第11話 ライブ
二番手はグラビティ側から、アフタヌーン。イオアイ大学の学生バンドだった。
グラビティでもよくトッパーを務めているバンドだ。戸塚さんお気に入りの若手なんだと思う。
最近流行っているのだろうか、歌詞が英語のパンク調のポップな音楽だ。聞きやすいメロディは若い子に受け入れやすいのだろうか。イオアイ大学の学生だと思われるお客がたくさん来ていた。
しかしこの勝負のライブに大学生バンドを入れるとは、なんとも大胆な選択。
このあとのメンツを見たらトッパーを務めたワールドルージュも若手になるかもしれないが、イオアイ市として見たらワールドルージュは中堅といってもいいだろう。あえてガチの若手を選んだ意図はなんだろう。
私はそんなことを考えながらも、気楽にライブを見ていた。そう、箸休めのような。
きっとこのあとはメンツ的にも気が抜けないライブが続くと予想される。
そうか、それを考えてアフタヌーンにしたのか。私はそう思った。
そういえばトッパーかトリかも、先ほどのくじで決まったのだ。
ならばフルムーン側は、一瞬で誰をトッパーにするか判断したのだ。グラビティ側も、誰をトリにするかを軸に出演順を決めたと思われる。スピードと的確さ、どちらの判断力もすさまじい。
「若手をトッパーって、
アフタヌーンのライブが終わったあと、誰かが言っていた。
そう、私も最初は少しそう思った。けれども違う。
今日のライブはどちらも「勝ちに行く」そう思ったとき、確実なバンドを選ぶだろう。そうなると全六バンドが「そういうバンド」になり「ずっとそういう空気」になってしまう。
私には記憶がある。全バンド良い企画だと確かにテンションが上がるし最高の予感しかしないが……意外に疲れる。これが本音だった。
適度に休憩時間を設けるとか、緊張をどこかで途切れさせないと、けっこう、かなり疲れる。体力も、精神的にも。箸休めを入れたのは、さすが戸塚さんだと思う。
三番手はフルムーン側から、マグネット。野田さんのバンドだ。
マグネットは大御所、いやその手前と言ってもよいのだろうか。みんなが大好きなバンドだ。
ちょっとずるい、それが本音だった。マグネットは昔から変わらず叙情系の音楽を生み出している。演奏スキルもこの辺りではトップ3に入るのではないかと、誰かが言っていた。演奏スキルの見方を知らないので私には分からないのだけれど。
マグネットの転換中にはフロアが半分ほど観客で埋まっていた。みんなマグネットを見たいのだ。もう少しでライブが始まる。人が集まってきた。前のほうにいる私も少し押される。もう少し詰めよう。マグネットを見たい人がみんな見られるように。
メンバーが手を上げる、セッティング終了の合図。SEが鳴りやむ。始まる。一瞬の緊張感。静寂が訪れる。
空間と静寂を切り裂くようなギター音から始まる。私が好きな曲が一曲目だった。
しかも滅多にライブで演奏しない曲だった。嬉しい。その衝撃だけで魂が飛んでしまいそうだ。
マグネットのライブ中はずっと、少しの緊張感を
どこか窮屈なはずなのにそれを脱ぎ去ることはしないし、できない。
楽曲のレベルが高度なのはさながら、この空間はどのように作り上げるのだろう。
ステージに夢中なはずなのに、観客の顔を見てしまう。みんな同じ方向を見て同じ目をしていた。分かる、みんなの魂が浄化されている。
みんな棒立ちで見ていたかと思うと、次の曲ではシンガロングが始まる。
マグネットはライブの回数が少ない。貴重なライブだと思うのだろうか、それだけではない。
ライブが終わるとものすごい歓声と拍手が起こった。みんな緊張感が途切れたのだ。自由になった。アンコールも起こった。けれども今日はいつもと趣旨が違うライブなのでアンコールは行われなかった。落胆の声は一瞬だけだった。すぐに本日のマグネットのライブを称賛する声になった。
マグネットは今日もすごかった。耳がじん、としている。物理的なのか精神的なものか分からない。
ライブはもう終わったのだ。それをどこか認めたくないのか、撤収作業をするメンバーをしばらく見ていた。野田さんが機材を抱えて小走りで見えなくなる。ライブはもう、終わったんだ。
頭を冷やそうと思い、外に出た。しかし冷えそうもない、真夏日の気温はまだ残っている。風が吹いているのが救いだった。
みんな愉しみにしていたマグネットのライブが終わったせいか、解放感にあふれていた。そして笑顔だった。
尾を引いた真夏日の気温か、ライブと観客の熱気か、どちらか分からないものが漂っていた。
「マグネット今日もかっこいかったね」
「最高!」
みんなマグネットのライブを褒めたたえていた。
私も多分、気持ちは同じなんだろうけれども言葉にできなかった。なんでだろう。
言ってしまったら嘘っぽくなるというか、私の
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