第24話 お嬢様と混浴?

「女子3人でお楽しみくださいまし」


 僕は女性陣から逃げようとするが。


「あらあら。私も女子なの? もう、30をすぎたと言うのに」


 おばあさんが僕の肩を掴むと、すさまじいボケをかましてきた。どう見ても、70歳は超えてるんですけど。

 おばあさんの場合は病気の影響もあり、本気で言っている。


「おばあさん、まだまだ、青春はこれからさ」

「なら、九郎三郎さん、私とお風呂デートしましょう」


 おばあさんは僕の手を握って、歩き出す。

 僕をお風呂に連れていくつもりらしい。


 ところで、九郎なのか、三郎なのか?


「ちょっ、おばあさん⁉」


 力任せに抵抗はできないものの、できれば避けたいルートだ。


「おばあさま、心春さんも迷惑しておりますのよ」


 聖麗奈さんがおばあさんを注意する。

 先ほどは僕とおばあさんの混浴を認めたようだった聖麗奈さん。僕の態度を見て意見を変えたのだろう。


 1ヶ月半ほど聖麗奈さんと接してきて、おばあさんに怒ったのは初めてだ。

 雰囲気的に、子どものダダに困っているお母さんっぽい。相手は子どもじゃなくて、祖母だけれど。


「まあまあ、聖麗奈さん。そこまで、おばあさんが言うなら、僕は構わないよ」


 聖麗奈さんに負担をかけたくなくて、同意してしまった。


(どうしよう?)


 妹以外の女性との入浴は、小学校に入学してからない。

 しかも、相手は60歳も上のおばあさん。恥ずかしいだけでメリットがまったくない。


「で、ですが、心春さん」

「ただし、条件がある」

「条件ですか?」

「タオルで体を隠してほしい。もちろん、僕も隠す」

「わかりましたわ。では、わたくしもタオルを使います」

「えっ?」


 聖麗奈さんから予想外の答えが返ってきた。


「聖麗奈さんも入るの?」

「ええ。わたくしがおばあさまの世話はしますわ。そこまで、心春さんに迷惑をかけられませんから」


(メリットあったじゃないですか?)


 引き受けてよかった。

 妹の視線を感じて、妹を見る。ニヤけていた。『お兄ちゃん、役得だね~』と言いたげだ。


 先におばあさんと聖麗奈さんが風呂場に行き、後から僕たちがお邪魔することになった。

 妹と麦茶を飲んで、まったりする。


「なあ、芽留。僕、帰っていい?」

「なに言ってるのかな~。朝比奈先輩のバスタオルを見られるチャンスなんだよ~」

「それはそうなんだけど」

「お兄ちゃん、性欲ないの~?」

「……」

「だって、全裸のメルの体を洗っていても、おっぱいを揉んでこないし~」

「そりゃ、妹だし。介助目的なんだ。エロいことするのはありえないだろ」

「百歩譲るとして~朝比奈先輩のデレになびかないなんて、おじいちゃん未満の性欲だよ~」

「僕だって普通に性欲はあるんだ」


 聖麗奈乳に何度もドキリとしている。表に出さないよう努力しているだけで。


「けど、忙しいから我慢してるの~?」

「ああ」

「お兄ちゃん、メルを言い訳にするのやめてくれるかな」


 珍しく語尾が伸びていない。声も低いし、怒っている。


「何度も言ってるけど~お兄ちゃんは自分の気持ちに素直になっていいんだよ~」

「そうは言ってもなぁ」


 頭を抱えていたら。


「心春さん、おばあさまを洗いましたので、お越しくださいまし」


 聖麗奈さんが呼んだ。浴室のドアを開けているのか、はっきりと聞こえた。


「じゃあ、僕たちも行こうか?」

「朝比奈先輩の裸を楽しもうね~」


 脱衣所に行く。カゴに白いレースの下着が置かれていた。


「朝比奈先輩、清楚でゴージャスだね~」


 妹はニコニコして、僕に意味ありげな目を向けてくる。


(煽ってるな)


 僕は無視して、妹の服を脱がせる。妹はピンクのブラとパンツだった。毎日の仕事なので、特に感想はない。


 僕は妹にバスタオルを被せると、自分も裸に。タオルを腰に巻いて、妹を抱っこする。


 浴室に突入。

 一般的な家庭の浴室だった。4人だと、さすがに狭い。お湯を張った浴槽に聖麗奈さんとおばあさんがいる。おかげで、刺激的な光景が隠せていた。

 これなら、どうにかなる感じ?

