22.従妹の存在

 私は食事の後、お父さんの書斎に呼ばれていた。

 なんとなくだけど、呼ばれた理由には察しがつく。


「ルーナ、食事の時はすまなかったな。呼んだのは他でもない、ルーナが妹が欲しいっていう件についてだ」

「うん」


 まぁ、そうでしょうね。

 話したくなさそうだし、私的には無理に聞こうとも思っていないんだけどな。

 ついでにだけど、ペットはとっさになって言ってみただけだから、どうしても欲しいと言うわけじゃないよ。

 だから、お父さんがダメって言うなら素直に諦めるよ。

 私は良い子だから、将来は家に寄生する予定の私は良い子だから。


「お母さん、レイナが赤ちゃんを産めない理由はわかるか?」

「……わからないけど、なんとなくは察しているよ」

「ルーナは頭がいいんだな。レイナはルーナを産む前に一度流産をしていて……、流産も分かるか?」

「うん」

「そうか。まぁ、なんだ。本当ならルーナにはもう一人の兄か姉がいたということになる。しかし、流産してしまった」


 その後もかなりしんみりした雰囲気の中、お父さんの話は続いた。

 その話をまとめると、流産後に妊娠した私はかなり大変な出産だったみたい。

 よくわからないけど、出産の前にも血がいっぱい出ちゃったりとか、とにかく大変だったようだ。

 それで、なんとか無事に御体満足で私は生まれた。けど、その後お医者さんに言われたらしい。次の妊娠出産でお母さんの命は保証できない、と。

 それならそうと言って欲しかった、けど言えるわけがないよね。

 自分の子供に余計な心配されたくないだろうし、私が逆の立場でも多分言わないだろう。


「ありがと、教えてくれて」

「いや、かまわんよ」


 はぁ、そんなこととは露知らずに私はピュアだなとか思ってたのか。


「ごめんなさい」


 私の口からそんな言葉が漏れた。

 心の底から湧き上がった、そんな言葉が。


「いや、こっちもすまなかったと思っている。ルーナが謝ることじゃないだろ。それに、ここに呼んだのは他にも伝えたいことがあるからだ」

「他に?」

「あぁ。新たな家族としての妹は無理だが、妹のような存在ならルーナにもいるんだよ。同じ伯爵位のルーナにとっては従妹にあたる子だ」

「……っ!?」


 俯く私の顔が上がった。


「ルーナは収穫祭には乗り気じゃないみたいだったし、どうするか悩んでいたんだがな。その子を収穫祭に呼んでみるか?」

「……いいの?」

「子供が遠慮するんじゃない」

「ありがとう、お父さん!」


 私はお父さんに飛びつき、抱きついた。

 私の両親は本当に優しい。ニート……自宅警備員志望の私なんかのために、ここまで動いてくれて、要望だってできる限り叶えてくれて、本当に感謝しかない。

 大好きだよ。


「ルーナが喜んでくれて、私も嬉しいよ」


 お父さんの声音は嬉々としていた。


 自分の部屋に戻ってきた私はルンルンだった。

 もちろん、少なからず罪悪感のようなものはあったが、それは済んだ話と、そうさせて下さい。

 私には従妹がいたらしいのだ。これを喜ばずして、どうするか!

 どんな子かな。妄想が膨らむよぉ。

 読んだ小説通りの清純派の甘々な妹属性かな。

 それとも、こっちの世界の本にはまずないツンとデレのある妹属性かな。

 向こうは私のこと知っているのかな?

 貴族の従妹ってことは、お姉様呼び? それともお姉ちゃん? 名前?

 私としては”お姉ちゃん”推奨だけど。

 どっちにしても、早く会いたいな。

 収穫祭は未だに本気で参加したくないけど、従妹に会えると思えば仮病はしない方向でいこうかな。

 ……あれ?

 従妹ちゃんが収穫祭の後にウチに来てくれれば、もしくはウチに来た後に収穫祭に行きたかったら行ってもらえば、私が収穫祭に行く必要がなくなるのでは?

 あわよくば、私の代行として従妹ちゃんに出席してもらう……のは悪いか。

 さすがにそこまでの事はしないよ、うん。

 でも、もしかしたら?

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