第28話 盲目少女と懐かしのエンターテインメント
前回のあらすじ:飛べないロリコンはただのロリコン、というかただの犯罪者予備軍
☆
──ふわンガ上空──
雲一つない夜空にたたずむ巨大な淡紅色の
「いやあ、すごい飛びっぷりでしたね、DDRさん」
「尻ぬぐいさせてしまいましたね」
飛行魔法を所持していなかったDDRは、自分が投げた武器に自分で乗るという荒業によって、遥か上空にいるふわンガのもとへ飛んでくることに成功した。当たり前だが、そんな弾丸の如き方法で飛んだものだからブレーキなんてあるはずがなく、そのまま一直線に夜空の星になるところをリヴァイアちゃんが体を張ってみごとに受け止めたのだ。
そして、リヴァイアちゃんはDDRを抱きかかえたまま、ゆっくりとふわンガに着陸した。
「すみまねんね、何から何までおんぶにだっこで」
「おんぶというか、お姫様抱っこだけどね。いやでもいいもの見せてもらいましたよ」
「ネタのつもりでやってみたんですが、本当にできるとは思わなかった」
「あとで僕も試してみよう」
二人はロリコンであると同時に、ゲーマーとしての気質も持っている。ゲームに於いて、製作者の意図に反した攻略方法を見つけることで、快感を味わう人種なのだ。そして、そういった「もしかしてこういうことやれるんじゃないか?」と思索したものが本当にやれてしまうゲームを、
「ふわンガの体表、ぶよぶよとしてて気持ち悪いなあ」
リヴァイアちゃんが足踏みしながらそう言う。
辺りには、針葉樹のように高い触手が生え並んでいる。その触手の先端からは、枝状に紫電が放出されている。二人が飛んでいた間は、紫電の攻撃が二人を狙っていた。
「降りたら攻撃も来なくなったなあ」
「ここに向けて攻撃すると、こいつ自身もダメージ受けそうですし」
「とりあえず、そこらへんを適当に殴ってみますか」
そう言いながら、DDRは目の前にある触手に狙いを定め、タウロスを装備した腕で殴り掛かる。ボゴッと鈍い音が響き渡り、攻撃を受けた触手は一瞬身体を硬直させるが、すぐにまたもとの形に戻った。
「うーん、手ごたえは無し、と」
「じゃあ魔法はどうだろうか。ちょっと離れていて」
そう言うと、リヴァイアちゃんはステッキを天へと掲げる。
「サンダーダンサー!」
傾いた「Z」の形をした雷が、波状に降り注ぐ。名前の通り、雷がステップを踏むようにリズムよく周囲に落ちる。魔法が当たるたびに、触手や体表は先ほどと同じく硬直するが、やはりダメージが通っている様子はない。
「魔法も駄目か」
やれやれとため息をつく二人。他にやれることは無いかと歩き出す。
数十秒歩いたところで、あうものを発見した二人は足を止めた。
「まあ分かっていたけど、これが弱点ですよね」
「ですね」
二人の眼下にあったのは、地上からもよく見えたあの大きな丸い目。近くで見ると、八畳間くらいの大きさだ。近づいてきたことに反応したのか、瞳がグルンと二人を見つめる。
「俺がやりますよ。たぶんこれなら一撃です」
「頼みます。派手なのぶちかましてください」
「応!」
勢いよく答えると同時に、DDRの装備したタウロスが光り輝いく。
構えているDDRに、リヴァイアちゃんが檄を飛ばす。
「あれだけ気持ち悪かった大量の目も、こうして近づきゃただの8チャンネル!その全然イケてないデザインを、アルタ前に叩き落としてやれ!」
「よし!準備できました、リヴァイアちゃんさん!」
「それじゃあDDRさん、そいつをやっつけてくれるかなあ?」
「いいともー--!!!」
全力で振り下ろした拳が眼球に叩き込まれる。大きな衝撃が周囲を走り、リヴァイアちゃんは思わずのけ反りそうになる。どこからともなくうめき声のような音が聞こえ、ふわンガはその全身を振動させた。
「はは、大ダメージみたいだね」
鉄槌が下された目を見ると、おおきな✕マークが浮かんでいる。それに加え、若干涙目だ。
「いやーDDRさん、めちゃめちゃイケてましたね」
「いやいや、俺だけじゃないですよ。イケてたのはみなさんのおかげでしたよ」
「負けてられないなあ。次に活躍するのは僕ナンデスからね!」
「それ局が間違ってません?」
「リバイアバンバンバン」
「間違ってなかった!ちょっとそれ捻りすぎだよですよ」
「そうですか。じゃあ、整理しよ!整理しよ!」
「…どんだけいいとも好きなんですか」
「…つい懐かしくなっちゃって」
「まあ俺も乗っちゃいましたけども。とにかく、攻略方法はこれで分かりましたね」
剝き出しの目を破壊すればいいという単純明快なふわンガの攻略方法。恐らく、残りの目を全て攻撃することで、このモンスターを倒せるのだろうと二人は考えた。敵からの攻撃も来ないとなると、あとは順番に破壊していくだけの、言ってしまえばヌルゲーだ。問題点があるといえば、単純作業が故の退屈さぐらいだろう。
「それじゃあ僕は空飛べるんで、下の方から攻めていきます。DDRさんは上の方をお願いしますね」
「わかりました。お互いに頑張りましょう」
互いに検討を祈り合い、それぞれ自分の仕事に取り掛かろうとする。リヴァイアちゃんが飛行魔法で飛んでいくを見送り、DDRも次の目を探そうと駆け出した。
移動を始めて数秒後、DDRはふとあることが気になり始めた。
「リヴァイアちゃんさん、あれだけ8チャンネルやいいともが好きなのに僕ナンデスと言ったってことは、ちゃんとバ〇キングは観てなかったんだな…」
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