第3話
ラブとやり取りをしている内に他の者たちは食事を取りに出たようだ。ラブの姿が消えるとレイは小声で謝って来た。
「問題ないわ」
笑い掛けるとラブは安心したようだ。
レイと食堂棟に向かうため教室を出るとAクラスは既に誰も居なかった。マタモヤもクラスの仲間と食堂棟に向かったのだろう。
マナンカ魔導学園は広い。だから前もって設備の案内や学園での生活について合格通知と共に連絡が来ていた。だから、下見も済ませてある。
召使いやメイドや下男などを使わずに自主的に行動出来る様になるのも学園に通う意味がある。
地位の高い黄爵や紅爵のお嬢様なら他の人達の見本になる様指導されている。因みに黄爵の方が紅爵より地位が高い。
王族の男子が降爵して成るのが黄爵、王族の女子が降爵して成るのが紅爵である。
遠縁ではあるがラブとは血の繋がりがあり幼馴染みでもある。豆粒の様に小さかった時からの知り合いだから私生活ではかなり仲がいい。唯、公的には対立している事になっているので教室での様な態度を取っているだけなのだ。
周りの目が無かったらラブは抱き着いてスリスリしていただろう。
食堂では出遅れた分、人が少なかった。
セルフダイニング形式だったので軽く摘めるサンドイッチを選んでお盆に載せ、庭が見える場所のテーブルに座る。レイもあたしと似たような物を選んでいた。ただ少し量が多いかな。
昼食分は無料なので食べ放題にしたければ幾らでも取りに行ける。まぁ、そんな事をするのは貧乏男子位なものだが。
レイがラブについて聞いてきたので公式の回答をして置く。家に招待してお茶会でもした時にもう少し詳しく話せるだろう。代わりにハクコウ家の事も聞いてみた。
レイの父親が率いた冒険者パーティーでの功績を認められて黒爵を賜ったので余り貴族のマナーを知らないと言うがそこそこ問題ないレベルだった。
レイの見た目は可愛い系だが見ているとかなり抜けていて依存度が高そうだ。話をすると頭は次席を取れる位だから悪くない。あたしにとって良い友達になりそうだ。
午後のレクレーションでは白リボンの先輩が付いて校舎案内や寮住いの話を聞く。
遠くからの入園者はやはり寮に入る様だ。レイも寮に入る予定だと言う。
あたしはマナンカ魔導学園を中心に栄えている学園都市に屋敷があるのでそこから馬車で通う予定だ。ラブもそうだろう。
おおよその事を聞いてあたしは学園を出る。レイは先輩に連れられて寮に向かった。仮証は後で返しておき、休みの日にでも実家に学園証を取りに戻るらしい。
校門を出るとあたしの馬車が近付いて来ていた。ずっと待っていた様だ。御者の手伝いで馬車に乗り屋敷に帰る。
明日からの学園生活が楽しみだ。
屋敷に帰ると双子の妹マタモヤが食堂で待っていた。
そう言えば、学園では話もしていない。
「お姉さま、クラスは如何でした?」
多分、自分のAクラスにラブ•エクステリアが居なかったから気になったのだろう。
「ラブは頑張ったようでSクラスよ。」
「まぁ、何てこと!あんなに同じクラスに成れれば良いねって言っていたのに!」
双子なのにマタモヤはそれほど頭は良くない。でも、あたしより社交性が高く、気に富んでいる。
「仕方ないわよ。それより貴女は主席になれたの?」
「も、勿論よ。お姉さまみたいに頭そんなに良くないけどラブと変わらないのよ!」
やっぱり、ラブは運でSクラスに滑り込んだようだ。
「お友達はできたかしら」
「それはお姉さまのほうが心配ですわよ」
あまり心配してなさそうにマタモヤが言う。
「あら、貴女に心配されるなんて嬉しいわ。でも、安心して頂戴。一人だけどレイチェル•ハクコウって娘と仲良くなったわ」
「もしかして、校門で転がっていた生徒かしら?」
マタモヤが顎に指を当てて頭を傾げる。可愛らしい仕草だ。
「そう、その娘よ。なんと、次席なのよ。凄く頭いいのよ。」
「お姉さまが頭が良いなんて言うと皮肉に聞こえますわよ」
確かに主席のあたしが言うとそうかも知れない。
◆◆レイチェル視点◆◆
学園内の寮の部屋でベッドに寝そべってレイチェルは独り言を言った。
「あ〜あ、イベント失敗しちゃったなぁ〜。でも、素敵なソンナンカ様とお友達になれたから良っか!
それにしても、ヤリスギ王子様はステキだったぁ〜。キラキラしていてとっても優しくて・・・」
どうやらレイチェルの頭の中にはお花が咲いているらしい。
「明日が待ち遠しいなぁ〜」
咲き乱れているようだ。
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