ドラゴンに騎乗してコースを駆ける『ドラゴンレーシング』が盛んな世界。祖父が遺した借金を返すため、騎手を目指して競竜学校へ入学した少年・紅蓮炎仁が、個性的なライバルたちとぶつかり合い成長していく光景がまさに青春で眩しかったです。
炎仁が入った短期コースは強烈なスパルタ式で教師も生徒も普通ではなく、同級生はアマチュア大会の入賞者や、有名騎手の子息など、生粋のサラブレットばかり。
未経験者の炎仁はビリケツからのスタートですが、退学をかけた崖っぷちのレースを乗り越えて次第に這い上がっていく姿に目を見張ります。
さまざまなレース競技と違うのは、彼らが乗って走る竜は、一頭一頭が個性の違う生き物だということ。先頭での逃げ切りが得意な竜もいれば、後半からの追い上げが得意な竜、芝やダートが得意な竜もいる。騎手それぞれも乗り方、戦い方があり、戦略性が生まれるのが面白い。
クラス対抗レースで対戦相手の攻略法をライバルたちと考えていくうちに、やがて友情や絆が芽生えていくライバル関係が微笑ましいです。
最初は吹けば消えるような小さな種火が燃料を取り込み、熱く大きな炎に燃え上がる。炎仁とライバルたちの若いパワーに胸を熱くさせられる作品です。
(「最速への挑戦」4選/文=愛咲 優詩)