第10話


次に乗るのは、往復するだけのシンプルなジェットコースター。



「今度はあれにしよう。」



回転しないのであればどうだ?

ツチヤはそんな気持ちでそのジェットコースターを指差した。



横からみたらU字のレーンで座った状態を一切変えず前進と後退するだけのものだ。



「ぇえで。」



ミナトがそう返事すると、列に並んで順に席に座って行く。

発進の音が鳴るとジェットコースターはゆっくりとレーンを上がり始める。



キルキルと先程のジェットコースターと同じように何か巻いてるような音が響く。



テレビで見るジェットコースターの始まりってコレと同じだなぁ。

なんて思っているとツチヤに話しかけられた。



「ねぇねぇミーちゃん、アレってなんだろう?」


「アレって?」


ミナトがツチヤの視線の先の物を見ようとした時にジェットコースターは一気に後ろに下がった。

勿論、ツチヤの聞いた物は見えていない。



「見せてぇぇえ!」



ツチヤは、思わずそう叫んだ。


往復は一回ではない。

なんとか目を開いて見ようとしたが勢いのせいか目は開けず分かるのは隣で爆笑するツチヤの笑い声と風を切る音だけだ。



アトラクションが終わっても笑うのが止まらないツチヤ。



「ツッチー…結局、私に見せたいのは何だったん?」


「もう忘れたよ、そんなもん。」



ミナトはジト目でツチヤを見たが、ツチヤは声を振るわせながらそう言った。


どうせスキー場関連のものだろう。

ミナトはそう割り切るとツチヤの手を引いて次に向かった。



ご飯の前に選ばれたのは、初めのほうに上に上昇する乗り物だ。



「おねーさん方良かったら乗っていきませんか?」




係の人にそう言われて乗ったアトラクションだ。


横から見てコの字のようになっていて、水の入ったカップを握りアトラクションが終わるまで水を落とさないようにするものらしい。



「いいねぇ…どっちがツヨツヨか決めちゃいますか。」


「今のところミーちゃんが全敗みたいなものだけど後悔しないでね?」





そんなテンプレートのような掛け合いが終わった頃にアトラクションは進む。

アトラクションに乗る前に濡れたら困る物は預けてはあるが…二人は一滴も水を零さない謎の自信があった。



始まってみると速度はそんなに速くない。

水を零さないようになどと言っているのだ、目が開けれないほどの速度はないだろう。



勝ったな…。

そう思ったミナト達に悲劇が起きた。



カープに差し掛かった時に大きく席が揺れた後にまるで水が顔に掛かるように席が倒れる。



思いもよらない初見殺しを食らった二人は小さく悶えてしまい悶え終わる頃にはアトラクションが終わっていた。



「お疲れ様でした、忘れ物にお気をつけてください。

タオルは使い終わったらそちらにお願いします。」



係の人は笑顔でそう言いながら、タオルを渡した。

ミナトフィルターでは、係の人はしてやったりの愉悦な表現を見せている。




「…お昼にしよっか。」



ミナトがそう言うと、ツチヤは静かに頷いて後をついていく。

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