第7話


「レイ、あなた転生者じゃなくて?」

回りくどい事を言わずにズバリ切り込む。酷く驚き、狼狽するレイに更に告白する。


「私もそうなのよ」

目を見開き、口をあんぐりと開けるレイ。


そりゃそうだろう。でも、転生者の言葉を否定しないで驚くと言う事は間違いないだろう。


「話しやすいように私の事を先に話すわね。転生前の名前はヒウラエリカ、日本人よ。料理人として50代まで生きて、交通事故で死んだわ。ソンナンカ・アリエナイとして生まれた時は記憶が無かったけど3歳頃転んで記憶を取り戻したわ。それからは大変、転生前の記憶と今の記憶の整合性を取るのに苦労したわ。でも、転生前の記憶のお陰で色々なものを世の中に送り出したわ。さっき、レイが食べたプリンもそう。食べていたレイの反応でレイも転生者じゃないかと思ったわ。それ以前も怪しかったしね。どう?間違ってないでしょう?」

初めは動転していたレイだったがあたしの話を聞いて落ち着いて来た。


「・・そのとおりです。あたしも転生者らしいです。唯、この世界が信じられないんですけど・・」

レイの言うこの世界とは良く分からなかった。

身体に腕を回して所在無さげにポツリと零す。


「マンナンカ王国の事?それとも・・」

と聞くとレイは身を乗り出し、叫ぶように言った。


「この世界、ゲームの中みたいなんです。」

「はぁ?」

あたしには良く分からなかった。


レイの告白によると

レイの転生前の名前はアサノナナミ、同じく日本人だったそうだ。中学校の時の苛めが原因で不登校になり、家でゲームばかりしていたそうだ。死因は不明。

好きなゲームは乙女ゲーム、その中で得に嵌って居たのが『二人の悪役令嬢、世界は選択の愛のために』である。1部から3部まであり、外伝が5つもあると言う。主人公の女の子はデフォルトでレイチェル・ハクコウ。攻略対象は王太子ヤリスギ・マンナンカ、悪役令嬢の弟ラインハルト・エクステリア、レンダーシア帝国皇帝の7男リンク·レンダーシア、もう一方の悪役令嬢の兄ジークフリート・アリエナイ、それと隠し攻略対象アマリ・サエナイだ。


ストーリーは入学から学園祭までが1部、学園祭から卒業式までが2部、卒業式から悪役令嬢の断罪までか3部らしい。悪役令嬢はあたしとラブらしい。


そこまで概要を聞いた所で学園に到着してしまった。

何を困っていたのか詳しい事は聞けなかったが話はまた後だ。明日、あたしの屋敷にレイが来る事の約束を取り付けて、あたしが考える為に取り敢えず釈然としない態度のレイとは別れた。


馬車を降り、学園内の寮へ向かうレイを見送りながらあたしは何故かワクワクしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る