第6話 秘密の企て #2

第6話 続き #2


■ー城下町から遠く離れた村 女官アイラの実家 夜遅く


〈沈みこんで座っている、アイラの両親。〉


アイラの妹ノエル「父さん、母さん、ねえ、元気出して。姉さんが犯人のはずがないわ!」


〈そこへドンドンと戸を叩く音がして、数人の男がなだれ込んで来る。近衛副隊長と他の近衛の者達だが、あえて、近衛隊の格好はせず、ならず者の一団に見える。〉


近衛副隊長「アイラの家族だな」


アイラの両親「ひえええー、お許しを」


アイラの妹ノエル「何ですか、あなた達は!」


近衛副隊長「王室を騒がせておいて、何もしないでいる、あんた達が許せなくてね。殺しはしない。ただ、犯人探しを手伝ってもらうだけさ」


アイラの妹ノエル「そんな格好で、武官でも近衛隊でもないくせに!」


近衛副隊長「うるさい、三人とも連れて行け!」


〈3人を連行しようとするが、ノエルだけ逃げる。〉


近衛副隊長「あっ、待て!」


〈ノエルは隣りの家まで走り、戸を必死で叩くが、誰も出て来ない。〉


アイラの妹ノエル「助けて!変な男達にさらわれてしまう!お願い、おじさん、おばさん!」


〈叫んで、必死に戸を叩き続けるが、そこへ追っ手が来て捕まる。中から聞こえる声。〉


隣りの家の人(声のみ)「姉さんが王妃様と姫様に毒を盛ったんだから、自業自得だよ」


〈その言葉にはっとなるノエル。そのまま、引っ張られていく。〉



■ー城 書架室 次の日の朝


女官ジェイン「今日も午前中から皆様でお勉強の予定でいらっしゃいますか」


ミレーネ「ええ、その予定よ。気が散らないよう、いつも通り邪魔しないで、そっとしておいて頂戴ね」


女官ジェインと従者ボリス「かしこまりました。では、失礼致します」


〈ジェインとボリスは書架室から出る。廊下で顔を見合わせる二人。〉


従者ボリス「皆様、お勉強熱心なことで」


女官ジェイン「ええ、感心なことです。王様にご報告しなくては!」



■ー書架室


ミレーネとジュリアスとポリー「〈手を重ねて〉作戦開始!」


ジュリアス「〈隠しておいた小道具をテーブルに再度並べて〉まずは、この身代わりの小鳥を眠らせる。ポリーが作戦実行中に小鳥が騒ぎ出して見つかっては困るからな」


〈小箱の中には緑色の小鳥。紙包みの粉を水と混ぜ、小鳥に与える。すぐ眠りにつく小鳥。〉


ジュリアス「〈小鳥に〉後で上手く目覚めてくれよ」


ポリー「これで、やっと私の出番ね」



■ー書架室前の廊下


〈書架室の扉から廊下を確認するジュリアス。少し向こうに護衛が一人立っている。〉


ジュリアス「〈小声で〉ポリー、いいぞ」


〈ポリーが手提げ袋を持って出て来て、護衛の前を通る。〉


ポリー「〈お手洗いを指差し〉ちょっと行ってきます」



■ー城 書架室


〈祈るような姿勢で座っているミレーネ姫。懐中時計で時間を計るジュリアス。〉



■ー城 お手洗い


〈手提げ袋から、エプロンと三角巾を出して身につけるポリー。〉


【ポリーの回想: ポリーの家 昨日 

エプロンと三角巾を作ってくれた母ナタリーの姿。】


ポリー「母様が本当のことを知ったら卒倒しそう!〈つぶやく〉」



■ー城 書架室 再び


ジュリアス「〈扉から顔を出し、廊下にいる護衛に〉すみません、ミレーネ姫がお呼びです」


〈護衛が書架室にやって来る。〉


ミレーネ「お忙しいところ、御免なさい。このテーブルをもう少し窓際に寄せたいのです」


ジュリアス「僕だけでは重過ぎまして」


護衛「かしこまりました」



■ー城 廊下


〈そのすきにポリーがお手洗いから出て、掃除するふりをしながら、階段を降りていく。〉



