第8話 ハロー、妖精さん。
「あ゛~・・・っ、疲れた~。」
家に帰るなり、僕は倒れこんだ。
何しろ・・・、(とばしてもいいよ!とばした方がいいよ!)
薄い本だと宿題ができないことがわかったあと、きちんと本を説明書きを読んで選別のち読書。そしてレポート用紙ではなくもっとメモ書き用のテキトーな紙に年表のようにまとめ、ひとつひとつの出来事が本ごとに違っていないか確認。それが終わったら取り上げることを厳選。といっても15個くらいのことだけど。いろいろ迷って決定。決めた順に色の違うペンを使って円で囲って、それぞれをまとめる。書く順をまた別の紙を参考にして、それぞれのつなぎ言葉などを考えて添えた方がいい図や絵も考慮し、スペースと文字数を頭の中で整理。そしたら本番。
チョー疲れた。
あー、今日はもぉー何もしたくない。
と、ぼんや~りしていたら。
「・・・っ、⁉」
何かが、光った。
「なんだ・・・っ?」
笑い声が微かに聞こえた気がするけど、それどころじゃない。
何しろ部屋中が光って、ガタガタ揺れはじめているんだから。
「・・・っ、な、なに・・・⁉」
突然、僕がいるのは自分の部屋、家ではなくなった。
周りに見えるのは虹色の光だけ。
フワフワと、浮くような感覚だった。
そして、何より。
「・・・っ?」
妖精の、気配・・・。
その昔、カナリにぶつかった隕石に住んでいた妖精(?)はこの星に生命をつくった。
つまり、僕たちデンビも妖精につくられたってこと。
だから妖精の力が強いところや、妖精が近くにいるとすぐにわかる。
「ハァイ、デンビくん。」
鈴の鳴るような、細いけれどよく通る声。
デンビならば、直感的にわかる。
もちろん、僕も含めて。
「・・・、こんにちは。」
「あら素直。」
「妖精・・・ですよね?」
姿はみえないけど。
「ええ。はじめまして。」
「・・・」
「私、キグワ。かの有名な隕石の妖精よ。」
「・・・⁉」
う、わぁ・・・。
本当に隕石に住んでいたんだ・・・。
「それで、僕に何か用がおありで・・・?」
「用?そうね、オオアリよ。」
そして、妖精はフフフと笑った。
なんだかすっごい不気味・・・。
「あなた。あのレポート。なによ、これ。」
「え・・・あっ・・・え、うそ・・・。」
ヒラリ、と足元に落ちてきたのは、僕が昨日、先生に一番で出したはずのレポート五枚組。
「あんた。この私を敵にまわすといいことない、って習わなかった?」
「習わなかった。」
「・・・っ、⁉」
偉そうに言う妖精にキッパリと答えると、何故か動揺したような空気が流れた。
「え・・・う、うそ。なんで・・・?」
「なんでもなにも、僕はそんなの習ってませんよー。」
「でも・・・、っあ。」
「・・・?」
「そ、そうね・・・教育基準が変わるのは、来年だった。」
妖精のこぼした一言に、驚いた。
へぇ~。来年から、教育がかわるんだー。
・・・ん?
そんなに大事なことを、何故しらされていないんだ?
クラス変更とか、あるかもしれないのに・・・
「もういい!と、とにかく!」
「あ、は、はい・・・。」
えっ・・・妖精さん、怒ってる。
「あなた、こんなふうに私を侮辱したわね。デンビじゃないわ。」
デンビだよ!
僕、デンビとして生まれてきて、デンビとして育てられ、デンビとして学校に行き・・・、
っていうことじゃないんだよね。
「ちょうどもう一人、ヤバい生き物がいるの。あんたには、ソイツと魂を交換してもらうわ。」
「・・・⁉」
妖精さん、口悪くね?ヤバいとか、ソイツとか。
いつの間にか、僕のこと「あなた」から「あんた」になってるし。
「って、何でそんなことをしなきゃならないんだ?」
「ウザい。待って。今、アイツ呼び出してるから。」
・・・はい、妖精さんの本性、見えました。
でも妖精の力は、かなり強いはず。
これから僕・・・どうされんの?
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