第4話 ひとすじの光 #3
第4話 続き #3
■ーどこか知られぬ場所 洞窟
影の隠密「申し上げます。城下町の数カ所に《白杖の女の子》を尋ね人とする張り紙が出されました」
別の影の人「何?それは妃殺しの犯人としてか?」
影の隠密「いえ、今のところは、ただの尋ね人です」
別の影の人「まあ、尋ねたところで何も分からないだろう。そんな人間は存在しないのだからな。とりあえず引き続き城下町の様子を知らせろ」
影の隠密「はっ」
■ー城 牢屋
〈横になっているアイラ。タティアナは、その隣に座り、ウトウトしている。時々、体が痛むようで、顔をしかめるタティアナ。その耳に、壁をドンドン叩くような音。〉
タティアナ「〈半分ウトウトしながら〉何かしら、このうるさい音は?」
〈ドンドン、ドンドンという音がタティアナの中で響くように大きくなり、その瞬間、ふーっと気が遠くなる。頭から床にドシンと崩れ落ちたタティアナ。〉
アイラ「〈その音にはっと気付き起き上がり〉大丈夫ですか?!〈タティアナを触り〉まあ、ひどい熱!タティアナ様、しっかり!誰か!」
■ー城の中 洗濯場のあたり
〈相変わらず、キョロキョロして歩き回っているポリー。洗濯場や厨房がある方へ行く。〉
ポリー「ここは?」
従者ボリス「お城の洗濯物をすべて扱っている所でございます」
〈アイロンプレスをしている人達、出来上がったものを綺麗に吊るしている人達の間を歩いていく。〉
ポリー「この人達もご奉仕なの?」
従者ボリス「いえ、通いで、昼間だけ城下町からお城に来て、臨時で雇われている人達です」
〈手をせわしなく動かしながら、口はお喋りに忙しい女達。洗濯物の山をみるみる片付けていく。その無駄話を興味深げに聞き、おかしそうに笑っているポリー。そこへ一人の女官が通り掛かる。〉
女官「ボリスさん、珍しいですね。どうして、ここへ?」
従者ボリス「姫の従兄妹の方たちがお城に上がっていらっしゃるのですが、お城の中の案内を頼まれまして。君は?」
女官「医女殿に至急、手ぬぐいを何枚か頼まれたのです。収納部屋に行くより、こちらの方が早いと思ったものですから」
〈従者ボリスと女官が話している横を、大量の洗濯物を乗せた大きな台車が通り、それをよけようとして、押し出される形で外に出たポリー。とても美味しい匂いがして、厨房の方に思わず一人で歩いて行く。〉
従者ボリス「〈それに気付かぬまま〉医女って誰か悪いのですか?」
女官「〈声を潜めて〉牢に呼ばれたようですよ。では、急ぎますので」
〈女官は一礼し、手ぬぐいを手に持ち、去っていく。〉
従者ボリス「〈一礼して〉牢に医女……。〈考え込むような顔。そこで、はっとして、ポリーがいないことに気付く。〉ポリー様?ポリー様!」
■ー城 北の庭
〈ポリーがウロウロ歩いている。〉
ポリー「後ろからついて来てくれると思っていたのに、訳の分からない所に来ちゃった。ボリスさん!どこ?」
〈城の庭を巡回している人の姿を見つける。〉
ポリー「あっ、すみません!」
〈振り返り、ポリーを見るアリ。〉
ポリー(心の声) 「あ……嫌な大臣の息子。ジュリアスの元同級生だ」
アリ(心の声) 「ジュリアスの妹か」
アリ「〈
ポリー「〈会釈して〉王様や姫様との昼食会に行くのに迷ってしまいました。あの、いつも昼食会がある場所はどこですか?」
アリ(心の声) 「ジュリアス達が王様とのランチだと!ずっと武官見習いでお城に上がっている俺でも、そんな機会はないのに」
ポリー「あの、分からないですか?」
アリ「〈急に作り笑いをして〉確かにお城の中は複雑だから、慣れるまで大変ですよね。本当はご一緒出来ると良いのですが、すみません、巡回の任務があるので。とにかく、この道をまっすぐ行って礼拝堂の階段が見えたら上がって、また次の階段を下りて下さい。お城の中に入る入り口がありますよ。ちょっと遠回りですが、ここからだと、その方が分かりやすいと思います」
ポリー「あー、良かった!有難うございます」
〈走り出すポリーを見送るアリ。〉
アリ「もっと迷って、食事会に遅れるがいい」
■ー城の庭 東門の近く 丘のあたり
ポリー「礼拝堂に行く階段は――あった!うん、こっちね。〈後ろを振り返り〉お城から遠ざかっていくようだけれど、秘密の近道でもあるのかな?」
〈ポリーから離れて、そっと後をつけているアリ。どんどん間違った方向に行くポリーを見て、にんまりする。〉
アリ「〈ささやき声で〉いいぞ、その調子!」
■ー城 牢屋
〈タティアナを診ている医女。牢のすぐ前に立っている番人。そこへ文法大臣がやって来る。〉
文法大臣「女官タティアナは、どんな具合か?」
牢の番人「解熱剤と鎮痛剤で、やっと落ち着いたところです」
文法大臣「ずいぶん痛めつけられたということか?」
牢の番人「昨晩は、かなりひどい状態で戻ってきていました。強行せよとの指示があったと聞いております」
文法大臣「拷問は許可せぬと王様のお達しが今朝、出された。もう、今後は、こんな
〈その話し声は牢の中にいるアイラやタティアナの耳にも届く。〉
■ー城 廊下
ジュリアス「ポリー、ポリー!全くどこへ行ったんだ?」
〈そこへ民政大臣がやって来る。〉
民政大臣「ポリーが迷子になったというのは本当か?」
ジュリアス「はい、父様。今、皆で手分けして探しています」
民政大臣「ポリーも昼食会のことは分かっているはずだから、そんなに遠くへは行っていないだろう。王様との約束の時間が近付いている。私達まで遅れてはまずい。後は皆に任せて、先に行っていよう」
■ー城 牢屋
医女「もう大丈夫でしょう」
タティアナとアイラ「「有難うございました」」
〈立ち上がり帰ろうとする医女。〉
タティアナ「〈まだ少し苦しそうな声を絞り出して〉あの医女殿、ミレーネ姫様のご様子はいかがでしょうか?少しはお元気になられましたか?」
牢の番人「〈牢の中を覗き込みながら〉そこ!医女と私語は慎むように!」
医女「失礼いたします。〈出て行く〉」
■ー城の庭 牢の外 階段のあたり
ポリー「〈キョロキョロしながら〉この高い塀は何?不思議ね。まるで外から目隠ししているみたい。何だか、まずい所に来ていたりして……」
〈鉄の扉が開き、怖そうな番人が現れる。思わず、近くの木の陰に隠れるポリー。続いて、医女と文法大臣が出て来る。〉
第4話 ひとすじの光 終わり
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