13「不調の正体」
「…うーん?キミは誰だっけ、オイラのこと知ってるみたいだけど。」
ルーカスが私を見ながら尋ねるが、とりあえず重いので座ってもらうことにした。
「あなたが運転するバスで通学してる学生です。私が一方的に知ってるだけです。」
「あー、そうなんだ。それで…どうしてみんな寝てるの?なんか列車も停まってるみたいだし。」
ルーカスは他の乗客たちの様子を見て再び私に尋ねる。
「わかりません。トンネルに入ってすぐにみんな耳を抑えて苦しそうにし始めて…列車も急ブレーキで停まっちゃって。他に無事な人がいないか車内をこの子、リュートと一緒に探索していました。」
「は、はじめまして。リュートです。」
私に紹介されてリュートがきちんと挨拶するが、初対面なので緊張しているようだ。私も知っているというだけで実際にこうしてちゃんと話すのは初めてだが、想像通りのおっとりした性格が話し方から伺える。
「うん、はじめまして。オイラはルーカス、よろしくね。」
ルーカスがリュートに自己紹介をする。
「ルーカス…さんも突然気分が悪くなって気を失っていたの?」
「ルーカスでいいよ。オイラは列車が出発してすぐに寝ちゃったんだよね、朝からいっぱい運転して疲れちゃってさ。気分は…うーん、悪くないかな。むしろ少し寝てスッキリしてるよ。」
リュートの問いにルーカスは自分の状況を説明する。さらに詳しく聞いてみると、どうやら私たちの乗っていたバスのうちどれかを彼が運転していたらしい。そして一緒に首都まで避難することになっていたようだ。
「運転手も気絶しちゃってるのかい?」
「まだ運転室には行ってないの。あなたをどかして進むつもりだったから。」
「なるほどね。それじゃあオイラも一緒に行くよ。」
こうしてルーカスがついてくることになった。もしかしたら狂暴な動物と戦うことになるかもしれないし、男手があると頼もしい。少しのんびりした性格に不安はあるけど、私とリュートの二人だけよりはマシだろう。
そうだ、さっきの影のことを言っておかないと。
「ルーカス、何か武器になるようなものは持ってる?」
「武器?…どうしてだい?」
「さっき、窓の外に鳥みたいな動物の影を見たの。もしかしたら襲ってくるかもしれない。」
「鳥…かぁ。うーんと、確か荷物の中にあったな。」
そういって彼は自分の座席に置いてあった荷物を手繰り寄せて中身を確認している。
「あったあった。これが使えるんじゃないかな。」
彼が取り出したのは警棒のような道具だ、持ち手から金属のバトンのようなものが生えている。
「それは何?」
「うーんと…確かスタンロッドとか言って、スイッチを入れると電流が流れるんだ。」
意外なものが登場した。どうしてそんなものを持っていたのだろうと思っていたら、彼がそのまま説明をしてくれた。
「この前、バスが牛に体当たりされてさ。それから、もしもの時のために運転手はこれを持っていなくちゃいけなくなったんだ。」
「あの事故…私もそのバスに乗っていたわ。」
「そうだったんだ。…ごめんね、危険な目に遭わせちゃって。」
「ううん、大丈夫。気にしないで。」
ルーカスはおっとりしているが根は優しいのかもしれない。そう思った。
私たちは三人でそのまま前の車両へと移っていき、先頭車両までたどり着いた。車両の前の方に扉があり、そこが運転室へと繋がっている。しかしこの車両は丁度トンネルの照明があまり当たっていない場所にあり、目を凝らさないと周りが良く見えなかった。
「…ロックされてるみたいだね。」
