第2話


入学式では座って待っていたマタモヤと合流してレイを紹介して一緒に式を受けた。

長く退屈な式が終わり、講堂に貼り出されていた大きな紙で自分のクラスを探すとレイとあたしはSクラスでマタモヤはAクラスだった。

どうやら成績順にクラス編成されているらしく、Sクラスは成績最上位者の少人数のクラスだった。詰まり、レイも相当頭が良いのだ。


僻んで睨むマタモヤを置いてあたしとレイは校舎棟のSクラス教室に入る。

Sクラスは10人しか居ないようだ。ガラガラの教室で前の方にレイと並んで座って待っていると男が入って来た。

何かを小脇に抱えた白衣の頭が爆発している男だった。男は教壇に立つと話始めた。


「俺はアマリ·サエナイだ。このクラスを受け持つ教師だ。専攻は魔導物質理論、教授棟の端の研究室にいる事が多いので何かあったら来るように。」

「これから成績順に名前を挙げていくから、立って自己紹介するように。名前と得意な事、趣味等だ。貴族の爵位は言う必要はない。建前だが此処では平等だ。」

姿は見窄らしいが声は低く渋かった。そして大声で無いのに良く通った。


「先ずは、主席ソンナンカ·アリエナイからだ。」

あたしの名前が呼ばれてざわめきが起こる。あたしは立ち上がり周りを見渡し言った。


「ソンナンカです。ソンナとお呼びください。得意な事は身体を動かす事で趣味は食べる事です。宜しくお願いしますね。」

簡単に済ませて座る。


「次、レイチェル·ハクコウ」

とアマリが言う。


レイチェルが立ち上がり少し俯きながら恥ずかしそうに言う。

「レイチェルです。レイとお呼びください。得意な事は覚える事です。趣味は読書です。よろしくおねがいします。」


アマリが次々と名前を呼び、次々と自己紹介が続く。

「スズリ·ローレライ 得意な事は喧嘩、趣味は喧嘩」

ローレライ白爵の長女、近衛師団長の娘だ。


「ムスカ·マルブン 得意な事は御者、趣味は森歩き」

マルブン緑爵の次男、辺境伯の右腕と噂されている。


「マリエ·ノブナガ 得意な事は飾り付け、趣味は掃除」

ノブナガ黒爵の三女、領地経営が優れていて、税収No.1になったらしい。


「ダダノ·セイエン 得意な事は遠くまで見える事、趣味は星の観察」

知らない貴族だ。 男子。覇気が無いけど良く入学できたわね?


「リンク·レンダーシア 得意な事はありません、趣味は料理」

レンダーシア帝国からの男子留学生、皇帝の7男で要注意人物。


「グノーシス·バロン 得意な事は格闘技、趣味は喫茶」

広域商人バロン商会の3男で顔が広い、会ったことがある。


「ロッテリア·バーガー 得意な事は早食い、趣味は旅行」

バーガー黒爵の次女、ハクコウと同じ騎士爵で隣国マルロイ王国の対する壁と言われているくらい勇猛な黒爵だ。


「ラブ·エクステリア 得意な事は詩を作る事、趣味は創作」

エクステリア紅爵の次女、あたしの幼馴染にしてライバルである。


全員が自己紹介を終える。


「後は昼食後、オリエンテーションがあるが各自自由参加なのでこれで解散とする。明日から共通講義が始まるので時間に遅れないように登校する事だ。学園内での細かい事は渡し済みの校則を良く読んで理解して置くように。」

言うだけ言うとさっさとアマリは帰ってしまった。


再びざわつく。

レイに声を掛けて立ち上がると声を掛けてきた者が居た。見なくても分かる。ラブだ。

「ごきげんよう、ソンナ様!」

振り返って深い笑みを浮かべて応える。


「ごきげんよう、ラブ様。一週間ぶりかしら」

ラブの横にはマリエ·ノブナガとロッテリア·バーガーが居た。早速取り巻きを作った様だ。

ラブと一週間ぶりなのは試験の前日まで一緒に勉強をしていたからだ。まぁ、勉強を教えていたとも言うのだが。


「ソンナ様が主席なんてびっくりですわ。」

とラブか嫌味を言うので


「ラブ様もSクラスでしたのね。マタモヤと同じAクラスだと思ってましたわ」とやり返す。


レイが隣であわあわしているのが面白い。ラブはあたしの嫌味をスルーしてレイに話しかける。


「私はラブ·エクステリアですわ。レイチェル·ハクコウ様ですわね。これから私とよろしくお願いするわ。ラブと呼んでくださいまし。」

ラブはあたしに向かうのとは違う柔らかな笑顔をレイに向ける。


「ありがとうございます、ラブ様。私の事はレイとお呼びください。」

格上の紅爵なのでレイは丁寧に応対する。あたしとは随分と違うかなぁと思うがあたしが気安く声を掛けたせいだろう。


「私はこの後、ソンナ様とオリエンテーションに参りますので失礼します。」

とレイがあたしの影に隠れながら言う。たぶん、ラブの勢いに恐れを為したのだろう。

フンとラブは鼻を鳴らし、ごきげんようと挨拶をして取り巻きと一緒に教室を出て行ってしまった。

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