第1話 ミレーネ姫の誕生日 #2
第1話 続き #2
■ー城 門の外 王妃殺害6時間前
〈町の女達が集まっている。そこへ、城内へ引率する、まとめ係の女官が来る。〉
女官「お早うございます。今日は、ご苦労様です」
手伝いの女 その1「本日はおめでとうございます。今日の手伝いに来た者です。城下町北部山寄りから六名」
女官「〈皆に〉いつも有難うございます。何かある度に、お手伝いに来て下さって感謝しております。では、こちらに」
〈ぞろぞろと門から城へ入っていく。町の女達に混じって、一番後ろは、かなり若く、髪の長い女の子。可愛いというより、大人びた綺麗な顔立ちをしている。〉
■ー緑の国 城下町 王妃殺害2時間前
〈祝賀ムードたっぷりの城下町の様子。《ミレーネ姫14歳のお誕生日おめでとうございます》の横断幕。緑の国を象徴する、王家の紋章がついた、緑色の旗や風船。道で陽気に歌ったり、飲んだりする人々。その中、ポリー達一行を乗せた馬車が行く。馬車の窓から賑わう街の様子を見るポリー。〉
■ー城内 祝宴 夜 王妃殺害1時間前
〈着飾った多勢の客人。たくさんの食べ物や飲み物がテーブルに用意されている。あちらこちらにいる給仕する人達。楽団が楽しい曲を演奏している。王様、お妃様と並び、ミレーネ姫が座っている。〉
客人 その1 「姫様、おめでとうございます」
ミレーネ「有難うございます」
〈ミレーネが受け取ったプレゼントを、次々に奥へ運ぶ従者。そこへ、民政大臣が、妻ナタリー、息子ジュリアス、娘ポリーと共に現れる。〉
四人「「「「姫様、十四歳のお誕生日おめでとうございます」」」」
〈いつもにもまして可愛く着飾っている姫に、一瞬、見とれるジュリアス。ポリーも感嘆の表情で姫の姿を見つめる。〉
王様「おお、民政大臣、皆で揃って来てくれたか。二人とも大きくなったのう」
ジュリアス「〈はっと我に帰り、お辞儀をして〉十七歳になりました」
ポリー「私は十二歳です」
〈膝を曲げてお辞儀をするポリー。その二人に向かって微笑むミレーネ姫。〉
お妃様「二人とも少し見ない間に成長しましたね。〈ナタリーの方を見て〉ナタリー姉様、お変わりなくて?」
ナタリー「お陰様で有難うございます。お妃様のことは主人からいつも聞いております。王様、お妃様、お姫様。皆様、お変わりないご様子で何よりです」
王様「民政大臣には、このところ増えている
民政大臣「もったいないお言葉、有り難く存じます」
〈隣で父を誇らしげに見るポリー。〉
■ー祝宴会場 再び
〈楽団が演奏を続けている。民政大臣、家族を連れてテーブルの方へ移動する。そこへ
民政大臣「ああ、文法大臣」
文法大臣「奥様達もいらしていたのですね」
ナタリー「いつも主人がお世話になっております」
ジュリアスとポリー「こんばんは」
文法大臣「こちらが秀才で有名な息子さんですか?」
民政大臣「なに、ただ学問好きなだけですよ」
〈そこへ
外事大臣「おや、皆さん、お揃いで。ナタリー殿、いや、お妃の
ナタリー「〈当惑気味に〉お久しぶりです、外事大臣」
外事大臣「〈ジュリアスとポリーに目を向けながら〉なるほど、お二人も
ジュリアスとポリー「こんばんは」
〈アリは頭を下げて会釈だけする。〉
民政大臣「お城を訪れる良い機会なので、今日は家族でやって参りました」
外事大臣「御三人は、お妃様直系のご親戚なのですから、もっと頻繁に城に上がられれば良いものを。民政大臣があまり望まれぬのか、めったにお見かけしませんな」
文法大臣「外事大臣、推測であまり物を申されては――」
外事大臣「これは失礼。せっかくの良き日、どうぞごゆっくりと。我々は警備の見回り中なもので」
〈頭を下げ去っていく外事大臣。〉
文法大臣「外事大臣は何につけても、はっきりと物を言い過ぎる気性で困りますな。奥ゆかしく、包み隠すようなやり方を知らぬ」
民政大臣「外の国と
文法大臣「〈別のテーブルに知り合いを見つけ〉おお、向こうに、城下町経済団の新団長が。私と同郷でね。民政大臣、紹介しますよ」
〈民政大臣と文法大臣は違うテーブルに移る。〉
ポリー「なんか、さっきの外事大臣のおじさん、感じ悪い〜。ねえ、母様?」
〈ジュリアスがしーっとポリーをつつき、母親の顔を見る。なぜか、考え事をして、ぼおっとしているナタリー。〉
ジュリアス「母様?」
ナタリー「〈はっとして〉あっ、ええ……。ジュリアス、外事大臣の息子さんは、今、お城に上がっているの?」
ジュリアス「武官の見習いになったって聞いたけれど。同級でも仲が良かった訳じゃないから詳しくは知らないんだ」
■ー祝宴会場 王、妃、姫の席 王妃殺害まで間もなく
〈楽団が演奏するワルツに合わせて、踊る美しい男女達。それを見ている王様、お妃様、ミレーネ姫。王様は手にグラスを持っている。〉
ミレーネ「〈隣の妃に小声で〉お母様、何だかとっても息苦しいわ」
〈ミレーネ姫の後ろに控える女官タティアナが、その声を聞き、急いで扇子で姫をあおぐ。〉
お妃様「私も先程から軽い目眩を感じているの。ここの熱気がひどいようですわね。バルコニーで、少し外の風に当たりましょう。〈王様に〉王様、姫とテーブルを回って参ります」
〈頷く王。妃、姫と一緒に客に挨拶しながら、バルコニーへ向かう。後ろに女官タティアナと従者ボリスを従えている。〉
#3へ続く
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