第3話 闇の訪れ #3

第3話 続き #3



■ー城下町はずれ 橋


〈小雨の中、検問をしている用心組の人達のところに、似顔絵を持ったマリオがやって来る。何枚か同じ似顔絵の紙を手にしている。〉


用心組の若者「今日も手伝いに来てくれたのか?」


マリオ「いや。これ、〈白杖の女の子の似顔絵を渡しながら〉尋ね人の似顔絵を張らしておくれよ」


用心組の若者「構わないけど、昨日の子だろ?そんなに気になるなら、まず民政大臣の娘さんに聞いたらいいじゃないか?一緒にいたのだから」


マリオ「さっき、家に行ってみたら、ジュリアスとポリーはお城へ上がったということなんだ。当分、こっちへは戻らないらしい」


〈そこへ、外事大臣の息子で、武官見習いのアリがやって来る。〉


マリオ「アリ、ちょっと頼みがある」


〈アリはマリオをじろっと見る。〉


マリオ「お城でジュリアスに会ったら、これを渡して、よく知っている人なのか、どこに住んでいるのか、聞いてくれないか?〈尋ね人の似顔絵を一枚渡す〉」


武官見習いアリ「何だって?ジュリアスがお城にいるのか?」



■ー城 外事大臣の執務室


外事大臣「犯人に繋がる手掛かりは、まだ何も見つからないのか?」


近衛隊長「連日、近衛隊総出で捜索にあたっているのですが。申し訳ございません」


外事大臣「牢屋の女官二人は?」


近衛隊長「否認を続けております」


外事大臣「残された瓶から何か分からぬのか?」


近衛隊長「城下町で普通に売られている飲み物の瓶でした。残念ながら、誰でも手に入れることが出来ると思われます」


外事大臣「お妃様の葬儀が終わる今日までに何としてでも犯人を特定せねばならん!これでは、王様に全く何も報告出来ないではないか!」


近衛隊長「申し訳ございません。引き続き全力で捜索にあたります」


外事大臣「よいか?牢屋の二人の取り調べを、もう少しきつくするのだ。隠し通せることなど、何もないようにな」


近衛隊長「はっ」


外事大臣「町を出入りする者もすべて身元確認しているのだな?」


近衛隊長「はい。用心組の若者達が、各所で検問をしております。近衛隊に比べ、用心組の方が、城下町の者たちの顔をよく知っていますので」


外事大臣「もし、女官の二人以外に、別の犯人がいるとすれば、まず、どこかに身を潜め、機を見て必ず城下町から抜け出ようとするはずだ。決して生きたまま逃してはならぬ!」



■ー城 ミレーネ姫の部屋の前


〈民政大臣を先頭に、ジュリアス、ポリーが歩いて来る。反対側から、偶然歩いて来る外事大臣。お互い、会釈をしてすれ違う。すれ違いざま、ジュリアスとポリーをじろっと見る外事大臣。外事大臣が去ると、ドアをノックして、ミレーネ姫の部屋に入る一行。〉



■ー城 ミレーネ姫の部屋


〈ミレーネ姫はうつ伏せでベッドに寝ている。側に王様、王様付きの侍従、そして女官ジェインがいる。〉


民政大臣「王様、二人を連れて参りました」


ジュリアスとポリー「「宜しくお願いします」」


王様「〈頷き〉宜しく頼むよ」


〈ジュリアスとポリーは王に深くお辞儀をする。民政大臣が、顔を伏せたままの姫に声をかける。〉


民政大臣「姫様。ジュリアスとポリーが、しばらくお城で暮らすことになったのですよ」


ジュリアスとポリー「「今晩は、ミレーネ姫。宜しくお願いします」」


〈微動だにしない姫。王、悲しげに首を振る。〉


王様「〈女官ジェインに〉この二人の世話を」


女官ジェイン「かしこまりました。どうぞ、こちらへ」


〈ジェインとジュリアス、ポリーが部屋から出て行く。〉


王様「〈民政大臣に〉感謝しておるぞ」


民政大臣「〈お辞儀して〉少しでもお役に立つことになれば良いのですが」



■ー城 ミレーネ姫の部屋の前 廊下


女官ジェイン「私は女官ジェインでございます」


ジュリアスとポリー「宜しくお願いします」


女官ジェイン「ジュリアス様は向かいの部屋をお使い下さい。ポリー様は、こちらの私の部屋で〈ミレーネ姫の隣りの部屋を開け〉一緒にお過ごし頂くことになります」


ポリー「〈ジェインの部屋に入り〉うわあ〜、素敵!ジュリアス、見て、これも可愛い。ジェインさんはセンスがいいんだ!」


ジュリアス「さっきまで母様と離れてお城でやっていけるか、ちょっと不安がっていたくせに、ポリーは単純だな」


ポリー「失礼ね。ジュリアスは――。あっ、あのドアは何ですか?」


女官ジェイン「あっ、そこは!」


〈止める間も無く、開けてしまうポリー。〉




■ー城 ドアの向こうの、姫の部屋


〈暗く、しんとしている。姫は相変わらず、伏せたまま、ベッドでじっとしており、王と民政大臣が小声で話している。〉


民政大臣「こら、お前たち。王様、姫様、申し訳ございません」


〈ジュリアスとポリーも、ドアのこちらから、慌てて頭を下げる。〉


女官ジェイン「申し訳ございません。〈急いでドアの所に行き、ドアを閉める〉」


ポリー「御免なさい」


女官ジェイン「このドア※は姫様のお部屋とつながっておりますが、ドアを勝手にこちらから開けてはなりませんよ」


ポリー「はい」


〈しまったという顔でジュリアスを見るポリー。ジュリアスは肘でポリーの脇をつつく。〉


#4へ続く


※作者注:ミレーネ姫の部屋と、女官ジェインの部屋はコネクティング・ルームとなっています。


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