ルーカスが扉を開けようとしたが、開かなかった。覗き窓から様子を確認してみるが薄暗さで良く見えない。
「ちょっと待っててね。」
ルーカスはドアの近くに備え付けてある金属の箱のふたを開けた。そして携帯電話を取り出し、その灯りで中にあるスイッチやレバーなどを操作している。
「これでロックは解除できたと思う。」
「すごいねルーカス!どうやったの?」
リュートが無邪気に尋ねる。私としてもルーカスがこんなこと出来るのが意外だった。
「列車の運転手の勉強をしててね、この型の列車は仕組みを知ってるんだ。…さぁ、開けてみよう。」
ルーカスは照れたようにもじゃもじゃの頭を搔きながら立ち上がった。そして扉に手をかけて力をこめると、扉はすんなり開いた。
扉を開けてすぐに目に入ったのは、倒れている運転手だ。ドアのすぐ傍で耳を塞ぎながら気を失っている。
「やっぱり気を失ってるみたい…。」
「そっか。じゃあ仕方ないかー。」
ルーカスはあっけらかんとそう言い放った。
「仕方ないって…どうにかして起こさなきゃ、私たちずっとこのままなんだよ?」
私は少しムッとして言うと、ルーカスは一瞬ぽかーんとした表情をしたがすぐに納得した様子を見せた。
「ごめん、仕方ないっていうのは諦めるってことじゃなくって、オイラが運転するしかないかって意味だよ。」
「ルーカス、列車運転できるの!?」
私にあてた言葉にリュートが驚く。そうか、運転手の勉強をしているわけだからどうすれば動かせるかも当然知っているというわけか。早とちりをしてしまったようだ。
「そっか、運転できるんだ。ごめんなさい。」
「いいって、オイラも言葉が足りなかったよ。」
色々あったがこれで状況を打開する目処が立ち、私はようやく胸を撫でおろした。
「緊急停止ボタンが押されてるようだから、まずは復旧するね。」
ルーカスが機器を操作し始めるが私には何をやっているのかはさっぱりわからない。
「よし、これで大丈夫。それじゃあまずは動かすよ。」
そういって彼が何かを操作すると、列車のライトが点いて前方を照らし出した。明るくなった拍子に無数の黒い影がバサバサと音を立てて飛び回る。
「きゃっ!」
思わず悲鳴を上げてしまったが、おそるおそるその正体を確認する。
「コウモリ…?」
そこら中を飛び回っているのは蝙蝠だった。さっき窓の外を横切った影もそうだったのかもしれない。
「うぅっ!!」
「何これ!?」
突然悲鳴があがった。ルーカスとリュートが耳を塞いで苦悶の表情を浮かべている。蝙蝠たちの仕業だろうか、確認してみると蝙蝠たちはこちらに向かって大きく口を開けていた。
「二人とも大丈夫!?」
私の声掛けに反応はなく、二人はただ蹲っている。すでに気を失っている他の乗客たちと同じ反応だ。
「…このコウモリが原因ってこと?」
耳を抑えるリュートの姿を見て、私は一つの結論に行きついた。超音波である。蝙蝠たちが狂暴化して強力な超音波を出しているのかもしれない。だけど、それならどうして私は無事なのだろうか。それに耳を塞いでいても聞こえる音波なんて存在するのだろうか。
詳しくはわからない、けれどこの蝙蝠たちをどうにかしないとルーカスとリュートも気を失ってしまうかもしれない。いや、もしかしたら乗客たちも含めて死んでしまう可能性もある。どうにかしなければ。
「ルーカス!借りるね!」
ルーカスが落としたスタンロッドを拾い、運転室の横の出入口に進むが扉がロックされている。よく見ると足元にレバーがあったのでそれを上に引き上げる。すると扉のロックが外れたようで、スライドさせて開くことができた。
