嘘なんて言わないで、ホントだから

御厨カイト

噓なんて言わないで、ホントだから


「おはよう!」


「……おう、おはよう。」


「今年も同じクラスだね!これで連続で同じクラスになった回数も更新だ!」


「もうここまで来たら先生たちがわざとやってんじゃねえのか思ってくるんだよな。」


「私はずっと亮と一緒に学校生活を送れて楽しんだけどね。」


そう凛は恥ずかしげも無く、言い放つ。


「……別に同じクラスじゃなくても家とかは隣同士なんだから良くね?何なら小さい時から一緒に過ごしてきたんだからさ。」


「えぇー、それでも同じクラスで喋ったりしたくない?」


「いや、特には。」


「むぅ、亮の分からず屋!」



そう頬を膨らませる彼女に俺は思わず苦笑いする。

そして俺が口を開こうとした時、丁度チャイムの音が響く。



その音に俺たちは顔を見合わせ、自分の席へと戻るのだった。









********







「……凛はどうしてそんなに俺と同じクラスが良いんだ?」



俺は昼ご飯の弁当を食べながら、隣の彼女にそう問いかける。



「え、だって同じクラスならたくさん喋れるし、クラスのイベントも一緒に参加できるし良い事ばかりだから!」


「でも、今まで何年もずっと同じクラスだったじゃん。それで満足じゃないん?」


「学年ごとの良さっていうのが沢山あるんだよ!別に何年も一緒だから良いって訳じゃない!」



必死の形相でそう答える彼女に俺は気圧されてしまう。



「お、おぉ、そうか、……と、取り敢えず、その弁当食いな。」


「あ、うん、ごめん。力が入り過ぎちゃった。恥ずかしい……。」


「うん、まぁ、凛がどれだけ俺と同じクラスになることに拘りを持っているのがよく分かったよ。」


「と言っても、理由はそれだけじゃないんだよね。」


「へぇー、そうなんだ。」


「うん、私は亮の事が好きだからさ。そんな君と同じクラスになれて凄く嬉しいんだ。」


「ふぅん……、……えっ?」



一瞬時間が止まった気がした。


うん?俺の事が好き?

……聞き間違いか?



俺は若干赤くなった顔で凛の方へ向く。



「ふふふ、なんてね。今日はエイプリルフールだよ?」



そうニッコリと微笑む彼女。


確かに今日は4月1日。



「……あっ、そうだよな!いやー、見事にやられたわ!」



そう頭を搔きながら、手元の弁当の方に視線を落とす俺。


……んっ?あれ?

エイプリルフールって「嘘ついて良いのは午前中まで」っていうルールが無かったっけ。

今って昼だよな……


そう思いながら、もう一度凛の方へ向く。






……そこには顔をまるでトマトのように真っ赤にさせて、俯いている彼女の姿があった。









流石の俺も、そんな様子の彼女にこの真偽を聞く勇気なんてものは無かったのだった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嘘なんて言わないで、ホントだから 御厨カイト @mikuriya777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説