第5話 墨西哥山椒魚の呪い! チャプター2 早瀬希望
昼過ぎ。昼食を食べ終え、指令室に向かうと、先ほどの少女の姿があった。少し後で入ってきた勝賀瀬さんが少女を見るなり嬉しそうに駆け寄る。
「おっ、ハヤミじゃん! 久しぶり」
「莉央姉! 久しぶり」
「何々、もしかしてしばらく本部にいるの?」
「そっ、〈ロゴス〉が解散してから色々と回っていたけど、そろそろ腰を落ち着かせて本部で活動してもいいかなって」
親しげに話す二人。盛り上がっているところに、ようやくトレーニングを終えた我妻さんと富加宮さんも登場。
「
「富加宮さん! お久しぶりです」
「元気そうだな。各地の支部を回っていたそうだが」
「どの支部も安定してきたので、任せて戻ってきました。本部長にお届け物もありましたし」
「そうか」
二人と親しげに話す少女。会話の内容からして、どうやらアルカナだったようだ。
「そうだ! ハヤミ、この二人は新人の愛美と憐。
「初めまして。私、我妻愛美。よろしくね」
「相沢憐人。よろしく」
「えっ? ちょっと待ってよ。男のアルカナ? そんなの聞いてないわよ!?」
「正確には憐はアルカナではないんだけどね」
かいつまんで僕たちの説明が行われる。
「へぇ、またややこしい力を持ったのがやって来たこと。
以前頼子さんが言ってた魔術めいたことができる子って、この子のことだったんだ。さっきの手品も、少なくともシャボン玉の方は魔術だったのかもしれないな。
「小さいのに前線に出ているなんてすごいね」
僕がそういった瞬間。
「はぁ!?」
「あっ!」
「はぁ……」
少女、早瀬希望ちゃんはわかりやすく不機嫌な声を上げた。
勝賀瀬さんからは「それはまずい」っといった雰囲気が伝わり、富加宮さんからは深いため息が漏れる。
三人の様子が変だ。あれ? 僕何かまずいこと言った? 戸惑っていると、早瀬希望ちゃんが身体を震わせながらゆっくりと訊ねる。
「ねぇ、訊きたいことがあるんだけど。あんた年齢は?」
「え? 十五歳だけど。高校一年生……」
「あたしは十八! 学年にしたら高校三年生よ!」
「えぇっ! てっきり小学校中学年くらいかと……」
それを言い終わる前に、彼女のローキックが僕の左脛に炸裂し、激しい痛みが僕を襲った。
「痛っ!」
「なんで言い訳でまでバカにされなきゃなんないのよ! 蹴り入れるわよ!」
「もう蹴ってる! もう蹴り入れられました!」
「……そういえばそっちの、愛美って言ったかしら? あんたも自己紹介の時まるで子どもに話しかけるみたいなしゃべり方していたけど、まさか……」
「えぇっ!? いや、その……」
どうやら我妻さんも彼女を年下だと思っていたみたいだ。それも随分と下に。
「ムッカーッ! ちょっと莉央姉! 新人たちにいったいどういう教育してんのよ!」
「まあまあハヤミ、落ち着きなって。ちっこいんだから間違ってもしょうがないよ」
「あんたまでちっこい言うな!」
怒りが収まらない彼女は、蹴られた左脛を押さえて屈んでいる僕に詰め寄り、再び文句の嵐。
「いい!? あたしの方が歳も! 戦闘経験も! 何もかも先輩なんだからね! しっかりと敬いなさい!」
「はい! 先輩!」
「ったく。精々注意しなさい」
言いたいことを一通り吐き出したのかようやくクールダウン。しかしそれでもまだ完全に熱は引いていない様子で、何か粗相があればすぐまた沸騰しそうだ。気を付けなければ……
「な~んかこういうのも久しぶりだね。ハヤミが怒ってるの見ると和むよ」
「莉央姉、そもそも……」
ビーッ! ビーッ!
会話を遮るけたたましいブザー音。これはまたあいつらが! 今まで我関せずといった具合で大人しくしていた代神子原さんがデバイスに向かう。
「エリアSポイント39にてミスト反応! エリアSポイント39にてミスト反応!」
「丁度いいわ。あんたたち新人に、先輩の力ってのをみせてあげる。付いてきなさい」
「はい! 先輩!」
まだ脛が痛いけど、我慢して先輩の後を追うのであった。
「ありゃありゃ、ムキになっちゃって。愛美、私たちも行くよ」
「はい」
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