26.私がお姉ちゃんだよ
とりあえず、私の部屋にカリネちゃんたちを招待しました。
否、招待させられました。
道中でカリネちゃんは私の部屋に行きたいと言うもんだから、案内した形だ。
「ルーナの部屋ってこんな感じなのか」
「うん」
いきなり呼び捨てだとっ……!? カリネちゃんはかなりのツワモノだな。
私は初対面の相手に対して尻込みしちゃうから。
まぁ従姉妹だから別に気にしないし、なんてことはないんだけど。
私も呼び捨てじゃないとダメ?
カリネちゃんは、私の部屋に入ってすぐベッドに抱っこしていたチムちゃんを置き、部屋の散策を始めた。
そう言えば、カリネちゃん片手でチムちゃん抱っこしてたよね?
もしかしなくても、すごい力持ち?
「あうぃ~あうっ」
従妹のチムちゃんが私のベッドではしゃぎ出した。
ふふふ~、かわいい。
会話はできないけど、超可愛い。超癒し。
私がチムちゃんに顔を綻ぼさせていると、カリネちゃんが話しかけてきた。
「ねぇ、こっそりお祭りに行かないか?」
「うん、行かない」
何を可愛い顔して悍しい提案をしているんだか。
私としては従妹のチムちゃんに会えて、もう満足しちゃっているんだよ。
もちろん、同年代の子にも初めて会ったから嬉しいよ。
それに私はお腹が空いた。
私はチムちゃんのぷにぷにな頬をつつく。
うぉっ、チムちゃんの頬っぺた柔らかい!
「じゃあ、何をするんだ? お父様たちを待っている間、剣の素振りでもするか?」
何言ってんだこの子?
「何もしないのはどう? それとも、雲を眺めるとか、横になって羊を数えるとか」
「それは、提案になっていないのでは」
まったく、剣の素振りを提案してきた子にだけは言われたくないな。
私は小さくため息を吐き、カリネちゃんに指を差す。
「我儘言うんじゃありません!」
「な、我儘なんか言ってないじゃないか!」
「いやだ、私は今日は空腹で動けない設定なんだから!」
「設定とはどう言うことだ!」
「だいたい、カ、カリネだって”こっそり”とか言ってたじゃん! 私は、何もしない。カリネはこっそり屋敷を出て祭りに行く。悪いのはどっちの方かしらねっ」
「なっ……。確かに私の提案も悪かったかもしれないが」
流れでさりげなく呼び捨てにしてみたけど、なんかむず痒い。
カリネが少したじろいでいる。
うんうん、外に出ようとか言ったカリネが全面的に悪いんだよ。
だいたい、チムちゃんはどうする気なんだか。やれやれ。
「要するにだよ、そう言うことなんだよ」
私はコクコクと頷きながら、腕を組み説得した、が。
「どう言うことなのだ!」
カリネの大きな声が返ってきた。
何をそんなに怒っているのかな。
カリカリしてるからカリネなのか?
ぷっ。
『ネーネ?』
……。
…………。
………………っ!?
その天使のような甘い声はベッドの上から聞こえてきた。
まさか、チムちゃんが、チムちゃんが、喋ったの!?
「カリネ、今私のことネーネって」
私は興奮した勢いでカリネの方へ振り返った。
「いや、違うだろ……。どう考えても私にだろう」
「えっ!?」
「何を驚いているんだ」
なんか呆れている様子で首を振っている。
だって、今チムちゃんは私を見ながらネーネって言ったんだよ?
カリネは堂々とした歩みで進み、チムちゃんを抱き抱えた。
「私がネーネだぞ~」
カリネの顔が少し染まる。
嬉しそうだ。対して、チムちゃんはなぜか今にも泣き出しそう。
きっと、ネーネは私なんだろうね。だから、不機嫌になっちゃったのよね。
これはお約束というやつだ。
私は知っているよ、うん!
「カリネ、私にも妹抱っこさせて?」
「……私の妹だからな?」
「わかってるってー」
渋々と言った様子でチムちゃんを差し出すカリネ。
私は両手でチムちゃんを受け取り、あやす。
「私がお姉ちゃんですよ~」
「わああああああああああぁぁぁぁぁぁん!」
私に抱っこされた直後、チムちゃんは泣き出しました。
その後、ロニーが慌てて私の部屋にやってきました。
※
今、私たちの目の前でチムちゃんは授乳中だ。
どうやらチムちゃんはお腹が空いていたみたい。
私もお腹空いているから、泣いたらご飯食べられるだろうか。
「ルーナちゃんも、カリネもありがとね」
お父さんの妹、ハンブルブ伯爵夫人のサリネさんが私たちに語りかけた。
「ごめんね、驚いたでしょ?」
「いや……」
嘘です。何かしちゃったかと、冷や冷やしました。
ロニーが部屋に入ってきた時、私がチムちゃんを抱っこしていたから、何かあったらどうしようかと思ってました。
「まだ乳離してなくてね。もうそろそろいい時期なんだけどね」
チムちゃんは、サリネさんの服の中で食事中だ。
なんか、お父さんもお母さんも”ルーナにもこんな時期があったなぁ”的な話をしていて、ほっこりしている。
そんな話を聞くカリネたちのお父さん、ハンブルブ伯爵もほっこりしている。
「カリネ?」
「ん?」
「私もお腹空いたから、ご飯食べに行こ」
「……そ、そうだな」
ほんの少しだけ居ずらさを感じていた私とカリネは静かに部屋を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます