第6話 秘密の企て #1
プレシーズン 第6話 秘密の企て #1
■ー緑の国 城の廊下
〈女官ジェインに手を引かれ歩いているミレーネ姫。〉
ミレーネ(心の声) 「
〈女官ジェインに気付かれないように、首飾りのヘッドを触ると、姫の脳内に、細部に渡ってお城の様子が手に取るように浮かぶ。それは、まるで目の前に広がっているイメージ。〉
ミレーネ「ジェイン、手を離して見て頂戴。自分だけで歩いてみたいの」
〈歩き始める姫。最初は恐る恐る、でも、すぐに自然に足が前に進むようになる。〉
女官ジェイン「無理してお怪我をなさりませぬように。すぐ後ろに私が控えていますことを、お忘れなく」
〈姫から少し離れた場所に、城内にお茶を運んで来た厨房班エレナの姿。一人で一生懸命、歩こうとするミレーネ姫の様子を遠くからじっと見守る。〉
■ー城下町 マリオの学校
〈試験終了の鐘の音。その合図を聞くやいなや帰り支度を始めるマリオ。〉
マリオの級友 その1「急いでどこか行くのか?」
マリオ「ああ、ちょっとね」
マリオの級友 その2「昇級試験はあと、まだ一日あるぞ。大丈夫か?」
マリオの級友 その1「そうそう。マリオは絵を描く時だけ、人の顔でも何でも、こと細かに覚えているくせに。他のことはすごく忘れっぽいからな」
マリオ「〈笑って教室を出ながら〉大丈夫。ちょっと寄ったら、すぐ帰って明日の試験に備えるよ」
■ー城 王の会議室
〈大臣、重臣、近衛隊長、副近衛隊長、近衛ウォーレスなどが集まっている。〉
王様「その後の進展を報告出来る者は誰もおらぬのか」
〈皆、顔を見合わせるだけで黙っている。〉
外事大臣(心の声)「容疑者の取り調べの手を
王様「近衛隊長、新たな手掛かり一つ見つけられぬのか」
近衛隊長「近衛隊総出で、城の内外捜索し、連日、不審な点を洗い出してはおりますが、どれも調べてみると、無関係なことばかりで。誠に申し訳ございません」
■ー城の門
マリオ「〈門番に〉こちらに、今、民政大臣の息子さんのジュリアスがいるはずなのですが。あの、僕、友人でマリオと言います。会うことが出来ますか?」
門番「お待ち下さい」
〈待たされるマリオ。〉
■ー城下町 民政大臣の家
ジュリアス「ただいま。〈果物の袋を置き〉皆にお土産だよ」
〈ジュリアスの声を聞いて、まずポリーが駆け寄って来る。〉
ポリー「〈小声で〉上手くいった?」
〈ジュリアスは頷き、持っていた小箱を開けて、緑色の小鳥を見せる。〉
ジュリアス「〈小声で〉ちょうどコットンキャンディーに、大きさも色も似た小鳥が買えて助かったよ。ほら、ミレーネの説明どおりだ!さあ、急いでお城に戻ろう。ポリーの準備は?」
〈手で丸の合図をするポリーの笑顔。〉
■ー城の門
〈従者ボリスが走ってくる。〉
従者ボリス「ジュリアス様のご友人の方ですか?大変お待たせ致しました。申し訳ございません。本日、ジュリアス様はご自宅へお帰りになっていらっしゃいます」
マリオ「え――、そうだったのですか?」
従者ボリス「宜しかったら、ご伝言を承りますが」
マリオ「それが、あの……」
〈手にしていた“白杖の女の子”の尋ね人の紙を渡そうか、
従者ボリスとマリオ「「あっ!」」
マリオ「〈指差して〉あれをジュリアスさんに見せたかったのです。でも、他にも何枚か、家には同じ絵がありますから。急いで取りに帰ってジュリアスさんの家に届ければ、まだ間に合うかもしれません。行ってみます!失礼します。〈走って帰って行く〉」
■ー城 外事大臣の執務室
近衛副隊長「お呼びですか」
外事大臣「このままでは
近衛副隊長「いかにも。それで何か良いお考えが?」
外事大臣「タティアナは独り者だが、アイラには両親と妹がいる。王や大臣、近衛隊長には伏せたまま、内密にアイラの家族を家から連れ出し隔離することが出来るか?近衛隊の仕業と分からぬように進めてくれ。少し強引なやり方となるから、問題にならぬよう念のためだ」
近衛副隊長「仰せの通りにやってみます」
外事大臣「それで、もし犯人逮捕につながれば、お前の次期隊長は決まったようなものだな」
近衛副隊長「有難うございます」
外事大臣「アイラの出身地である村は少し遠いらしい。何か口実を作って今すぐにでも向かってくれ」
近衛副隊長「かしこまりました」
外事大臣「後から私も追いかける」
■ー城下町 民政大臣の家
〈がっくりして帰るマリオの姿。手には“白杖の女の子”の似顔絵が描かれている尋ね人の紙。〉
マリオ「間に合わなかった……」
■ー城 民政大臣の執務室のそば
ジュリアス「ポリー、父様に戻りましたと報告しておこう」
ポリー「うん、そうね」
〈近くを通りかかった武官見習いアリの姿を見つけるジュリアス。〉
ジュリアス「ちょっと待て、アリ」
〈立ち止まって振り返るアリ。ムッとした顔。〉
ジュリアス「マリオから僕に何か伝言を頼まれただろう?」
武官見習いアリ「伝言?そんなもん、知らないよ」
ジュリアス「マリオに直接会って聞けば分かることだからな」
武官見習いアリ「だから、何なんだ!お前とマリオのことだろ。頼まれたって俺には何も関係ないし。何か聞いてもこの頃忘れやすくてさ」
ジュリアス「〈アリを睨んで〉お前に尋ねたのが間違っていたよ。行こう、ポリー」
武官見習いアリ「〈側にいるポリーに〉何だよ。人の顔、ジロジロ見て失礼だぞ」
ポリー「私に道を教えた時と随分、態度が違うじゃない。親切なふりして、わざと迷わせたって知っているんだから!」
〈ちょっとタジタジとなるアリ。〉
ジュリアス「もう、いいから。行くぞ、ポリー。相手にするな」
■ー書架室
〈ジュリアスが小箱とオリーブの枝、ポリーがエプロンなどをテーブルに置く。ミレーネ姫はハンカチを出す。小箱の中ではガサゴソ小鳥が動く音。〉
ポリー「そのハンカチは?」
ミレーネ「タティアナが忘れていったまま、私の部屋にありましたの。〈ハンカチを鼻に近付け〉タティアナの匂いがするわ。コットンキャンディーにも分かるはずよ。〈小声で〉さあ、人払いも済ませたし、最後の確認をしましょう」
■ーどこか知られぬ場所 洞窟
影の人「何?城まで行ったと!チョロチョロ目障りな絵描きネズミだ。もう、これ以上、野放しには出来ん。さっさと始末しろ。城下町に刺客を一名送りこめ」
別の影の人「一名で宜しいですか」
影の人「相手は素人だから十分だろう。城下町はまだ近衛隊の見張りが厳しい。刺客が数名動けば、かえって目立つ。それは、まずい」
別の影の人「かしこまりました」
影の人「くれぐれも痕跡を残すな」
#2へ続く
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