Another view2:信頼の形

ㅤ師走はお寝坊さんだ。別に特別、集合をかけたわけではない。けど、私はとても楽しみだった。

ㅤ最近は、特に暇だった。友達が皆、王都の方に行ってしまった。私は、理由があってこの村に残っている。


ㅤ「しわす!おきる!」


ㅤ――――――むにゃむにゃ


ㅤ「しわす!」


ㅤ「ん……おはよ」


ㅤ目を擦りながら、ゆっくりと立ち上がる師走。昨日採ったグルの実を師走に渡した。どうやら食べながら、村をまわるようだ。


ㅤ「むら!……あんない!……する……よ!」


ㅤ「うん、よろしくね!」


ㅤギルドに最初に行こうと思い、家の外に出た。歩いてギルドに行く短い道の途中、なんだか多くの視線を感じた。


ㅤ――――――何?この視線……


ㅤ疑心暗鬼に駆られているように、こちらを見る人の心は皆、若干黒く濁っている。

ㅤチラリと師走の方を見ると、何処吹く風。全然気にしている様子もない。美味しそうに、グルの実を頬張っている。


ㅤ「しわす!…………ついた!」


ㅤなるべく師走に怖い思いをさせないように、私も気にしないようにしよう。師走はギルドの迫力にのまれている。


ㅤ「しわす!ギルド……の……ひと……はなす」


ㅤ「あぁ……行こっか。」


ㅤまた袖を引っ張って、来賓用カウンターの近くまで連れていった。


ㅤ「お姉さん、ごめんね。ちょっと外からのお客さんがギルド登録したいってことだから、翻訳のブレスレットお願いしていいかな」


ㅤ「わかりました、少しお待ちください。」


ㅤこれで……師走とちゃんと話せる!今までぎこちなかったから、とてもうれしい。


ㅤ「しわす、わかる?私の言葉通じてる?」


ㅤ「なんで!?」


ㅤ驚きを隠せない様子の師走。なんかサプライズが成功したみたいで、思わず顔が笑ってしまう。

ㅤ師走は事務手続きを行って、時には軽く私と喋って、無事登録を終えた。


ㅤここでも視線が消えることはなかった。


ㅤ次行く場所は決まっている。

ㅤオルパスだ!あんまり好きな人はいないが、私はあのゲーム性のあるオルパスがそこそこ気に入っていた。嫌いな人曰く、義務感に駆られるんだとか。そんなことないと思うけど。


ㅤ「しわす!次はオルパスに行こ!お姉さん、いろいろとありがとう」


ㅤ「ありがとうございました」


ㅤ師走との会話が戻るのはなんだか名残惜しい感じだが、楽しくてもっといろんな所をまわりたい気持ちが上だった。



ㅤ「オルパス…………ここ!」


ㅤ師走にやり方を初めだけ教えた。すると、慣れた手つきで、進めていった。


ㅤ――――――なんで……?


ㅤ細かい事は気にしないでおこう。突然、師走に話しかけられた。


ㅤ「エスプルはどれが好き?」


ㅤ「これ……いい……!」


ㅤ私の1番好きな物を選んでもらった。すると、すぐに始まった。師走の頭の上にある画面にはずっといいスコアが刻まれていく。


ㅤ――――――天才……かも。


ㅤ師走、すごい。そんなにいい得点出ないよ!


ㅤ「しわす!これ……みる!」


ㅤ初めてオルパスをやると絶対にスキルがもらえる。だから、師走を連れてきた。この世界を生きてもらうために。


ㅤ「しわす!そこ……きのみ…………とって!」


ㅤ私らしくはないが、わがままを言った。スキルを実感してもらえば、きっともっと人生が楽しくなるはず。


ㅤ「しわす!ありがとう!」


ㅤ師走はにっこりと笑って、木の実をくれた。

ㅤ続けて、私に質問をしてきた。


ㅤ「ちなみに、エスプルは特性って何かわかる?ギルドのお姉さんに聞いてもわからなかったんだけど……」


ㅤ「わから……ない」


ㅤ本当は知っていた。

ㅤでも、特性:拈華微笑に関しては誰にも喋るなとお母さんに言われていた。この世界の悪人から利用されるから。


ㅤでも、話したかった。師走は信頼してる。師走は、私のことを信頼してくれてる。じゃないと、ギルドのお姉さんに言われてたのに、ナイトノートを私に見せたりしないから。

ㅤ昨日知り合っても、もう友達だから。


ㅤ口は開かなかった。


ㅤ「そっか、ありがとう!」


ㅤ師走は、切り替えたように微笑んだ。心が傷んだ。

ㅤいつかこの私の秘密を打ち明けられるように、もっと師走と仲良くしよう、そう決意した。



ㅤ――――――師走とずっと一緒にいれますように。

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