外に出ると蝙蝠たちは私に気づいたのか、こちらに迫ってくる。私はスタンロッドのスイッチを入れて構えた。やるしかない。
「やっ!」
勇気を振り絞って飛んでくる蝙蝠を思いっきり叩く。するとバチッという音がして蝙蝠が地面に落ちた。生きているかの確認をする余裕もなく次々と他の蝙蝠たちが押し寄せてくる。何匹かに体当たりされてひるんだが、電撃を当てて着実に倒していく。目に見えて数は減っているようだ。
「うっ!?」
突然の衝撃が背中を襲った。そのせいで思わず武器を手放して倒れこんでしまう。
「痛っ…何?」
振り返るとそこには一匹の狼がいた。その狼は私を睨みつけるように唸っている。背中が熱い、もしかしたら咬まれたのかもしれない。そしてまた私に飛び掛かってくる。
私は慌てて体を転がして避けた。すぐに立ち上がり距離を取る。スタンバトンは狼の傍にあり、取り返すことができなかった。狼は身を翻し再び私を追いかける。狼の速さに勝てるわけもなく、私はすぐに飛び掛かられて体が地面に押し付けられる。そしてすぐに狼が覆いかぶさってくるのを見て私はポケットに手を入れた。
「このっ…、やめてよ!」
私は果物ナイフを取り出し、鞘を投げ捨てて刃を狼の片目に突き刺した。すると狼が少し怯んだので、思いっきり脚で押し飛ばした。
次に響いたのは銃声だった。連続で6発の銃声、そして狼にそのうちの2発が命中したようで狼は怯んでいる。
「早く…中に!」
列車の傍らでルーカスが銃を構えていた。私は促されるままに走り、飛び回る蝙蝠を避けながら運転室に飛び乗った。続いてルーカスも運転室に入ると、扉を閉めた。
「ルーカス!大丈夫なの?」
「いや…ちょっとつらいよ。でも…嫌な音が小さくなったから…少しなら動ける。」
嫌な音とルーカスは言い、今も辛そうに顔をしかめている。やはり蝙蝠の超音波によるものだったのだろう。何匹か倒したのでその音が弱まったというわけか。
「…アイラ姉ちゃん、大丈夫?…痛そうだよ?」
床に座り込んでいたリュートが私の姿を見て心配をしてくれている。自分も辛いだろうに。
「大丈夫、こんなのすぐに治るから。」
正直なところ体中ズキズキと痛むが、リュートに心配をかけさせないために私は虚勢を張った。
「よし…今のうちに、列車を動かそう。トンネルさえ抜ければ…すぐに首都に着くはず。」
ルーカスはふらふらの体で運転席に立つ。前方にはまだ蝙蝠たちがいるが、さっきの狼の姿は見えない。逃げたのだろうか。
「じゃあ、どこかに…掴まってて。」
そしてルーカスが列車を動かす。車両はゆっくりと前方に進み始め、後ろへの慣性を感じる。
「…ッ、まずい…!」
「どうしたの?」
運転席にあるパネルには複数のランプがついていて、そのうちの一つが赤く点滅している。さらにアラーム音のようなものも聞こえ始めた。
「最後尾の車両の扉に…異常が…。もしかしたら…扉が壊されたのかもしれない。」
「…もしかしたら蝙蝠がガラスを割って入ってきたのかも。私、行ってくる!」
この狭い車内で動物が侵入したら多くの人が怪我をするだろうし、蝙蝠の超音波による被害をこのまま引き連れていってしまうことになる。スタンバトンはさっきの場所に置いてきてしまったし、ナイフも狼の目に突き立てたままだが、蝙蝠くらいならその辺の荷物を拝借して倒すこともできるだろう。
「ちょっと待って!…これを。」
ルーカスが私を呼び止めて、持っていた拳銃を差し出した。
「この銃、どうしたの?」
「運転室にあった防犯用の銃だよ。弾は残り2発しかないけど、念のため持って行って。」
「ありがとう。」
