【僕まだロボット】デウスエクスマキナの残骸

亜未田久志

巨神崩壊


 ある日、世界を支えていた【アトラス】が崩壊した。

 その日以来、世界は混沌の世へと堕ちた。

 機神の死体を巡って戦争が起こり。血と硝煙が煙る廃土と化した。

 天蓋は崩れ、灰色の空が見える。

 

「おい、これじゃねえか?」

巨神の心臓メガエクス……!」


 それは【アトラス】の心臓部、これからは良質な金属が取れる。


「じゃあこの真上が」

「ああ、脳みそだ」


 男二人組、一人は中性的で、もう一人はガタイがいい。


「こっからどうすんだ?」

「バッテリーは持って来た。電力を流し込んで再活性化させる。それで小型の【プレアデス】が動き出すはずだ」

「それを奪取する?」

「そういう事」


 スイッチを入れる。心臓に電力が流れ込み、大地が躍動する。脈打つ巨神の心臓。そこから脳へと電流が走り、トーチのように輝く。


「ヤバい! この位置がバレるぞ!」

「その前に【プレアデス】を回収する!」


 【アトラス】の口からぽろりと小型の人型が吐き出される。しかしそれはあくまで比較対象をアトラスとした上での事であって比較対象を人間に変えれば十分巨大だ。

 血の海に落ちる【プレアデス】。


「おいおいどーすんだ!?」

「今、サルベージする!」


 釣り竿を投げ、ひっかける。


「デミゴッドの家系なめんなよっと!」


 釣り竿一本で血の海から【プレアデス】を引き上げたガタイのいい男。

 ガーリッシュな男は拍手すながら。


「だけど敵さんきやがったぜ」


 わらわらと湧き出る。通称【ヘカトンケイル】。【アトラス】の末端から生まれた技術で作られた兵器で純正ではない。


「早く乗れスフィア」

「お前はいいのかスクエア」

「俺はデミゴッドの家系だって言ったろ」


 デミゴッドの家系、半人半機、つまりはサイボーグ。

 スクエアはそれだったが、スフィアは生身の人間だった。


「動いてくれよ【プレアデス】」


 乗り込み、発進させる、動き出す女性型ロボット。何故女性型なのか。その疑問は尽きない。何故人は機神の支える天井の下で暮らしていたのかさえ忘れていたのだから。


「動いたぞ!」

「じゃあその性能で【ヘカトンケイル】どもをなぎ倒してくれ!」

「あいよ」


 【プレアデス】のコックピット(これも何故存在するのか?)からモニターを見て光学兵装一覧を見やり、ビームサーベルを選び出す。


「さぁ! 踊ろうぜ!」


 【ヘカトンケイル】とは比べ物にならないスピード、パワー、旋回、まるで雑魚扱い。多腕種である【ヘカトンケイル】の腕をまとめて斬り飛ばしていく。

 その運動性能を見て逃げ出す【ヘカトンケイル】たち。

 それを見て大笑いするスクエア。

 スフィアは【プレアデス】から降りて。


「こいつはいい、世界を取れるぞ」

「取ろうぜこの灰色の空でてっぺんをよ」


 二人は拳を突きつけた。

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