第13話


岩の間を進んだ先には洞窟が口を開けていた。光が入らず暗くなってきたのでライトの魔法で灯りを点す。

洞窟の高さはそれほどではなく横幅があった。平べったくて洞窟というより亀裂のように見えた。先に進むと天井が低くなり頭がぶつかりそうな高さになってきた。

もう、進めないのかと思った場所は地面が無かった。崖のようになっていた地下へ深く続いていた。

ライトの魔法でも届かない位深そうだった。

あたしとレイは顔を見合わせた。


「どうします?降りてみますか?ソンナ様」

レイの問いかけにあたしは考え込んでいた。なぜなら昨日の侵入者にぶつけた魔法の塊の気配がしていたからだ。

こんな場所から来た訳の分からない侵入者?いったい何者だろうか。人ではなくて魔物なのだろうか?

レイに何の用事があったというのだろう。

レイに相談してみる事にした。


「昨日の夜に侵入者がいたのよ。あなたを見詰めてた。その時魔法の塊をぶつけておいたんだけどその気配がここからするのよ。」

驚いて声も無いレイ。


暫くするとレイは下に降りようと言い出した。二人で手分けして下に降りる場所を探していると洞窟の端に階段のような物があった。

あたしがライトを照らしながら先に降りてみる。レイが後を続く。

二人は無言で階段を降りていく。意外と高さは無かった。

この高さなら上からライトで底が見えたと思うがどうしてだろう。


階段を降りた場所は広々としていた。幅は洞窟と同じくらいだったが奥の方が少し上り坂になっている。

あたしが進み始めると突然両脇で松明が灯った。驚いたが進むに連れて松明は仕掛けがあるのか先の方まで次々と点灯していき、その先にあるものを照らし出した。


それは大きな石で出来た祭壇のようなものだった。側面に茨が巻き付いたような模様があり、大きな燭台みたいなものが2本立っている。燭台からは黒い炎が立ち上がっている。

そして、中奥に黒々とした何かが立っていた。


黒いフードを被った誰かだった。

「誰?!」


あたしが誰何するとそれは揺れて近づいて来た。レイの方へ。


「レイ?」

あたしがレイをみるとレイの体がゆらゆら揺れて滑るようにフードを被った者の方へ移動する。慌ててあたしはレイの腕を掴んだ。するとレイははっとするように驚いた。

何かされたように見えなかったが操られていたのかも知れない。

「レイチェル!しっかりして!!」


鼓舞するように光の魔法を強化すると眩くライトが輝いた。その光に怖気づいたようにフードを被った者が止まった。

隙かさず風魔法をフードを捲るように発するとフードが風に煽られ、その顔が見えた。

服装はマナンカ魔導学園の物、顔はフォ・アキサメ様と呼ばれた上級生のものだったが側頭から角が生え、目の周りに黒い隈取があった。普通とは思えない様相である。


こちらが視認した途端に姿が消えた。移動したのでなく煙のように消えたのだ。

その姿が消えると燭台に点っていた黒い炎も小さくなりやがて消えてしまった。

何が起きたのかは分からなかったがレイを使って良からぬ事をしようとしていたのは確かなようだった。


「レイ?大丈夫?」

と声をかけると覚束無い声で

「大丈夫よ」

と答える。


このような不気味な場所に長居は無用とふらふらするレイを連れて洞窟を出た。

結局、魔物狩りは失敗だった。



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