私はそれを受け取り、使い方を教えてもらった。ルーカスは今にも倒れそうな様子で息を切らしながらも説明してくれた。
「じゃあ、気を付けて。」
「うん。ルーカスも無理はしないで。」
「大丈夫…、限界だと思ったら…緊急停止する…から。」
「リュートも無理せずに休んでてね。」
「うん、ありがとう。」
二人に背を向け、私は歩き出した。未だ薄暗い列車内を急いで進んでいく。だが、半分ほど進んだところで急に明るくなった。トンネルを抜けたのだろう。
「うわっ!」
列車の揺れで少しよろめいてしまったが、運良く手すりがあったので転ばずに済んだ。トンネル内はほぼ直線だったが、外に出ると線路が曲がっている場所もあるのだろう。
そしてついに最後尾の車両へとたどり着いた。その車両は先頭車両と同じ構造をしていて、奥には運転室がある。だが、一見して扉が壊れている様子もなければ蝙蝠も見当たらない。
慎重に奥へと進んでいくと、運転室の扉が壊されているのが目に入った。運転士の出入口として左右に扉があるが、そのうちの私から見て右側の扉。進行方向からすると左側の扉の窓が割られている、ここから何かが侵入したのかもしれない。
その時だった。何かがぶつかるような鈍い音が聞こえた。音源は運転室のようだ。少しずつ運転室への扉に近づき、覗き窓から様子を伺う。するとそこには片目にナイフが突き刺さった狼がいた。狼は扉に体当たりしているようだ。
間違いなくさっきの狼だ。やがて狼は私に気づき、より一層激しく扉にぶつかり始めた。幸いにも扉は頑丈なので、このまま大人しくしていれば狼はこちら側に来ることはできないだろう。蝙蝠ならば超音波で皆を苦しめるのだろうが、狼一匹ならば運転室に閉じ込めておいて問題はないだろう。
一応、首都の駅に到着したときにすぐに駆除できるように連絡をしておいた方がいいだろうと思い、私は引き返してルーカスに報告しようとした。振り返った瞬間に列車が大きく揺れる。不安定な姿勢だったし、今度は手すりもなかったので私は尻もちをついてしまった。
目の前を何かの影が横切る。それはついさっきまで運転室に閉じ込められていた狼だった。
「え!?」
思わずの出来事に悲鳴をあげてしまう。運転室の方を見ると、扉は開いていた。私は勘違いしていた。狼は閉じ込められていたのではなく、扉をスライドさせることができなかっただけだったのだ。扉のロックは既に外れていたのだ。
幸い、転んだおかげで体当たりを躱すことができたがこれで終わりではない。私は咄嗟にさっきまで狼がいた運転室へ逃げ込む。しかし私の背中に衝撃が走った。飛び掛かられたのだろう、爪が食い込み痛みを感じる。
「うっ!!…やめ…てよっ!!」
体を捻って抵抗するが、狼は執拗に私に嚙みつこうとしてくる。私は床を必死に転げ回った。その時、電車が僅かに揺れた拍子で狼が少し体のバランスを崩した。その隙に私は狼の下顎を掴んで顔が上を向くように手で押し上げた。
狼は唸りながら口をぱくぱくと動かすが手を放すわけにはいかない。両手を使って何とか状況を維持する。しかしこのままではやがて根競べで負けてしまうだろう、何か手を打たなければ。
拳銃は…あった、床の隅に転がっている。しかし手の届く場所ではない。手を伸ばした途端に噛みつかれてしまうだろう。
出入口の扉は、窓が割れている方が私の足元に、割れていない方が私の頭の側にある。私の体に近いのは足元の扉だ。
足を伸ばして探ってみると、ロックを解除するレバーに届いた。扉を開けて何とか外に放り出すことはできないだろうか。私は必死にレバーを足で引き上げる。下顎を掴む手も限界が近い、お願い、動いて!
