第6話 命を繋ぐもの チャプター1 我らAGE
憐人たちがミストピアへ飛ばされてから、約一か月半の時が過ぎた。
そんなある日、ここミストピアへ新たな転送反応が確認された。
大型デパートを中心とした街の一部。そのデパートの立体駐車場で兵頭とAGE‐ASISSTの一番隊がコブリンとマグニを囲んでいた。
包囲して放たれた無数の銃弾にコブリンは消滅し、残るは子豚に似た姿をしたマグニ、ピギーマグニのみ。
銃撃の雨の中、意に介さず隊員たちに襲い掛かるマグニだが、ある銃撃が頭部を撃ち抜き、倒れこむ。
「おまたせ」
先程の銃撃の主、勝賀瀬莉央が隊員の隙間からマグニの正面へと歩み出る。
右手の銃をスティックへと持ち替え、マグニへと突っ込んでいく。
怒涛のスティック攻撃になすすべもなく、マグニはボロボロになって膝をつく。
『マキシマ・オーバーブレイク』
パスを装填したスティックにエネルギーが蓄積されていき、強力な横薙ぎを繰り出す。
胴へと綺麗に入ったそれは致命傷を与えるのには申し分なく、プギィィ! という断末魔と共に、マグニは爆散した。
一方その頃、ショッピングモール近くにある公園。
「きゃあ――!!」 「いいから早く逃げろぉ!!」
絹を裂くような悲鳴。野太い怒号。阿鼻叫喚の喧騒のまま逃げ惑う人々の姿があった。
その背後にはコブリンの大群と、それを引き連れるもう一体のピギーマグニ。
コブリンの何体かが駆け出し、人々との距離を詰める。だが人々からコブリンを遮るように炎の壁が出現し、コブリンたちの足が止まった。
その炎の壁に沿って、マグニとコブリンたちの前に早瀬が立ちはだかる。
「来なさい」
たじろぐコブリンたちを押しのけてマグニが襲い掛かる。怯みながら、コブリンたちもそれに続いた。
だが迎え撃つ早瀬に成すすべなく倒されていくコブリンたち。
エクストリームマーシャルアーツの動きを取り入れたアクロバティックな体捌きから的確に繰り出される蹴りや掌底に手も足も出ず、許容量を超えるダメージを受け消滅。
背に聳える炎の壁に投げ入れられ消滅。
様々な魔術による攻撃を喰らい消滅。
あっという間に満身創痍なマグニが一体だけとなった。
『マキシマ・オーバーブレイク』
「そろそろ幕引きよ」
剣に緑の魔法陣を纏い、そこから生じる緑の風が剣へと絡みつく。
剣を振るうと、緑色の風は円となってマグニへ向かって飛んで行き、真っ二つに切り裂いた後、小さな竜巻が発生。
竜巻に巻き上げられた中で、マグニは静かに爆散した。
住民区
各所に蔓延るコブリンたちをAGE‐ASISSTが対処する中、憐人と愛美はマグニと戦っていた。
「はぁあ!」
「せい!」
巧みなコンビネーションで三体目のピギーマグニへダメージを与えていく。既に立っているのもやっとの状態だ。
民家の裏庭に追い込んだマグニに対して必殺技を発動する。
「いくわよ相沢君」
「よし」
『『マキシマ・オーバーストライク』』
「「はぁっ!」」
二人のキックが同時に炸裂し、壁とキックでサンドイッチ状態になるマグニ。
マグニがめり込んだ衝撃で民家に大きなひびが入り、崩れると共にマグニは爆散した。
同時に、各所のコブリンたちもAGE‐ASISST隊員たちの活躍で殲滅が完了し、辺り一帯に薄くかかっていた霧は、一か所へ不自然に集まり、そのまま逃げる様にどこかへと消えていった。
変身を解いて一息つく二人。だがまだやるべきことがあると気を入れ直す。生き残った人々の保護と現状の説明。それと物資の調達をしなければならなかった。
AGE‐ASISST隊員たちと協力し合い、人々をデパートへと誘導する。
「さ、君も行こう。ここは危険だ」
「安心して、私たちが責任をもって安全な場所へ連れていくから」
頬や衣服のあちこちに血が付着し、怯え、混乱している中学生くらいの少女へと声をかける。少女は堪らず訊ねる。
「……あなたたちは……いったい?」
「私たちは」
「僕たちは」
「「AGE。アルカナガールエスケーパーズ」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます