第3話 闇の訪れ #2

第3話 続き #2


■ー城下町 民政大臣の家 ナタリーの部屋 再び


ナタリー「ロザリーを守るはずだった、あの首飾り……」


【ナタリーの回想: 昨夜 城。祝宴で、ミレーネ姫の首に掛かっていた首飾り。】


ナタリー「もし、ロザリーでなく、私が王家に嫁いでいたとしたら――。私と娘が狙われ、どちらかが殺されていたかも知れない。〈つぶやき、ぶるっと身震いする。そして、自分の首飾りを、震える手で触る〉」



■ー民政大臣の家 居間


〈ジュリアスとポリーがもめている。〉


ジュリアス「こんな時に遅かったじゃないか。心配させるなよ」


ポリー「御免なさい。途中で、目の不自由な女の子に会って、村のはずれまで送ってあげたんだ。私と同じぐらいの歳みたいだったし、あとね、何か、ミレーネ姫のことを思い出しちゃったから」


ジュリアス「まったく鉄砲玉だよな、ポリーは!」


ポリー「その子ね、目が見えないけれど、すごく綺麗な女の子だったんだよ。でも、声は男の子みたいに低〜い声で――」


〈そこへナタリーの部屋から「ああ、ロザリー、何という運命なの!!」というナタリーの叫び声が聞こえて来る。顔を見合わせて、急いで母の部屋に走るジュリアスとポリー。〉



■ー民政大臣の家 ナタリーの部屋


〈ジュリアスとポリーが入って来る。〉


二人「「母様!」」


〈ベッドに起き上がり、呼吸が少し荒いナタリー。入って来た二人を抱きしめる。〉


ナタリー「ポリー、ジュリアス。御免なさい、大丈夫よ」


〈ナタリーに抱きしめられながら、母の首飾りの石が青く光っていることに気付くポリー。この時、母の首飾りには、石が一つだけ付いている。〉


ポリー「見て!母様の石が光っているわ。〈母の胸に近付けていた顔を離し、自分の耳のピアスを触りながら〉じゃあ、私の石も今、光ってた?」


〈同じく、一度、体を母から離していたジュリアスが頷き、自分も白い石が一つ紐に付けたものをポケットから取り出す。その石を、母の首飾りの石や、ポリーのピアスの石に近付けると、それぞれの石がまた、青い眩い光を放つ。ナタリーの首飾りに元々ついていた八個の石を皆にに分け与え、それぞれ持っているため、石を合わせると、このように光るのである。光り輝く石を見たナタリーが、もう一度、二人を抱き寄せる。〉


ジュリアス「皆、こうして一緒にいる。母様、安心して」


〈頷くナタリー。そこへ、民政大臣が帰ってきて、部屋に入って来る。〉


民政大臣「どうした?まだ、気分が悪いのか?」


〈首を微かに振るナタリー。ひとまず、父を残し、そっと部屋を出るジュリアスとポリー。〉


ナタリー「心の整理がつかなくて――。まだ悪い夢を見ているようですわ」


民政大臣「明日の葬式には参列するね?」


ナタリー「ええ。ロザリーとの最後のお別れですもの。王様とミレーネ姫は?王子のお世話は?」


民政大臣「王様はたみに心配をかけてはならぬと、気丈にいつもと変わらぬ様子で過ごされておられる。ミリアム王子も女官達が今まで通りお世話している。だが、ミレーネ姫は――」


ナタリー「ミレーネはどうしているのです?」


民政大臣「母を亡くし、自分は目が見えなくなり、あまりにショックが大きかったのだろう。心を病んでしまわれたようだ」


ナタリー「そんな……」


民政大臣「王様も大変、心を痛めておられる。そこで相談だが」



■ー民政大臣の家 ナタリーの部屋の外


〈ドアに耳を近付けているポリー。〉


ジュリアス「〈小声で〉立ち聞きなんて良くないぞ」


ポリー「し――。〈小声で〉ジュリアスはお城やミレーネ姫の様子が気にならないの?」


ナタリー(声のみ) 「〈少し動揺した様子で〉何ですって、二人をお城に?」


〈その言葉を聞き、顔を見合わせるジュリアスとポリー。〉



■ー城下町 ジュリアスの友人マリオの部屋


〈机に座っているマリオ。机の回りには画材道具がある。〉


マリオ (心の声) 「綺麗な子だったなあ」


〈少し考えて、紙に《白杖の女の子》の似顔絵を描き始める。〉



■ーどこか知られぬ場所 洞窟


〈岩壁に影だけ揺らめいている。声だけが聞こえる。〉


影の人「任務より戻りました」


別の影の人「うむ。ご苦労だった」


影の人「姫は生き残ったようです。申し訳ありません」


別の影の人「まあ、良い。失明したと、隠密からの伝言じゃ。生き延びても過酷な道には違いない。計画は進めていけるじゃろう」


影の人「はっ」


別の影の人「怪しまれず城下町を抜けることは出来たのじゃな?」


影の人「念のため、盲目の若い女の振りをしていたので問題はないかと。ただ、街中で数名に顔を見られております」


別の影の人「当分は緑の国へ顔を出すではないぞ。表に出る任務からはしばらくはずれておけ」


影の人「はっ」




■ー城 ミレーネ姫の部屋


〈窓の外、小雨の中、城下町には喪に服す黒白の幕がはためいている。妃の葬列が城の門を出て行く。教会の鐘の音が城下町に響き渡る。鐘の音にハッとして、ベッドから起き上がる姫。その側にいた女官ジェイン。〉


女官ジェイン「〈小声で〉今、お妃様のひつぎがお城の門を出られました」


〈ベッドから降り、手探りで窓の方へ行こうとする姫。その手を取り、ジェインが窓際に連れて行き、窓を開ける。ひときわ大きく聞こえるようになった鐘の音。〉


ミレーネ (心の声)「大好きな優しいお母様、さようなら。いつか絶対お母様のかたきをとります。でも――この不自由な目でどうすればいいの?」


〈ミレーネ姫の頬を伝う涙。〉



■ー城 牢屋


〈ここにも鐘の音が聞こえる。〉


タティアナとアイラ「「〈抱き合って泣きながら〉お妃様……」」




#3へ続く

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