■ー城 書架室の前 廊下


〈護衛が書架室から出て来て、持ち場につく。そこへ、別の護衛がやって来る。〉


交代する護衛「交代の時間だ」


護衛「後を頼みます」


〈お手洗いの方をちらっと見て、気にしながら、そのまま持ち場を離れる。〉



■ー城 外へ出る入り口近く


〈また、別の護衛が見回っているところに、ポリーは出くわすが、掃除をする振りをしながら上手くやり過ごす。その後、大急ぎで、外に出て、西門の方向に走るポリー。〉



■ー城下町


〈昇級試験のため学校に向かうマリオ。影の刺客が後をつけていく。〉



■ー城 西門近く


〈走るポリーの姿。〉


ポリー(心の声) 「厨房の北側に宿舎が四棟、一番奥の東の端がタティアナさんの住まい。その軒先にコットンキャンディーの鳥籠がある!」



■ー城 西門近く 再び


〈走りながら、辺りを警戒しているポリーの姿。タティアナの住まいを見つけ、鳥籠が目に入る。〉


ポリー「いた、コットンキャンディー!」


〈キョロキョロと見回し、ちょうど良い木箱を見つけ、鳥籠の下に置く。その上に立ち、鳥籠を覗き込む。不安そうにポリーを見るコットンキャンディー。〉


ポリー「〈小声で〉コットンキャンディー、初めまして。私はミレーネ姫のいとこのポリー。タティアナさんは今、事件に巻き込まれて帰ることが出来ないの。分かる?」


コットンキャンディー「ピピッ」


ポリー「ミレーネがタティアナさんを助けたいと言ってる。あなたも一緒に来て手伝って欲しいって。ほら、タティアナさんのハンカチ。分かるよね?」


〈ハンカチを鳥籠に入れると、匂いを嗅ぎ、その上に乗るコットンキャンディー。そのまま、包み込むようにして、小箱へ入れる。小箱から、身代わりの小鳥を出し、鳥籠へ入れる。〉


ポリー「〈籠の身代わりの小鳥に〉なるべく早く目覚めてね」



■ー女官アイラの実家がある村のはずれ あばらや


〈納戸に閉じ込められているアイラの両親と、妹のノエル。納戸の前と、あばらやの外に見張りの姿。そこへ、目だけ出して、顔の下半分を隠した外事大臣が、ならず者の格好の近衛副隊長に連れられてやって来る。〉


近衛副隊長「ここです」


〈納戸を開ける。おびえる両親。かばう妹ノエル。〉


外事大臣「お前のところの娘が王家にどれだけの被害を与えたか分かっているか」


アイラの両親「どうかお許しを!」


アイラの妹ノエル「まだ姉さんが犯人かどうか確かじゃないのに、そんなことを言うなんて!あなたは誰?その格好は近衛隊のものとは違う。どうして、近衛でもない人に、こんな目に遭わされるの!」


外事大臣「うるさい娘だ。近衛隊をよく知っているとでも言うのか。姉以外にまだ誰か城内に知り合いでもいるのか?」


アイラの妹ノエル「……」


外事大臣「親の用が済むまで、この娘はこのまま、ここに入れておけ」


近衛副隊長「はっ」


〈納戸から引きずり出されるアイラの両親。閉じ込められる妹ノエル。〉


アイラの妹ノエル「〈納戸から〉父さんや母さんに何をするの!やめて!」


〈土間の所に木箱が置かれており、その上に紙と書炭棒しょたんぼう※がある。そこへ連れて来られるアイラの両親。〉


外事大臣「お前達は王様に謀反むほんを起こした逆賊か」


アイラの両親「とんでもございません。誓って、そんな謀反など!」


外事大臣「字は書けるな?」


〈頷くアイラの父親。何をさせられるか、不安そうな表情。〉


外事大臣「では、これから私が言う通りに娘へ手紙を書くのだ。そうすることが少しでも王家への償いになると思え」



#3へ続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る