第12話 問答の果てに

 前回のあらすじ:状態異常がちゃんと強いゲームは良作(それはそれとして自分が状態異常になったらイライラする)


「ナナオって本当にロリコンなの?」


「は?」


 何を言ってるんだ会長こいつは?私は紛れもなくロリコンだ。ロリが好きだ、女児が好きだ、小さい女の子が大好きだ。そもそもピュアミーをプレイしている男なんてほぼロリコンしかいないだろう。てか何故今そんな質問をするんだ?私のことをロリコンで無いと思った理由はなんだ?どういう考えなのかわからないぞ…


「何を疑っているのかわからないけど、私はちゃんとロリコンだよ。悪いか?」


「良いか悪いかで言うとロリコンは悪でしょ」


「正論はやめて」


 ロリコンが悪人なのはそうなんだけど、今はその話じゃないだろう。


「話を戻そうか。俺だけの特殊能力なのか皆もそうなのかわからないけど、俺は対人戦で全力で戦うとその相手の人となりとか性格とかがなんとなくわかってしまうんだ」


 手持ち無沙汰になったのか、会長が話を続けながら私の周りをぐるぐると歩き回りめる。こっちは麻痺のせいで直立不動状態なんだから煽ってるようにしか見えないぞ。しかも首も固定されてるから後ろに回られるの凄い嫌なんだが。

 そんな公転運動中の会長だけど、拳を交わせば相手の心がわかるとか何を不良漫画臭いことを言ってんだろうか。んなわけねえだろうがと言ってやりたい。そもそも私はロリコンなんだから心の内読めてないじゃん。


「それでナナオのことも少しわかったんだけど…」


 ニッと口角を上げる会長。


「ナナオって結構若いでしょ。たぶん高校生ぐらいだよね?」


「ばっっ!?なっっ!!?」


 なぜばれたし!?なぜわかったし!?


「そんなに動揺しなくても…。言動や行動の節々に若さゆえの勢いが見えたからすぐ分かったよ」


「こ、高校生だからって別になんの問題もねえだろ!」


 そ、そうだよ、何も悪いことは無いはずだ。てか何を動揺してるんだ私は、何を恥ずかしがってるんだ私は。そもそも今まで自分が高校生だっていうことを隠していたつもりなんてないし、恥ずかしいことだと思ったこともない。後ろめたく思う必要なんて何一つないじゃないか!

 それなのになんでこんなに後ろ髪引かれてんだろうか…


「そうだね、若いってのはむしろ良いことだ。だから聞きたい。なんでロリコンになりたがってるの?」


 ロリコンになりたがってるってどんな人間だよ。


「私は女児が好きだ、女児好きはロリコン、よって私はロリコン。何もおかしくない三段論法だろ」


「高校生からしたら小学生なんて10歳も離れてないし中学生なんかはたかだか三つした程度だ。そうなるとただの年下が好みってだけだし、わざわざロリコンを名乗る必要ないんじゃないの?」


 …なぜ会長の言葉にこんなに苛立っているんだろうか。別にはいはいそーですねと聞き流せばいいいものを、なぜそこまで反論したくなるのだろうか。


「なんで私の言うことをすべて否定するんだよ」


「いやだってロリコンになっても碌なことないよ。逮捕された人も何人もいるし。ナナオはまだ戻れるから、ナナオのためを思って言ってるんだ。もっと同年代の女の子と恋愛したほうがいいよ。いないの?同級生になかのいい娘とか?なんでそうまでロリコンでいたいと思うんだい?…………いや、この言い方は少し違うか…」



 ははーん、なんで会長こいつの言葉にイライラしちゃうのか分かってしまったぞ★



「なんで…なんでロリコンに憧れてんの?」



 会長の言うこと、全部図星なんだよな



「憧れてねえよ!俺は根っからロリコンだ!」


「ナナオ!ロールプレイ忘れてるよ」


「憧れてねえよ!私は根っからロリコンだ!」


 危ねえ、教えてくれた会長に取り敢えずは感謝。


「ごめん、まさかそこまでぶっ刺さるとは思ってなかったよ」


 本気で申し訳なさそうな顔をされるのもまた腹立つな。

 そうだよ、ロリコンに憧れてるんだよ。明け透けに自分の好きなものを言えるその姿に憧れたんだよ。あまり明るくない高校生活を送ってる私には、それは眩しすぎたんだ。


「こっちこそいきなり取り乱して悪かった」


 もう決心が着いた、自分の中で答えが出た。私はロリコンとしても人としてもゲームプレイヤーとしてもまだまだ未熟だったし、会長の言ってることはすべて正しい。


「だけどなあ…声を大にして言おう!この女児が好きだという気持ちは本物だ!しっかりと私の魂に刻まれているんだ!」


「自分の性癖はそう口にしたり魂に刻んだりするものじゃないよ。性癖とはさがくせ、読んで字のごとく生まれ持った癖だ。何もしなくても全身から滲み出してくるものなんだ。それを理解しないといつまで経ってもファッションロリコンのままだよ」


「ファッションロリコンってなんだよ」


 さっき私のために言ってる的なこと言ってたけど、絶対ただ単に人を煽るのが好きなだけだろ。

 まあいいや、すべて認めよう。私の負けだ。


「完敗だ。会長、お前の勝ちだよ」


 体が痺れて動けないので心の中で両手を上げる。

 作戦も看破され戦闘でも圧倒され、その上心の内まで見透かされた。確かに会長の言うことはすべて正しい。


「さあ、とどめを刺してくれ」


「わかったよ」


 コクリと頷き会長がそっと近寄ってくる。

 あーあ、会長に勝ちたかったなあ。論破したかったなあ。その二つはもう叶わぬ夢だ。






















 でも復讐することはできる。



 目の前まで近づいた会長をガッチリとホールする。


「なっ!?なんで動ける!?」


 ははっ、青天の霹靂ってくらい驚いた顔してやがる!強敵相手に優位に立つってのは思っていた以上に気分が良いな。


「なぜか左腕だけ最初から動けたんだ。お前を誘い込むため黙っていたけどな!たぶん指輪が外れる仕様と一緒で、斬られた部分は存在しない判定になっていて麻痺も左腕だけ掛からなかったんじゃないか?」


「なるほど…!俺もまだまだ勉強不足だな」


 こんな時まで謙虚な奴だ。


「確かに私はまだロリコンになり切れていない。そしてロリコンになっても良いことはないのかもしれない。だけどなあ、お前の言った通りロリとロリコンに憧れてしまってるんだ。だから決めた。私はこの『ピュアミーティア・オンライン』で真のロリコンとなる!」


「そうか、それがお前の答えか…言っておくが険しい道のりだぞ?」


 ここにきて乗ってくるなよ!逆に恥ずかしいわ!

 まあいいや、所信表明終わりっ!これでここにいるのはロリコン二人、悪人二人


「カルナ!私ごと撃てぇ!」


 仲良く業火に焼かれようか

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