友だち
「マリアちゃんは本当に物知りだね~」
ほめられると急に恥ずかしくなる。
「いえ……リン先生に比べればわたしなんて大した事ないですわ」
「こらこら、若いのに謙遜とかしなーい。大学院で研究までしてたリンを比べてどうするのよー」
確かにそうなのだが……。リン先生がわたしくらいの年齢の時はどうだったのだろう。
「マヤ先生はリン先生の学生時代も知ってらっしゃるんですよね?リン先生が学生のとき、わたしと同じくらいの年齢の頃はどんな感じだったのですか?」
「リンの子ども時代かぁ……学校が一緒だったのは大学からだからなあ。リンがマリアちゃんくらいの頃のことは詳しくは知らないんだよね。まあやっぱり優秀だったんじゃないかなぁ。大学でもペーパーテストは常に学年首席だったみたいだし。しかもアイツ、確か大学飛び級で入ってきてたような……?どうだったかな?」
やはりリン先生は特別優秀な人なんだ。尖塔群の外の人たち、とくに魔法国の首都の人たちがみんなリン先生レベルの人たちばかりだったらどうしようかと思った。
「リン先生が少し羨ましいです。勉強もできてマヤ先生みたいな友達もいるなんて。楽しそうです」
「リンに友達……ねー」
マヤ先生は苦笑いをした。
「?」
「少なくとも大学時代のリンには友達なんてほとんどいなかったよ。わたしとリンの関係もあんまり一般的じやわないし」
「そうなのですか?」
「あいつかなりスレてて目つきも悪かったしさ。それにマッドサイエンティストの気があるから」
「マッド……なんです?」
「マッドサイエンティスト。リンは昔から自分の研究のためには手段を選ばないんだよ。知識マニアだし、知識のためならとことん自己中なんだよねー。詳しくは教えてくれないけど、何かリンにとっては重要な研究があるみたい。リンの実験に巻き込まれて嫌な思いした人も結構いたって聞いたよ。そんな自分勝手なリンが家庭教師をしてるなんて聞いた時は驚いたわー」
わたしの知っているリン先生は優しくて優秀な先生だ。決してそういう自己中心的な人じゃない。
「そうだったのですね。わたしの知っているリン先生は違います。たまに意地悪なことはありますが、いつもわたしのことを気にかけてくださいます」
マヤ先生はわたしの反論に気を悪くした素振りも見せずに続ける。
「まあ、今は確かに面倒見はいいみたいね?少なくともリンがマリアちゃんを大事にしてるのはわかるよ」
マヤ先生はわたしを見ながら「むしろ愛弟子ってかんじかな~」と言って意地悪く笑った。
「リンが帰ってきたら今度は注意深く観察してみなよ。普段はおっとりしてると見せて意外と食わせもんだからさ~。身近にあるちょっとした謎を探求するのも悪くないかもよ?」
確かにリン先生は不可解な言動をよくするけれど、身近すぎてそういうものなのかと思っていた。でも魔法が使えるなんて知らなかったし。日々のちょっとした楽しみが増えるのはなかなかよいことかもしれない。しかし……。
「たしかに面白そうです。ただ……リン先生相手だとかなり骨が折れそうです」
「はは……それはそうかもね……アイツ頭も勘もいいからなぁ」
マヤ先生も苦笑いした。昔何かあったのだろうか?いやむしろリン先生とマヤ先生、アクの強い同士なにかない方がおかしい気もした。
「おっ!あれは何かな?マリアちゃん、さあさあ続き続き!」
その後も初めて見るもののオンパレードだった。いや、図鑑ではどれも見たことはある。しかし実際に目で見るのとは大違いだ。動物がどんな動きでどんな音を立て行動し、どんな鳴き声で鳴くのか。植物がどんな風に生えていてどんな香りがするのか。長い間空想の中でしかなかったものの正解がそこかしこに溢れている。リン先生の話も気になってはいたけど、新しいものを目にしているうちに意識の隅にいってしまった。ただ、マヤ先生がボソッとつぶやいた「そういえばリンの研究は完成したのかしら?」という言葉が頭に残った。
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