第6話次の日から

【次の日から】


それから、本当に1人になった俺は、やることもなくただただ社畜。


今までは、それでも彩に連絡できなかった、とか今度は休めるんだろうかなど考えていたけれど、彩に対して後ろめたさがあってモヤモヤしていたけど、今でも彩には申し訳なかったという気持ちはあるけれど、どんなに夜遅くなっても終電でマンションに帰れれば良い、くらいになっていた。


完全に社畜。


違うのは、昼間も裕子さんを目で追うようになったこと、それで気が付いたのだけれど、時々裕子さん宛に内線がかかってくると、裕子さんは慌てて席を離れてしばらく戻ってこない事がある。


時には夕方まで席に戻ってこない事も。


それが気になって、ある時、裕子さんに聞いてみたけど


「ううん、なんでもないのよ」


あっさりとかわされた。


どうしても気になって、裕子さんに内線がかかってきて席を外した時、それとなく佐々木係長に、


「柴田さんはどこに行ってるんでしょうね」

と聞いてみたところ


「あ~、橘専務のところだよ、だから柴田さんには近づかない方が良いぞ、親しくしているところを橘専務に見つかって見ろ、一発で左遷だよ」


「そうなんですか?」


「ああ、専務の部屋で2人っきりで何時間もこもっていたり、よくラブホ街を2人で歩いているところを他の社員に見られてるからな」


「そうなんですか」


「ああ、まあ×2であれだけの美人だから、そういう事なんだろうな、だから本当に気をつけろよ」


「ハイ、ありがとうございます」


噂の相手は橘専務か~そりゃ無理だ~。


それから2時間ほどたって、裕子さんが席にもどり、何事もなかったかのように仕事を始めていた。


いつのまにかそれが気になって、裕子さんに内線がかかってくると聞き耳を立てている自分がいた。


それからというもの、裕子さんにかかってくる内線電話が気になりだすと、それは時々じゃなく、結構頻繁に内線がかかってきて、1-2時間席を外してたり、たまに夕方近くに内線がかかってくると、裕子さんは課長のところに行って、何か話をしてから、いつもなら22時過ぎても平気でいるのに、その日は18時には帰ってしまう事に気づいてしまって・・・はあ~。


俺に優しくしてくれた、色々アドバイスをしてくれた、そんな良い人が不倫・・・なんかモヤモヤする。


それからはずーっと裕子さんの事が気になって、何かあれば裕子さんの行動を見てしまう。


・・・そして気になるのがもう1人いる、齋藤営業部長。


すっごく派手で我物顔で何にでも誰にでもぐいぐい我を押してくる。


俺にとってすごく苦手なタイプの人間。


営業だから経理財務はほとんど関係ないはずなのに、時々こちらのフロアーにやってくる、お目当ては裕子さん。


声がでかいから何を言っているか聞こえてくるんだけど、裕子さんを口説いている。


「裕子ちゃん、良いお店があるんだよ、ねっ、お昼一緒に行かない?」とか、


「裕子ちゃん、明日休みでしょ? 一緒に飲みに行こうよ」とか、


「○○ホテルの最上階レストランなんだけどね、ちょっとした伝手があって、特別メニューを用意してくれるんだけど、ごちそうするよ、どう?」とか。


でも裕子さんは、橘専務の名前を出して断っているみたい。


橘専務の名前を出すといくら強引な齋藤部長でも引き下がらざるをえない。


こういうやり取りを隣の島で見ながら、しょせん自分には関係ない世界なのかな~、

モヤモヤしているくせに・・・


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