 

 洗い場からは浴槽が邪魔になって、聖麗奈さんの肢体が隠されている。

 僕はまず芽留の体にシャワーをかける。外は暑いので、ぬるま湯だ。


「お兄ちゃん、メルを洗って~」


 ボディソープを自分の手に塗り、妹の背中を洗っていく。


「心春さん、いつも、今のようにされているんですか?」

「……お恥ずかしながら」

「いいえ。妹さん想いの良いお兄さまですこと」


 引かないでくれて助かった。


「お兄ちゃん、背中は大丈夫だから、前もお・ね・が・い」

「前はさすがにあかんやろ」

「えぇっ、いつも、おっぱいまで洗ってくれてるじゃん~」

「なっ!」


 さすがに、聖麗奈さんも目を丸くしている。


「聖麗奈さん、ウソですから。前は自分で洗わせてますんで」

「で、ですわよね」


 聖麗奈さん、あっさりと納得してくれた。


「お兄ちゃん、慌てて朝比奈先輩に言い訳してかわいいんだから~」


 妹の策略だったらしい。


 なにはともあれ、妹の世話を無事に終える。

 芽留を鏡の前に座らせたまま、自分の体をゴシゴシしていると。


「お背中を流しますわ」


 水の音がして、思わず目を向ける。

 聖麗奈さんが立ち上がっていた。

 バスタオル姿のお嬢様を拝む形になるわけで。


(エロかわ綺麗!)


 バスタオルを持ち上げる膨らみはツンと上を向いていて。

 バスタオルも体も濡れていて、滴が美しい肌を艶やかに飾っていて。

 丈が足りないのか、むっちりした太ももはミニスカート以上に露出していて。


(むしろ、全裸よりエロくない?)


 全裸はまずいと思って、バスタオルにしたんだが。


 聖麗奈さんは僕の返事も聞かずに、浴槽を出る。

 僕の背中側に膝立ちになった。


 洗い場に3人。正直、かなり窮屈だった。芽留の足を伸ばしているのもあり、蜜である。


「こ、心春、前を向いてくださいまし」

「う、うん」


 指示に従った。


「朝比奈先輩、ボディソープどうぞ~」


 妹がボディソープを取ると、後ろにいる聖麗奈さんの方へ手を伸ばす。


「芽留さん、ありがとうございますわ」


 聖麗奈さんが受け取ろうとして。


 ――ふにゅん!


 僕の肩になんか乗った。めちゃくちゃ柔らかい。


「心春さん、申し訳ありません。体重をかけてしまいました」

「えっ、ああ。う、うん」


 聖麗奈さんの発言で、なにが起きたか理解した。どうりで、至福しかないわけだ。

 今まで聖麗奈乳にご挨拶することはあったけど、服とブラジャーを通しての感触だった。


(バスタオルはやばいやろ)


 腰に巻いたタオルの中は、大変な事態になっていた。

 聖麗奈さんは僕の背中を洗い始めた。彼女自身の手のひらを使って。


 さらに。


「心春さん、少し狭いのですが」

「芽留、ちょっ前に行けない?」

「うーん、無理かな~。にへへ」


 笑っているのは気になるが、スペースはなさそう。


「ごめん、動けそうにない」

「じゃあ、こうしますわ」


 ――むにゅん! むにゅん!


 今度は背中が幸せになった。というか、聖麗奈さん特製スポンジは移動している。円を描いているらしい。


「心春さん、どうですか? 気持ち良いですか?」

「はい、幸せすぎて、天国に行きそうです」

「さすが。お母さま伝授の必殺技ですわ」

「必殺技?」

「ええ」


 聖麗奈さんの吐息が首筋を撫でる。柔肌との接触もあって、背筋がゾクリとする。


「こうすると、殿方が喜ぶと教わりましたの」


 聖麗奈さんのお母さんって、小学生のときに亡くなったんじゃ。


(子どもになんてことを教えてるんですかねえ)


「『立派なお嬢様は、好きな殿方を振り向かせられるもの。そのためには、女の武器を利用するのも有効なのよ』と、お母さまはおっしゃっていました」

「そ、そうなんだ」


 お嬢様とはいったい?

 というか……。


 露骨に好意をぶつけられているのに。

 以前とちがって、困惑はあまりない。

 むしろ、純粋にうれしい。


 妹に言われて、考えたせいか。

 聖麗奈乳の迫力が思考力を奪ったか。

 理由はわからない。


「お兄ちゃん、朝比奈先輩の必殺技はどう?」

「たしかに、必殺技だな」

「素直になって、メルもうれしいよ~」


 のぼせそうなんですけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る