第53話新居探し

【新居探し】

新しい住処について、なかなか時間がとれなくて、というか、名古屋事件から2人の仲が急接近したおかげで、俺が思い描いていたラブラブカップルをやりたくて、

それとあいつの排除に時間がかかって

なかなか不動産屋に行くことができなかった、

でも、しっかり2人結婚する意志が固まったので、子供ができたら俺のマンションに、ただ、2人ともこの会社に勤め続けるかと言われるとやっぱり難しい、というのが2人の判断、特に、裕子さんに子供ができたら、産休明けにこの会社で働けるかと言えば無理、俺も子供ができて裕子さんと3人の生活を考えると、こんな残業は無理だし、確かに家庭持ちはもう少し早く帰っているし、土日休み、正月もしっかり休んでいるけど、それは俺や裕子さんみたいな1人ぼっちがいるからできることで、俺達がいなくなったら……皆で当番制にでもするのか……難しい。


橘専務の事を考えると忍びないが、一番大切なことは俺達家族の生活、父親が仕事ばっかりで家にいないのは今のご時世色々問題があるし、何より俺がもっと裕子さんと一緒にいたいから。


そんな将来の話もするようになった。


幸いな事に賃貸マンションの家賃収入があるからそれほど高望みは必要ない、給与は安くても良いから、残業が少なく休みの多い職場に行きたいと裕子さんに、

「そうね、確かに今のままだったら家に帰ってもただ寝るだけだものね、克己君にまかせるわ」

「えっ、それって俺が残業の嵐で家に帰るのは寝るだけ、を選んでも良いって事ですか?」

「んーーん」

「いいんですか?」

「……イヤ……」

「ふーっ」

「どうしたの?」

「だって、俺、少しでも一緒にいたいと思っているのに、裕子さんはそう思っていないのかって思うと……」

「ごめんね、そういうつもりじゃないんだけど、克己君がしたい仕事があるのに、私のわがままで、その仕事をあきらめるなんて事してほしくなかったから」

「そんなのわがまなじゃないですよ、2人は夫婦なんですよ、俺の仕事も裕子さんがいての仕事なんです、だからそんな風に思わないでください」

「うん、わかった」

 結婚して子供ができるまでは2人一緒だからこの残業の嵐で深夜帰宅の平日休日でもいいけど、子供ができたらね。

だから、当面は、今の会社から歩いて帰れる、裕子さんが住んでいるマンションの近くにという事で、ようやく探し始めることになった。


会社をはさんで裕子さんの住んでいるマンションと反対方向に行くと、昔ながらの住宅街があって、すごい昔の家屋があった所は取り壊され新しいマンションが建っているらしい。

そこを中心に探すことに、家賃は……高い。

俺の持っているマンションの家賃の2倍から3倍、場所が場所だけに古いマンションもあるけれど、新しいところは20階くらいの高級な造りで、でもやっぱりそういうところに住みたくて裕子さんの顔を見ると

「克己君、ここ気に入ったんでしょ?」

「はい」

「でもね~、確かにかっこいいけど、本当にここに住む?」

裕子さんは前の変態旦那と港区のタワーマンション最上階ペントハウスに住んでいたことがある人だから……俺はどこかでその事を意識していたんだ、裕子さんはそれに気づいていた。

裕子さんが渋って、結局その日は決まらず、改めてという事で、裕子さんのマンションに帰った

「克己君、港区のタワーマンションって住んだことある?」

「ないです」

「殺風景よ、私はあんなのはイヤ、もっと家庭的なのがいいなー」

「はい」

「意識したんでしょ?」

「……はい」

「ば~か」そう言って俺の頭をコツン

「すみません」

「あのね、私はそんな事望んでないの」

裕子さんが俺の頬に手を添え

「克己君と一緒に会社に行って、一緒に残業して、一緒に帰って、平日だけど一緒にお休みして、時々一緒にお出かけして、それができればどこでも同じ、ねっ」

チュ

「はい」デヘヘ

次の週、結局築15年の普通のマンションに、お風呂はあの高級マンションのようなガラス戸でもないし、鏡もないし、そんなに広くないけど、なんとか2人で入れる。

部屋も普通の2LDK、ずーっと一緒にいたいからちょっと広めの1LDKがあれば十分なんだけど、そううまい具合の間取りはなくて、だから1部屋は完全にクローゼット兼納戸にして寝室をスッキリ、そんな使い方で決めた。

引っ越しは、2人とも相変わらず夜は遅い、引っ越しの準備をする時間がないから3週間後に

「裕子さん、せめて、家具とかは新しい物にしませんか」

「そうね、この部屋の家具は1人用だから、2人で住むにはちょっとね」

「はい」

最初、いつものように俺1人が暴走し、目黒にあるアルファベックスやカッシーノの家具で揃えようと言ったら、また頭をコツン

『いずれ引っ越すんでしょ?』『はい』

このマンションで使いやすい家具にしようと言われ、次の休みに三鳥に行って、ベッド、ダイニングテーブルとかソファーとか色々買って、

(そうなのだ、ソファーに寝る事はないから、ゆったりいちゃいちゃできるようなソファー)次の日はビックリカメラダンジョン館じゃなくて家電館に行って、冷蔵庫、テレビ……一通り購入。

ネットで買う事も考えたけど、忙しい2人、設置、設定まで全部やってもらいたいから。

2日連続の買い物はかなり疲れた。

マンションに帰ったらぐったり、結局その日はファミレスで夕食、部屋に帰って風呂上りのビール。

朝~チュンチュンはしっかり!でもいつもよりおとなしく。

明日、木曜から仕事だけど、2人一緒♡

その日のうちに橘専務にご挨拶、引っ越し先のご報告

「そうか引っ越しか、いよいよだな、で、いつ結婚するんだ?」

「僕はすぐにでも婚姻届けは出したいんですけど」

「裕子ちゃんは?」

「うん、私もいい」

「そうか、2人とももう大人なんだし、裕子ちゃんの父親の事は妻から聞いているから2人で決めていいんだよ」

「はい」

橘専務に、完全に俺達は夫婦として認められた。

「裕子さん、今度の休みに婚姻届け」

「まだダメ、克己君のご両親にご挨拶、それと私の母にも、それが終わってから、それに……」

そうだった、ちゃんとプロポーズしてなかった

「ハハハ、そうでした、一番大事な事がありました」

「うん♡」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る