第10話勇気をだして

【勇気をだして】


 6月、しっかり梅雨に入って、毎日がじめじめむしむしちょっと気分は憂鬱、それでも会社は毎日残業の嵐。


 何でそんなに忙しいか? 答えは簡単、人手不足。


 入っては辞め、中途採用で増員してもどんどん辞めていく、単にそれだけ。


 どんなにAI化、省力化しても、そもそも人が足りない。


 財務課だって本当は俺の下に後輩が来るはずなのに、

 人員配置は店舗関連部署に優先され、一応最低限の人数の新卒または中途が管理部門に配属されるはずがこんな状況だからすぐに辞めて、そっちの補充でせいいいっぱい、今だに財務では俺が一番下っ端。


 じとじと雨の中、今日も帰って寝るだけか~ 


 ん?明日は休み、そうだ、勇気をだして、


「柴田さん、明日休みですよね」


「そうよ、うんそうね、久しぶりに私の部屋で家飲みする?」


「はい!」


「元気がいいわね」


「はい、明日の休みは、梅雨で外に出る気もしないので、でも家にいても何もすることがないし、気分も梅雨だったから、柴田さんと家飲みできれば楽しいだろうなって思いまして」


「そうね、じゃあそうしよっか」


「はい」


 いつものように夜11時を過ぎ、事務所内には俺と裕子さんだけ、2人あとかたずけをして、ラブホ街を通り抜け24時間スーパーでビールやつまみになるようなもの 総菜なんかを買って裕子さんのマンションに、


「とりあえずお風呂にお湯を張ってくるから」


「はい」


 今日はいつもと違って、家飲みが目的、なんかわくわく。


 いつもは年末年始、GWのような人がいなくて暇な時に雑談をするけれど、こうやって飲みながら話をするのは俺が元カノに振られ(別れ)相談に乗ってもらってから時々あるけど、うれしい、そんな事を思っていたら


「高谷君、お風呂にお湯がたまったから先に入って」


「はい、それじゃあ、お先にいただきます」


 先にお風呂に入らせてもらい、裕子さんがお風呂から上がってくるのを待つ

 風呂上りの裕子さん・・・やっぱり、色っぽい。


「ほら」そう言って缶ビールを渡され、2人で


「プハーッうんやっぱり風呂上りのビールは最高ね」


「はい」


 ルームウェアに着替えた裕子さんが、スーパーで買ってきたつまみや総菜を皿に盛ってテーブルのせ、家飲みの始まり、ビールを飲みながら雑談。


 年末年始とGW以来だけど、雑談でも話が盛り上がる。


 いつものように趣味の話や最近の身の回りの出来事やら、当然仕事のグチも……でも不倫相手の事は聞けない、色々話しながらその事を思うとやっぱりモヤモヤ、聞いてみたいけど……


 こうやって話をしていると、なんかとても自然だし、落ち着く、俺と祐子さんはすごく気があうと思うんだけど、それは裕子さんが大人で俺に合わせているのかなとも思うし……やっぱり専務が……。


 約1か月ぶりだけど、こういうのっていいな~


 裕子さんと家飲みを満喫した休み明け、またいつもの社畜生活が続く


 新入社員の研修が終わって、7月から各部署に配属されるんだけど、結局今年も経理財務は補充なし……


 そういえば、年間残業時間はこのままいけばやばいんじゃないか?まあボッチの俺は早く帰ってもやることないし、このおかげで裕子さんのマンションに泊まれるし、残業代出るし、うん、俺はこのままで良いかも。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る