小話1 何故ハヤミ?

「さ、約束通り訊きたいことがあれば、何でも教えるわよ」


「ではさっそく。先輩は何で勝賀瀬さんに『ハヤミ』って呼ばれてるんですか?」


「……え? そこ? 他に色々訊くことあるでしょうに」


「いやぁ、ずっと気になっていまして。『はや』せのぞ『み』でハヤミだっていう理屈はわかるんですが」


「単純な話よ。『希望のぞみ』って名前の子が、あたしの他にもう一人いんのよ」


「え、そうなんですか?」


「今第二支部にいる№17スターのアルカナ、宇賀神希望うかがみのぞみってのがね。

 そんなわけで、区別のためにあたしをハヤミ呼びしてるのよ。莉央姉は」


「だとしても普通に苗字の早瀬呼びはしないんですね」


「そっちの方が呼びやすいらしいわ。『え』の段で終わる名前がしっくりこないんじゃない? 富加宮さんのことも、綾芽じゃなくてアヤって呼んでるし」

 

「確かに。僕は憐って呼ばれてますけど、『お』の段も苦手なんですかね」


「てか、それは単純に短くしただけだと思うわよ。戦っている最中でもなるべく早く名前を呼ぶために、よく略しているって話を前に聞いたわ」


「そういえば代神子原さんのこともミーコって随分略して呼んでますね」


「莉央姉はキャリア長いから、色々独自のノウハウ積んできてるのよね」


「……ん? でも我妻さんのことは普通に愛美って呼んでますよね?」


「そうね」


「マナ。とか、ナミ。って呼ばないのは何ででしょう?」


「……さぁ?」


「それに奏さんは『え』の段で言い終わるのに略しもなければ言い換えも無いし、さっきの話と全然違う……」


「知んないわよ! あたしは莉央姉じゃないんだから! そんなに気になるなら、あたしじゃなくて莉央姉に直接訊けばいいじゃない!」


「ええっ……先輩が何でも訊けって言ったのに……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る