第7話 届けられた手紙 #3
第7話 続き #3
■ー城 武法所 取り調べ室
〈文法大臣と近衛隊長が入ってくる。取り調べ室に女官アイラの姿はない。近衛副隊長がすでに牢へ連行している。〉
文法大臣「外事大臣、何をしたのですか?」
外事大臣「ご心配なく。何も暴力で痛めつけるような真似はしておりませんからな。〈立ち上がって〉文法大臣、机に座っているだけでは物事は解決しませんよ。女官アイラが自分の罪を認め、王様の御前で謝罪し償いを乞うと約束しました」
文法大臣「何と――」
外事大臣「ここまでは行き掛かりで私が話を聞きましたが、後は文法大臣にお任せしますよ。重臣を集め、王様の御前での裁きを明日にでも執り行えるよう、急ぎご準備して頂きたい。王様には私がこれから直にご報告させて頂く」
文法大臣「待って下さい。動機も自白したのですか?」
外事大臣「動機?はっ!これは謀反ですぞ。動機によって謀反の罪が重くなったり軽くなったりすることなど、あり得ませんからな。重要なのは証拠か自白のみ。とにかく謀反の事実がある限り、裁かれるのは当たり前のこと。〈扉を開け、振り返り〉では、明日。頼みましたよ」
■ー城 武法所
〈取り調べ室を遠巻きに見ていた武官見習い達。外事大臣が取り調べ室から出て来て、そのまま外へ向かう。一礼する武官見習い達。〉
武官見習い その1「やっぱり女官が犯人だったのか」
武官見習い その2「あれだけ自分は無罪と言い張っていたのに」
武官見習い その3 「すごいな、外事大臣」
〈皆が、外事大臣の息子であるアリの肩をポンポンと叩く。そこへ武官見習い達の修練を担当している教官が来る。〉
教官「見ての通り、武法所は本日取り込み中だ。予定通りに、近衛副隊長が皆の指導を出来るか、まだ分かりかねぬ。一旦解散。それぞれ持ち場へ戻るように」
〈近衛見習い達が皆、外に出て、それぞれ持ち場へ戻って行く。〉
武官見習い その1 「アリ、どこへ行くんだ?お前の持ち場、この時間帯はそっちじゃないだろ」
武官見習いアリ「ちょっと気になることがあってな。すぐ戻るよ」
■ー城 牢屋
〈近衛副隊長に引っ立てられるように連れられてきた女官アイラ。〉
近衛副隊長「〈牢の番人に〉二人を別々の牢に入れるように」
牢の番人「はっ」
〈タティアナの牢を泣きながら通り過ぎるアイラ。驚き、牢の廊下側の鉄格子に駆け寄るタティアナ。〉
女官タティアナ「〈廊下に向かって〉アイラ、何があったの?まさか痛めつけられたのでは?」
女官アイラ「タティアナ様、御免なさい。ああ、私はどうしたら!〈叫ぶ〉」
〈少し離れた所にいた近衛副隊長が走って来る。〉
近衛副隊長「お互いに話をしてはならぬ!」
女官タティアナ「〈泣きながら〉アイラ、アイラ――」
■ー城の森 湖のそばの道
〈近衛ウォーレスが少し距離をとって、ミレーネ姫とポリーを見守っている。そこへジュリアスが走ってきてウォーレスにお辞儀をして話し掛ける。〉
ジュリアス「本がすぐ見つからなくて手間取り遅くなりました。姫様達に声を掛け、これからお城に戻ります」
■ー城の森 湖畔
ミレーネ「〈耳を一瞬すませて〉ジュリアスが戻ってきたわ」
〈ガサガサと草を踏んで現れるジュリアス。〉
ジュリアス「お待たせ!」
ミレーネ「〈小声で〉上手くいきましたの?」
ジュリアス「〈紙をミレーネ姫に手渡しながら〉無事、受け取ったよ」
ポリー「やった!!」
ジュリアス「〈小箱に向かって〉コットンキャンディー、大丈夫かい?」
〈小箱の中でピピッと鳴くコットンキャンディー。〉
ミレーネ「〈鳴き声の方向に向かって小声で〉お利口ね、有難う。もう少し、そこで静かにしていて頂戴ね。〈今度はジュリアスの声の方に顔を向けて〉それで、この、タティアナの手紙には何が書いてありましたの?」
ジュリアス「〈声をさらに潜めて〉誰か別の人の手に渡っても簡単には分からない工夫がしてある。それをこれから解読するのさ。さあ、まずは戻ろう。見張りの近衛に怪しまれぬうちに」
■ー城の庭 森から戻る道
〈ジュリアスが姫とポリーに植物の説明するフリをして戻って行く。近衛ウォーレスは少し離れてついてきている。そこへ武官見習いアリが走って来る。〉
ポリー「〈姫に小声で〉武官見習いのアリが来た」
ジュリアス「〈姫に小声で〉外事大臣の息子です」
ポリー「〈姫に小声で〉ジュリアスと元・同級生の嫌な奴」
〈アリが三人の前で立ち止まる。近衛ウォーレスも後ろから走ってきて追いつく。〉
武官見習いアリ「姫様、お散歩中、失礼致します。ここにいるジュリアスの件で姫様にお伝えしたいことがございます」
ミレーネ「
武官見習いアリ「実は庭を巡回中に、遠くからではありますが、この者が礼拝堂近くの木立で何やら不審な動きをしているのを見ました」
近衛ウォーレス「ジュリアス様は礼拝堂の方に行かれたのですか?城の中に本を取りに戻られたのではなかったのですか?」
ジュリアス「城に戻る途中で木立のところに珍しい植物を見かけ、そのまま、その辺りをちょっと物色しました。お城の植物は勝手に採取出来ませんから見ていただけです。先ほど戻ってきた時は、そこまで説明する必要がないと思いました」
近衛ウォーレス「そういう事情であれば、何も――」
ジュリアス(心の声)「これぐらいは計画の内」
武官見習いアリ「〈
ミレーネ、ジュリアス、ポリー「「「……」」」
近衛ウォーレス「緑色の物体ですか?」
武官見習いアリ「はい。この城内で空を飛ぶ緑色のものと言えば、今、拘留中の女官が飼っている小鳥ではないかと考えられます」
ジュリアス「アリ、どうして僕が、その小鳥と関係していると思うんだ?」
武官見習いアリ「さあ?理由や目的はまだ分からない。ただ、とりあえず見たこと全て報告すべきではないかと」
〈アリの話に考え込む様子の近衛ウォーレス。〉
【近衛ウォーレスの回想: 西門のそば 厨房付近
近衛に
近衛ウォーレス(心の声) 「王様に誰かが進言してくれたからアイラ達への拷問が止んだ。王様が願いを聞き入れる唯一の人は姫様――。そうだ、姫様達は子どもなりに何か計画してタティアナとアイラ二人を守ろうとしている」
武官見習いアリ「さあ、ジュリアス、どう釈明する?」
ミレーネ「〈
ポリー「そうよ。そんなこと言うんだったら、こっちだって、あのこと話すわよ。わざと私を迷わせて王様まで待たせたって!」
〈あっと一瞬たじろぐアリ。〉
#4へ続く
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