「…開いた!!」
扉のロックは解除され、少しずつ横にスライドしていく。だが、もう限界だった。このまま私は嚙み殺されるだろう。それならば死ぬまでの間に道連れに外に引きずり落とすしか…
「アイラ姉ちゃんを放せえぇぇぇぇっ!!」
窮地を助けてくれたのはリュートだった。消火器が狼に投げつけられ、狼はその衝撃で私の身体の上からどかされた。リュートはそのまま力尽きるように倒れこんでしまった。
最後の力を振り絞って、勇気を振り絞って、助けてくれたリュートの行動を無駄にはしない。私はすぐに拳銃に手を伸ばして拾い上げた、そして怯んでいる狼のナイフが刺さっていない方の目に銃口を押し当て、引き鉄を引いた。
銃弾は狼の眼球を貫き脳まで達すると、そのまま頭蓋骨も貫通して運転席の機械を破壊した。
狼は目から血を流し動かない、死んでいるようだ。一先ず拳銃をポケットに戻し、立ち上がってリュートの方を振り返る。
「リュート!大丈…。」
倒れているリュートに駆け寄ろうとするが、列車がカーブを曲がったようで身体が前に倒れそうになる。同時に倒れたリュートも床を滑るように動く。開け放たれた扉へと向かって。
「…っ!!」
私は倒れそうになった勢いのまま両手を伸ばしてリュートの手を掴んで引き寄せた。よろけてしまっていたため、その場で踏みとどまることができない。私は身体を反転させてリュートを突き飛ばした。作用反作用により、リュートの身体は無事ドアから遠くへ、私の身体は列車の外へと投げ出されることになる。
数秒後、身体に衝撃を受けて私の意識は途絶えた。
アイラの身体が宙を舞う。線路の横は深さ50mほどの崖になっていた。因みに人間が飛び降りた際に確実に死に至る高さは45mとされている。しかしその崖は絶壁ではなく少し傾斜もあったため、彼女が身体を打ち付けた場所は落下してから約10m地点であった。しかし、そのまま気を失ってしまい無防備のまま斜面を転げ落ちていく。
全身に傷を作りながらもアイラはまだ生きていた。例えば、あと1秒落下するのがずれていたら石に頭をぶつけて死んでいただろうし、落下したときの体勢が反対向きだったら木の枝に目を抉られてやがて失血死していただろう。
しかし、崖の底に転がり落ちた時までに致命的な怪我を負うことはなかった。運良く比較的高い標高で接地し、運良く障害物を避けて転がっていったのだ。そして運良く見晴らしのいい場所に転がり落ちて来た。
その場所なら近隣住民から発見される可能性もあり、そうすればまだ彼女の命は助かるだろう。…住民が居れば、であるが。
近隣の住民は首都中心部へ既に全員避難が完了しており、辺りに人間の気配は全くない。山の麓であるため、この場所は比較的野生動物が出現しやすい地域でもあった。
暫くは何も起こらず、ただ静かな時間が流れていた。1分経っても、10分経っても、1時間経っても何も起こらない。行動を起こす動物がいないのだから当然である。
しかし変化は訪れた。アイラの顔に何者かの影が落ちる。その影の主は恐る恐るアイラの顔を覗き込んでいるが、特に何かしようとする様子はない。彼女を助ける意思も、害する意思もないようだ。
何者かはアイラの手を持ち上げると、その手に舌を這わせた。手のひらを重点的に舐めているようだ。
その正体は野生の猿であった。アイラの手に着いたリンゴの匂いを感じ取ったのだろう。もしかしたらこの人間はリンゴを持っているのかもしれないと考えた猿は、彼女の身体をまさぐり始める。
しかし当然ながらリンゴは見つからなかった。その代わりに変な黒い道具を見つけた。猿はこの道具が何なのかわからなかった。もしそれが拳銃ではなく、猟師が持つ狩猟用のライフルであったならば見覚えもあっただろう。突然狂暴になり、仲間だろうと関係なく襲い掛かってきた同胞を撃ち殺した道具だからだ。
その猿は黒い道具をいじくり回す。安全装置は解除されたままだった。やがて猿はその道具の持ち方の正解を導き出した。丁度いいところに人差し指が入りそうな穴があるので、入れてみることにする。
硬い鉄の塊なのだから、物を壊すために使うのだろう。そう思った猿は、そのまま拳銃を持って最も近くにある民家に向かった。この辺りから人間がいなくなったことは既に知っていた。
やがて近くの民家にたどり着くと、力を込めて家のドアを壊そうとした。拳銃を強く握り扉に打ち付ける。
その拍子に拳銃から弾丸が発射され、家の扉を打ち抜いた。扉を破壊するという目的は進行したが、その音に驚いた猿は拳銃を放り投げて一目散にその場から逃げ出していった。
誰もいなくなり、辺りには再び静かな時間が流れ始めた。
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