きAGEの面々が入ってきた。
莉央が険しい面持ちで訊ねる。
「ミーコ何? どうしたの場所は!?」
代神子原はおそるおそる視線をデバイスから皆の方へと向き直す。
そして震えながら答えた。
「……エリアSポイント0です」
憐人SIDE
「ふぁあ……」
昨日縁日ではしゃぎ過ぎたせいかまだ眠い。トレーニング中にもかかわらず大きなあくびが出てしまった。
「あんた、訓練中にいい度胸してるじゃない」
しまった。早瀬先輩から気圧されるようなプレッシャーが漏れ出している。
「いや先輩、これはその……」
「そんな余裕があるなら、容赦はしないわよ!」
それまではあくまで格闘訓練。素手での組み手だったのがいきなり魔術が飛び交うようになった。魔法陣から火、水、風、土、様々な元素エネルギーが矢のように次々と放たれる。避けるだけで精いっぱいだ。
「ぎゃっ!」
……前言撤回。避けることさえ無理だった。何本か身体に刺さって凄く痛い。変身してなかったら死んでたかも。
「ちょっとハヤミ、ただの組手でやり過ぎじゃない?」
隣で我妻さんと組み手をしている勝賀瀬さんが指摘してくれるが。
「私との組手の最中にあくびをするあいつが悪い。てか訓練中にあくびだなんて身が入っていない証拠よ。そもそも……」
と、結局僕が悪い流れは変えられない。いや、本当に僕が悪いんだけどさ。問答無用は厳しいというか……
「相沢君大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。痛いけど」
「でも、早瀬さんの言う通り気を抜き過ぎよ。相沢君の場合、私と心持が違いすぎると変身が解除される危険性があるんだから気を付けてもらわないと」
「そうだね。流石に油断しすぎてた」
第三支部から戻って以降、まるで霧が発生しないから気が抜けていた。
僕たちが本部を離れている間も、本部近辺でマグニが出たのはたった一回。しかも僕たちがいなくなった次の日だって聞いたから三週間くらい本部近辺にマグニが現れてないってことになる。
そう考えたらなんだか緊張感が薄れて、でもこのままじゃいけないよな。
ビー! ビー! ビー!
そんな僕に喝を入れるかの如く、警報が鳴り響いた。久しぶりのマグニか、本番でヘマしない様に今一度気合を入れ直さないと。さて、場所はどこだ?
『転送反応確認! 場所は……っ!?』
転送反応! これは本当に気を引き締めていかないと! 場所は!?
「……ん?」
「アナウンス何やってんのよ? 場所は?」
待てど待てど、転送先のアナウンスがない。マイク奥で何やら兵頭さんたちの声が聞こえる。何を話しているかは聞き取れないが。
「三人共! いつまでも待ってないで行くよ! ほら早く着替えて!」
勝賀瀬さんのその言葉で、僕たちは急いで上を羽織り、指令室へと向かった。その間も転送先のアナウンスはされなかった。
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