第23話 盲目少女と初クエスト
前回のあらすじ:負けるなどとはみじんも思っていないDDR
「DDRさんとは職種が一緒なんだ。その縁があって話し込んでいる内に一緒に遊ぼうかって流れになったって訳」
なぜDDRと一緒に居るのかという問いに、リヴァイアちゃんは懇切丁寧に答えてくれた。
「いや~、ちゃんさんに本当にお世話になりっぱなしで」
「ゲームの腕前はDDRさんの方が断然上ですよ。それとちゃんさんはやめてくださいって言ってるじゃないですか~」
「ハハッ、すいません。それじゃあいつも通りリヴァイアさんで」
だから何なんだよその社交性に溢れる会話は。君たち本性隠しすぎじゃない?
「よかったらナナオ君も一緒に来るかい?」
「誘いは嬉しいんだけど、カルナとの先約があるんだ」
「それは残念」
カルナも一緒に、とは聞いてこなかった。DDRが居たらカルナは100%着いてこないとリヴァイアちゃんも分かってるのだろう。もしかしたら、カルナからすればリヴァイアちゃんも一緒に居たくない人に部類されるかもしれない。まるで普通の人の如くロリコンを嫌ってるからなあ。…なぜ私はセーフなんだろうか?
さて、リヴァイアちゃんには伝えなければならないことがある。魔女から貰った『星に手を伸ばせ』というヒントだ。だけど今はDDRも居るからなあ。流石に聞かれるのは不味いよな…。あとでスマホで連絡入れるか?
そう考えていたところ、丁度いいタイミングでカルナからの連絡が来る。
『近くのマンションの前まで来てくれませんか?』
スマホのトークアプリ上に表示された一文。私のスマホは本来の役目を失ったとはいえ、このようにフレンドとの連絡手段として使うことができる。
しかしなぜマンションの前に?ここ(待ち合わせ場所)にいるロリコンの匂いを嗅ぎ取ったか?
「早かったですね、ナナオさん」
指定された到着すると、そこには今朝と変わらない白衣姿のカルナ。そしてその傍らに、カルナのスカートの裾を掴む10歳前ぐらいのあどけない少女が。寝間着にサンダルと、まるで夜中にこっそり家を抜け出して来たかの様な格好だ。
NPCか?
「あの、カルナ「クソロリコンが」
「まだ何も言ってないよ!?」
確かに、可愛らしいなあとかでもちょっと幼いかなあとか小学校高学年になってから出直しておいでとか思っていたけども!口に出さなきゃセーフでしょ。
「言っておくけど、流石に2次元に欲情したりはしないよ?」
「ハッ、どうだか」
安定の信用度0だな…
私達のやり取りをよそに、少女が少し遠慮がちにカルナに尋ねる。
「このお兄ちゃんがさっき言ってた…えっと、ロリコンさん?」
おっと、早速変な覚えられ方しちゃったよ、早く誤解を解かないと。いくらNPC、AIだからといって嫌われるのは嫌だよ私。お兄ちゃんの中身は確かにロリコンだけど、外見はしっかりまともな人を装っているからね。だから安心していいんだよ。
…………………お兄ちゃん?今、お兄ちゃんって言ったよな…。えっ、このゲーム声で性別判断されるの?ウロちゃんを除けばこの娘が初NPCだったから今まで気づかなかったけど、ロリコン達の声にゲームキャラがどういう反応するかなんて全く考えてなかった…。
「この人、男の人の声してるけど実はお姉ちゃんなんだよ。紛らわしくてごめんね」
「あっ、そうなんだ。ごめんなさい、お兄ちゃん」
よく見ると、少女はずっと瞼を閉じたままだ。開けてどこかを視ようとする気配はない。もしかして…
「もしかして君、目が…」
「うん!見えてないんだ。青空アイと言います。よろしくおねがいします」
ペコリとお辞儀。
アイと名乗った少女は悲哀さを感じさせない笑顔でそう答えた。
なるほど、私を男と間違えたのは、目が見えず私が女子中学生の姿かたちをしているのが分からなかったからか。
とりあえず、声が男なら問答無用で男扱いされるって訳では無さそうだ。それなら良かった…………いや良くねえよ。なに人の不幸を喜んでんだよ私はよ。倫理観をしっかりもて、倫理観を。
「して、その少女は一体?」
「ほら、お願いがあるんでしょ?ちゃんと自分からお兄ちゃんに言いなさい」
カルナがアイに促す。
なんでこの短時間でそんな保護者ポジションに登り詰めているの?
「お兄ちゃん、お願い!」
アイの勢い余る声とともに、目の前にメッセージウィンドウが表示される。
『クエスト:星のみえる
「アイを星見台の丘まで連れて行ってください!」
さあ、私の初クエストだ。
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